テンプレ即ちお約束2
"すまないな"そう言いつつも笑いが堪えきれていないジンさんを見て腹を括る。
どのみちこの人は何がなんでも強者と言われてるやつと戦いたいのだろう。
多分、あのアンナとか言う灰金美少女が何か言わなくてもこうなってただろうことは大方予想できた。
だが、あの中にいた数名があの少女の言葉に対して納得のような彼女が言うならと言うものが見えた。
もちろんその中には今目の前にいるジンさんも含まれる。
「やる前に少し良いか?」
「何だ? と言うか敬語はやめたのだな。」
俺の発言にしっかりと返事をするジンさん。
ん? 敬語? 知らんな!! 初対面の人間に職権乱用して無理矢理戦わせようとする奴なんかに敬語がいるのか? いや、否だろう!! つまりはそう言うことだ。それはさておき。
「あの少女……あれはいったい何者だ? なぜあんたを含めた数名があの子の言葉に納得している?」
「……アンナか……アンナは"視てしまうし居てしまう"んだよ。 その性で何かが起こるときは近くにいて当事者か目撃者になる。 そんな能力があるのさ。」
俺の質問に少し遠い目をしながらも答えが帰ってくる。
が、その後に続きがあった。
「まぁ、他にも色々とあるが後は私を……倒してみてからにしてくれ」
そう言うと最初に見せたものより獰猛な、まるで鷹や鷲のような猛禽類や肉食の獣然としてる笑みを此方に向けながら自身の武器を構える。
それは、二メートル程の両刃の剣だった。
だが、どう見ても分厚い。
刃は潰れていないがあれは剣なのだろうかともしかしたら剣のかたちに似せた棍棒ではないのかと思わせるほどだ。
「さすが『断砕のジン』の武器だな。 やべぇくらい迫力が違うぜ」
周りの野次馬から声が聞こえた。
やっぱりギルドマスターしてるような人はヤバい『二つ名持ち』なんだな。
こちらも笑みが溢れそうになる。
危ない危ない"久しぶりの対人戦闘"になるため少し浮かれている心を抑える。
ふぅーっと息を吐き同じように剣を構える。
彼方は重量級の化け物みたいな武器、かたや此方は見た目只の曲剣である。
まぁ、少し付加魔術を掛けて魔力との親和性を高めはしたが……。
「それでは両者──」
ここの副マスターである女性が合図を出す。
「始め」
その言葉が言い終わる最中一瞬で此方に突撃してくるジン。
砂煙が巻き上がる。
振り上げられた剣が頭上に迫る。
その攻撃の範囲外ギリギリまで横へ回避する。
が、しかし相手も読んでいたのか地面に当たる前に無理矢理振り下ろしを止めあろうことか此方に間合いを詰めてくる。
「うぉらぁッ!!」
雄叫びをあげながら今度は横一線。
それを剣で軽くいなす。
いなして前のめりになった体を利用して体当たりをしようとするジンをその脇に避けながら蹴りを入れようと足を振り抜く。
だが、それもとっさの判断か転がりながらジンは回避する。
ここまでわずか数秒。
「……ヨズル、君は一体何者だ? 勝てる気が一切しない。 それどころか私相手に遊んでいないか?」
「まぁ、遊んではいない。 何者って言われたら只の人間になるんだが。」
ジンの質問は若干間違っている。
遊んではいない"トレーニング"なのだからこれは殺し合いではないし一方的な殺戮やらでもないのだから。
だから、遊ぶことはしない。
それに、
「あんたもまだ本気出してないだろうが。 しかも勝てない言っていってるやつの顔じゃねぇーぞ。それ」
そうまだ笑っているのだ。
目の前で、獰猛に、一切こちらから視線を離さず。
「バレていたか。 今まで相手にしてきた者は大体今までで倒れるかこれを本気と思って一緒になって本気だしてるつもりで負けてくれるんだが」
そこまで言ってジンは言葉を切り俯く。
一瞬間が空き俯いていた顔が改めて此方に向く。
「ッ!?」
一瞬、ほんの一瞬だけだがジンの迫力が増し、息ができなくなるような気がした。
「君には本当に本気を出さないと戦ってくれないらしい」
そう言いながら周りからは赤いオーラが吹き出す。
"鬼化"そう呼ぶに相応しい赤色した肌に口に三日月のような笑みを浮かべる戦鬼がそこにはいた。
★★★
それから数十分戦った。
ジンの本気は今までの何倍も強く、攻撃力も防御力も速さも全てが増し、また歴戦の戦士らしい狡猾なフェイントに踏まえ突然戦闘スタイルを変えるような変則的な攻撃。
今まで相手してこなかった相手であることや久しぶりの対人戦闘だと言ってもそれを除いても強い。
だが、それらの攻撃もフェイントは掛かってしまえば強引に横一線。
勿論魔力で威力も上げているため当たればひとたまりもない。
戦闘スタイルの変化は目で見てギリギリで合わせる。
勿論俺もやり返す。
身体強化の魔法を使って早さを高める。
勢いそのままに剣で縦横無尽に連撃を行う。
10や20じゃ数えたりない程を打ち込む。
だが、相手も反射神経が上がっているのか悉く避わすか防御されてたいしたダメージはない。
だが、最後はどちらも攻撃に掛けた。
どちらも突貫していき剣が重なりあう。 大きな金属音が響く。
サクッと地面に何かが刺さる音がする剣だった。
「そこまで」
副マスターの掛け声が終了を告げる。
「勝者 ギルドマスター ジン」
わああーと歓声が聴こえる。
「なぜ最後に手を抜いた?」
此方に真っ直ぐ目を向けて言い放つ。
「いやいや、手は抜いてない。 ただ狩るときや殺し合いじゃないと本調子がでないだけだよ」
そう苦笑いしながら言う。
手は抜いてない、ただ"魔法を使わなかった。 それだけだ。
そんな俺に少し目を細めながらジンはじゃあ、と続ける。
「私と殺し合いをしていたらどうなってたと思う?」
「……まぁ、死ぬだろうなすぐに。 後、今いる観客も一部を除いて」
さっとジンから冷や汗が出る。
多分今の俺の顔はさっきのジンより酷い顔をしてるのだろう。
顔をもとに戻して落ちた剣を拾いその場を離れる。
あぁやっとお約束が終わったー。
そんなことを考えながらギルドの受付まで戻るのだった。
こんにちは七八転です。
さぁこれからどうしましょう?
なにも考えておりません!
ブックマークが増えているのを見ると嬉しくなりますね……現実逃避じゃありませんよ?
それはさておきこれからも皆さんに読んでいただけるよう頑張りますのでよろしくお願いします。