人は災いの元1
ほんの少し長めになってます。
「あっ……あの……」
ギルドの受付で報酬を待っていると後ろから声をかけられる。
そこにはアンナがおり、少し目を附せて此方に何かを話そうと口をモゴモゴさせる。
面倒ごとに巻き込んだ張本人が来て、なにも言わずモゴモゴさせているのを待ってると次第に気が立ち思わず舌打ちをしてしまう。
ビクッと肩を震わせたのが分かった。
俺……そんなに怖がらせたか?
「ごめ……な……さい……後、ありが……とう、ござい……ます」
やっとのことで声を出したアンナ。
そのたどたどしい言葉には、気持ちの籠った謝罪と感謝があった。
因みに微かに声が震えていた……そんなに俺って怖いか? ……少し泣きそうだよ。
「いや、構わない。 此方こそさっきは舌打ちなんかして悪かった。 それに、感謝されるようなことはしてないと思うが何のありがとうだ?」
俺がやったことと言えば、この街に来て薬草採ってついでに竜倒して、ギルドマスターとトレーニングをしただけだ。
考えても特に感謝されることはしていない。
だが、首を振り、それは違うと説明するアンナ。
「あの大巌竜があそこにいたのは私のせいだから……でも、私じゃどうすることも出来なくてそんなときにあれを倒してくれたから……街を守ってくれた人だから……」
アンナからの説明はこうだ。
アンナの前にあいつが現れ、それから何とか逃げようとしたところに俺が登場。あいつを倒して街を救ったのに否定しようとしたのが我慢ならなくてあのときの発言。
その後、失礼なことしたと思って謝罪と感謝の言葉を言いに来たと。
なんだ……この子めちゃくちゃ良い娘やん。
あのとき、居たのには気がつかなかったが、まぁ敵対してなかったようだからそこは置いておいて。
「そう言えば、アンナ。 あのトカゲがお前のせいってどう言うことだ?」
そう言うと、アンナは驚いた顔を此方に向ける。
なんだ? 自分の発言を忘れたのか? いや、それでこの顔は……あー。
「名前に関してはジンから聞いてる。後少しお前についても。
何か視えてしまうとか居てしまうとかとは聞いたが他は知らん。
それと関係があることなのか?」
彼女からは名前について話はしていない。
なのに何で名前を……?ってことなのだ。
まぁ、知らない男に名前を当てられるとか年頃の女の子にはちょっと怖いだろう。
納得したのと突然の秘密知ってますアピールで少し混乱しているアンナ。
「はい……その……ギルドマスターの言っていたことと関係があります。 ギルドマスターが言っていたのは私の固有能力のことです。」
ちょっとずつ、アンナは自分について語っていく。
それで分かったのは、何の能力かは分からないが魔物が突然目の前に現れたりしてしまう、また危険な生物が来た場合にそれを見てしまうものであると言うこと。
後、魔物が出てくるときは、自身の体が少し重くなる感覚や倦怠感に襲われると言うことだ。
「なるほど……で、それは鑑定持ちには見せたのか?」
「はい……鑑定士に見てもらいましたけど霞んだようになっていて見えないと言われました。」
まぁ、見せてるだろうなとは思ってはいたが。
「じゃあ、その鑑定士の能力レベルは?」
「えっと……6……だったと」
相当前に見てもらったのだろう鑑定士の能力レベルを必死に思い出すアンナ。
「よし、じゃあ俺が見てやれんこともないがどうする?」
俺の言葉にまたも"えっ?"と言う顔をするアンナに説明を続ける。
「俺は、その鑑定士より能力レベルが高いし鑑定士ってことは全鑑定を使用してるんだろう。 俺の場合は人や武装に特化したものだから見えると思うぞ?」
勿論、アンナが嫌ならしないし、他の人がいいと思うなら探すのも手伝ってやる そう言って説明を終える。
悩んでいるのかまた目を附せて黙り込んでしまう。
今度はしっかりと俺も待つ。
鑑定すると言うのは他の人に自身の弱点や持っているものを教えると言うことだ。
即ち敵やその能力を知ったものに悪用されかねないしそれに自身を巻き込むことになるのだ。
「あの……どうして、そこまでしてくれるんです?」
考えてる途中でどうしてそこまでするのかが気になったらしい。
まぁ、そうだな初対面の人間にこんな優しくされると何か裏があるように感じるだろうな
「特に意味はないが……昔、ある人に言われたんだよ"女の子が困ってるのを助けるのは男の子の義務だ"って……。 後は、可愛い女の子とお近づきになるには手助けするのがベストだと思ったからかな?」
「かっかわっ可愛いだな、な、なんて……その……」
アンナは不意な賛辞に少しテンパりながら言葉を返しまた、顔を俯かせる。 違うところと言えば顔どころか耳まで真っ赤にして恥ずかしさも隠しているところだろうか。
いや、事実アンナは文句のつけようがないくらいの美少女だし。
そんなこと前世ではお近づきになれなかったし良いじゃないか。
数分ほどして最初とはうってかわって、しっかりこちらを見ながら言葉を放つ。
「お願いします。 私の能力を見てください。」
顔にはもう羞恥の赤さもなく青い瞳が鏡のようにこちらを写す。
心から意思を固めた相手にこちらもしっかり答えなければならないだろう。
「じゃあ、始めるぞ」
俺はアンナを見る。
奥底の彼女の根源まで深く深く。
そして俺の目の前には彼女のステータスが表示される。
アンナ・ニュクス
種族 人間
固有能力
・魔の支配者
・救聖の担い手
・聖女の加護 (大)
・剣技の超越(未解放)
・宵闇の加護 (大)
種族能力
・剣術 レベル4
・魔術 レベル6
・召喚術 レベル?
・家事 レベル7
・適正職 『召喚士』『聖騎士王』
『聖女』『魔剣将』
『宵闇の巫女』
能力だけ出してみたが案外ヤバめだ。
特に魔の支配者と召喚士のレベル?はまず危ない。
後適正職の『宵闇の巫女』と未解放の剣技の超越もとてつもないものだし残りのも危険度は低いにしろ強力なものばかりだ。
この娘の突然目の前に魔物が現れるのは召喚術と魔の支配者の暴走だろう。
危険な生物が見えるのは、聖女の加護だろうな。
ちらほら馴染みのある表示を見て少し苦笑してしまう。
「どう……でしたか?」
黙っている俺を見てアンナは此方に不安そうな目を向ける。
「あぁ、見えてはいる。 後、原因も分かった───」
「よっ良かったー……」
見えていると言う言葉と原因の解明ができたことで言葉を遮る形で安堵の声をもらすアンナ。
だが、これからが問題なのだが聞いてもらわねばならない。
「ただ、いくつかヤバめなものがあるからそれを説明していかなくちゃならない。 良いか?」
「……えっ?」
続けて発した発言に耳を疑ったのか首を傾げる。
だが、少しして意味を理解し顔を青くするアンナ。
「じゃあ、まず原因の方から説明していくぞ」
そう言って話を進めていくのだった。
こんにちは七八転です。
書いてて思ったことを一句
ヒロインが
思って異常に
チートです
これから話を進めていきます。
これからもよろしくお願いします。




