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8.若いお二人の時間を存分に楽しんで

大変お待たせしてすみません。今回から更新再開します!

よろしくお願いします。

 その夜、というか、もはや深夜。

 

 バスタブに張った薔薇(バラ)色の湯に浸かりながら、私は溜め息を吐いた。――深夜の入浴になったのは、榛葉によるスパルタ教育が長引いたのと、エミリとのショッピングで買った服のファッションショーもどきをしていたためだ。

 

 別に好みでも無いカジュアル服を、エミリの好みで着せ替えられ、挙げ句の果てには私だってめったにやらない「ココからココまで全部」買いをやりはじめたエミリの暴走を止めるのに、非常に苦労した。

 

 荷物は全て部屋に送り付け、帰宅したらしたでファッションショーもどきだ。エミリはとにかく私を着せ替えるのが楽しいらしく(分かるけど。分かるけどさ。限度があるじゃないのよ限度が)、榛葉が夕飯だからと止めるまで続いた。ちなみにその時点でも、今日買った服の半分も着ていなかった。

 

 

 

 そんな事よりも私が気になったのは、出掛け時に声を掛けられた階下の奥さんと、一〇一号室の住人だ。

 

 

 

*****

 

 

 

 私とエミリが出かけようとすると、階下の一〇三号室から出てきた奥様に声をかけられた。

 

「あら、こんにちは。お出かけかしら?」

 

「はい! ちょっとアリス様のお召し物を購入しようと思って」

 

 私が返事をする前に、エミリが少しだけ喰い気味に答える。――いや、挨拶されたらまずは挨拶を返さないとでしょう……。この天然女め。

 

「ごきげんよう、奥様。一駅向こうに、ショッピングモールがあると伺ったので、エミリさんと一緒に見てこようかと思いまして」

 

 ちなみに出かけ頭に少し調べたところ、そのショッピングモールの中にも、華鳳院グループの中でもかなり庶民向けのブランドの店が入っているらしい。……せめて華鳳院(ウチ)の店で服を見繕ってくれるとかなり助かるのだけど。そこら辺は空気を読んでくれると嬉しい。

 

 などと一人で思案していると、エミリと奥様はずいぶんと話が弾んでいるようで一人息子だという子どもはほったらかし状態になっていた。

 

「そういえば、お子さん連れだと何かと要り様ですよね? よければ何かついでに買ってきま」

 

「ちょっと、エミリさん」

 

 子どもの様子を見ていた私は、エミリの袖を引っ張り、少し小声で発言に注意をする。

 

「お子さんのいる家庭では、何かしらこだわりだとか、アレルギーとかそういった事情を抱えていらっしゃるところも少なくはないわ。不用意におつかいを申し出るのはいかがなものかと存じ――」

 

 そんな私たちの様子を見てか、奥様はクスクスと笑いながら言った。

 

「お心遣い、ありがとうございます。エミリさん、そしてアリス様も。でも、今は息子のことで特に心配することはないから、若いお二人の時間を存分に楽しんでくださいね」

 

 ……私のエミリに対する小言も聞こえていたのか……。

 

 笑顔で手を振り見送ってくれる奥様と、一人遊びを続けている息子を後目に、私はエミリに引きずられるように出かけたのだった。

 

 

 

*****

 

 

 

 ――何かが引っ掛かるような気がする。

 昼間の出来事を思い返しながら、私は薔薇色の湯の中で伸びをする。

 

 ハイツを出てからの行動に、特に違和感はなかったように思う。

 

 普通に駅まで歩いて、普通に電車の切符を買って、普通にショッピングモールのある駅で降りて。……その後はエミリに引きずられるようにショッピングモール内を歩き回って。何だかんだ言って買った洋服の量は華鳳院(ウチ)のブランドの服が一番多かったり――

 

 至って普通だ(エミリの「ココからココまで」買いを除いて。あれウチの店じゃなかったら大変なことになってたわよ……)。

 

 至って普通(?)の、女子高生の買い物をしてきただけのはずなのに、何かが引っ掛かる。

 その正体が何なのかまではわからないけど。

 

 それにしても、昼間の肉体労働から深夜までに及ぶ頭脳労働で眠くなってきた。

 

 

 

 ……今夜のバスタイムはこれにて終了にしよう。






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