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強制脱落

 




 ピエロが楽しそうに笑いながら、問題のパネルを出してきた。


「これは、有名な問題なので、知ってる方も多いんではないかな?


 『5Lと3L入るバケツが一つずつあります。

 そのバケツをつかって、4Lの水を作ってください。』


 というのが問題です。簡単でしょう!

 わかった方は、別室にご案内いたします。

 では、今から10分です。謎解きスタート!!!」



 スタートの声がかかった瞬間、④番の明智と⑭番の赤橋が立ち上がって別室に入っていく。

 相談することが許されないので、櫻井と新見はお互いの目を黙ってみた。

 二人ともまだ答えは思い浮かんでいない。


 こんなまだ序盤で強制的に脱落なんてありえない。


 ピエロが戻ってきて、④番と⑭番クリアを告げた。

 さすがあの二人は違うと櫻井は感じた。


 次に立ち上がったのは、⑮番の東と⑦番の総領だった。

 二人とも無事クリアした。


 続々とクリア者がでてきて、櫻井も新見も焦り始める。

 時間制限もあるので、さらに焦りが加速して、考えがまとまらない。


 そこに焦りのピークを迎えたと思われる③番の増田が立ち上がって、別室のドアを叩く。

 ピエロがニヤリと笑いながら招きいれる。


 別室から大きな叫び声が聞こえてきた。増田がわめいているようだ。

 しばらくして、静かになった。


 ピエロが部屋に戻ってきて、首をふりながら残念そうにつぶやく。


「残念ながら不正解者がでてしましました。③番の増田さんはが強制脱落者一号となりました。

 みなさん、時間制限はありますが、慎重に考えて、ちゃんと答えを導きだしてから回答するようにしましょうね。

 増田さんは、わかってもいないのに、勘でやろうとして失敗しました」


 100万円を一番欲しがってて、宣言しまわってた彼女が最初の脱落者。

 櫻井と新見も慎重になる。


 残り時間5分。


 そこで、攻略に気づいた①番塩野、⑧番野口、⑬番三池が別室に入っていき、見事正解した。


 残っているのは、櫻井と新見含めて、8名。


 残り3分を切ったところで、新見の目の色が代わり、はっとした表情になった。

 わかったらしい。


「⑥番の新見さん、無事クリアです」ピエロが静かに告げる。


 櫻井はどうしていいものか焦る。


 5L分の水をくむ。

 その水を3Lのバケツ満杯につぐ。

 5Lのバケツの残り2L

 3Lのバケツの水を捨てる。

 3Lのバケツに、5Lのバケツに入っている2Lをつぐ。


 あっ!!!!!


 5Lのバケツで満杯に水をついで、3Lのバケツに残り1L分の水を5Lバケツから移せば、5Lバケツには4Lしか残らない!!!



 櫻井は、攻略に気づき、残り2分のところで、別室に滑り込む。

 ピエロの前でさっきの手順をやってみせて、見事正解となった。


 心臓の高鳴りが抑えられない。

 正解者の部屋へと足を運ぶ。見知った顔が笑顔で迎えてくれた。

 新見と目があい、二人ガッツポーズをする。


「これ、相談できないってのが痛かった。まだ②番の田川さんクリアできてないみたいなんよね」と心配そうな塩野。


「結構まだ、残ってましたね。ヒントくらい欲しかったですね。すっごい焦りました」櫻井がみんなを見回しながら話す。


 そのとき、ピエロがぎょうぎょうしく鐘を鳴らし、「タイムオ~~~~バ~~~~~!!!!」と大きな声で宣言した。


 別室の正解者の間で、「あ~~」という声が漏れる。


「残念ながら、強制脱落者の方は、②番、③番、⑨番、⑩番、⑪番、⑫番、⑯番 の7名となりました。

 こんなに一気に脱落というのは、結構珍しいですね~~。

 クリアされた方は、別室のモニターで脱落者の方の末路をご覧ください。

 勝者の余韻に浸ってください!

 脱落者の方は、敗者の絶望に浸ってください!!」


 そういうとピエロは、もう一つのドアから消えていき、がっくりとうなだれる脱落者たちの様子だけがモニターにうつっている。

 ③番の増田だけが、ギャーギャーとこの企画の主催者に向かって、文句を言い続けていた。


 天上から白い煙が噴き出す。

 その白い煙を吸った瞬間、さっきまであんなに騒いでいた増田がばったりと後ろにひっくり返って倒れてしまった。

 ②番、⑯番もばたっと倒れ、⑨番や⑩番が口を押えながらのたうちまわっている。

 ⑪番と⑫番が、手足をばたつかせて、床を転げまわる。



 白い煙は、毒ガスとおもわれた。



「なんだよ・・・これ・・・」櫻井を含め、正解者たちはその場で茫然となり、モニターにくぎ付けとなった。


「強制脱落って・・・殺されるってことなのか?」④番の明智が、顔面蒼白になりながら口にした言葉に全員が息をのむ。


「そんな・・・ありえない・・・これって、単なるバス会社の企画だろ? お遊びツアーだろ?」と⑬番の三池からはいつもの人懐っこい笑顔が完全に消えて、悲痛な表情を浮かべている。


 そんな後輩の肩を抱いて、⑭番の赤橋が冷静に「しっかりしろ。これはゲームじゃなくて、デスゲームだ」とぽつりとつぶやく。


「うそだ・・冗談じゃない! デスゲーム・・・そんな・・・亮子が・・・亮子が死んじゃった・・・・」


 ⑮番のひがし 塔子とうこが、妹の⑯番前川まえかわ 亮子りょうこの死を嘆き悲しむ。 

 それと同時に、①番の塩野しおの 愛美まなみも崩れ落ちて泣き始めた。


「私が、このツアーに田川さんを誘わなければ・・・彼女死なずにすんだのに・・・私のせいだ・・・」


 泣きじゃくる二人を50代の⑦番総領と⑧番の野口のコンビが、慰めている。


「謎が解けなかったら帰れないは、本当だったんだ。生きて帰れないんだ・・・」新見が櫻井を見ながら絶望的な表情を浮かべる。


 


 様相が大きく変わったミステリーツアー。

 残されたメンバー 9名の中で、生きて帰れるのは何人なのか。

 このミステリーツアーから脱出できるのか。


 ガスマスクをしたピエロがモニターに映し出される。


「みなさ~~~ん! びっくりしたでしょ?

 私も驚きました!

 み~~~んな死んじゃうなんてね!

 単なるお遊びの楽しい企画だと思ってたら大違い!

 これは、デスゲームです。

 謎が解けなかったら、死が貴方を待っています。

 さあ、これからが本番です!

 みなさん、気合を入れて生き残れるようがんばってください!」


 ピエロがモニターの中で、奇妙な音楽に合わせて踊る。

 倒れている遺体の上を軽やかに飛び回る。


 その異様な光景に、櫻井は戦慄を覚えた。



 

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