表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

拘束からの脱出

  「ミステリーツアーへようこそ!

   これから皆さまにたくさんの謎を解いていただきます。

   解けなければ帰れません。


   途中までは、全員で協力しながら解いていっていただいて構いません。

   しかし、おひとりずつにお渡ししているお手紙の謎は、一人で解いていただくことになります。

   それが、ゴールです。


   どうしても解けない場合は、一人3回までパス可能です。このツアーはかなり難易度が高いのでパスせざるを得ないときもあるでしょう。

   ただし、パスを使用した場合は、オールクリアとはなりません。

   パスなしで、すべての謎を真っ先に解いた方には、賞金100万円差し上げます」


  バスの中で、このツアーの案内人であるピエロが説明している。

  

  ゴールデンウィークを使って、参加した高校2年生の櫻井さくらい 彬人あきひととその友人の新見にいみ 和真かずま

  自宅のポストに入っていたチラシを見て、このツアーに参加することにした。

  謎解きなんて、ほぼやったことなかったが、単純に面白そうだったのと賞金に目がくらんだからだ。


  「では、みなさん。これから皆さんの両手を隣の人と椅子に拘束させていただきます。

   この拘束を解いて、まずは自由になることが最初の問題です」


  バスの後ろのほうで、控えていたスタッフと思われる黒子達が次々に乗客を拘束していく。

  櫻井は窓側に、新見は通路側に座っており、櫻井の左手は座席の左のひじかけに縄で固定された。どんなにひっぱっても20cmくらいしか動かない。

  櫻井の右手と新見の左手が手錠をかけられたが、ひじ掛けに固定はされていない。

  最後に新見の右手が、右のひじ掛けに完全に縄で固定された。

  二人をつなぐ手錠には0~9までのダイヤル式の鍵がつけられており、A,B,C,Dの4つ数字が合えば外れる仕組みとなっている。


  まずは、この4つの数字の謎を解くことが先決だった。


  「やべー。両手を縛られて、身動き取れないとか人生で初なんだけど・・・」


  新見が驚きと期待が入り混じった表情で櫻井を見て、手錠のかかった二人の手を持ち上げる。

 

 

  「では、みなさん! その拘束から脱出してください!」


  

  櫻井と新見は、きょろきょろと辺りを見回す。

  この謎を解く手がかりは、バスの中に隠されているはず。

  

  乗客の一人がピエロに向かって質問する。


  「このABCDの数字は、全員共通ですか?」


  「さぁ~~~♪ それは解いてからのお楽しみ!」


  ピエロがおどける。


  「誰か文字の一つがわかったら、全員に教えてくれ。

   一つか二つわかれば、あとは総当たり戦でもいける」

  

  乗客の男が声をかける。

  「了解!」とあちこちから返事が聞こえる。


  もし、ABCDの数字が共通なら全員で協力すれば最短で拘束が外れる。


  「Aに関するヒント発見! 今日の参加者の人数からA型の人の人数を引いた数だって」


  「参加者って何人?」


  「通路側の人、手を通路に出してひらひらして~。そして一番前の人数えて!」


  「了解!!数えるよ~~」


  一番前に座っている乗客が、数えだす。新見も必死で手をひらひらさせる。


  「オッケー! 全部で16人! じゃあ、A型の人がいる座席の人はその人数を指で示して!」


  隣どおしで、血液型の確認をする。

  

  「新見、俺A型だから。お前は?」

  

  「俺0型。一人ってことで、一本指出すわ」


  「みんな一斉に出してね! せ~の! ――― オッケー! 7人がA型! よって、A=16-7で9に決定」


  「おおおお」という歓声があがる。


  みんなが一斉にAを9にあわせはじめる。


  「BとCのヒント発見! B+C‐A=3 だって~~」


  「てことは、つまり、B+C=12ってことだね!」


  「「了解!」」


  「みんな、ヒントはね座席に挟まってたり、前のポケットの中に隠されたりしてるから、よく見てみて!」


  みんなが、もぞもぞと座席周りを探し出す。


  「なんか俺たちもヒント見つけたいよな! 教えてもらってばっかじゃ悪いよな!」新見はそういって、張り切って前のポケットを漁っている。

  

  「ああ、そうだな。Dのヒントが全くないのが気になる。俺らんとこにあったら申し訳ないもんな。探そう」


  そのとき、バスが急カーブを曲がり、櫻井は窓ガラスに頭をぶつけた。

  だが、その瞬間窓ガラスに文字がうっすらと見えた。


  はぁと息を窓ガラスに吹きかける。

  

  「窓に文字が書いてある!!! みんな窓に息吹きかけて!」


  櫻井が叫ぶと一斉に窓側の席の乗客が息を吹きかけて、浮かび上がる文字に驚きの声をあげる。

  櫻井が続けざまに叫ぶ。


  「左側の一番先頭の人から文字を言って!」


  「き」「ゆ」「う」「ひ」「く」「い」「ち」「は」「D」


  

  「9-1=D Dは8だ!!!」


   一斉にDを8に合わせる。

   

  「いや~~~~みなさん! 素晴らしい連携プレーですね~~~!

   見ていて清々しい気持ちになります!わたくし!」

 

  ピエロが、笑顔をたたえてみんなの活躍をほめたたえる。

  

  「これなら、ノーヒントでたどり着けそうですね! わたくし、黙って見守らせていただきますね!」


  そういうとピエロはカーテンで仕切られた運手席側へと消えていった。


  残るは、BとC。総当たり戦でもいけそうな気がするが・・・櫻井は思ったが残るヒントを一応探すことにした。


  みんな拘束を解くことに必死で、バスがどこに向かっているのか全く気にしてなかった。

  このゲームをどこかで鑑賞している人間達がいることも知る由もなかった。


  バスは、乗客を乗せて走り続ける。

  生きて帰りつくことができるのか。


 

  ミステリーツアーの幕が上がる。

  

  

  


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ