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初期練習作(短編)

昔の出来事

掲載日:2015/06/29

暗めのお話です。苦手な方はお避け下さい。

 痛みを取りのぞく為の手術。

そのために僕はここに来た。

在来線がゆっくり行き交う、

僕の田舎。

みんなは元気にしているだろうな。

懐かしい光景が目に浮かんだ。


 実家の玄関をくぐると、

母が出迎えた。

父はすでにこの世にいない。

ありきたりな会話をしながら、

母が久しぶりの手料理を作ってくれる。

元気でいることを確認し、

母はほっとした表情をする。

もう親元を出て何十年も経つ。

その為に、まだ少し距離がある。


 実家の近所の友達の家に電話をしてみる。

誰もいないようで、

がっかりして電話を切った。

せっかくなら、今夜話したかったのに。

家族ぐるみでの、いい付き合いだったなあ。


 次の日、朝早く家を出て、

この地域にある菩提寺の墓に向かう。

母には言っていない。

昔から親しんできた、

美しい風景が広がっている。

何だか「おかえり」と

抱きしめられているようだ。

昔はこんなこと、

思わなかった。

長い年月を振り返った。


 墓に着いた。

辺りには誰もいない。

ちょうどいい。

俺には、これしかない。

母や友人に遠慮して、

猫をかぶる必要は、もはや無い。

ハンマーを振りかぶった。

墓石に振り下ろす。

何度も、何度も。

墓石には傷一つ付かない。

意外と丈夫なようだ。

ライターを取り出して火であぶる。

そろそろやめよう。

人が来るかもしれない。

言い訳は考えてあるけれど、

できればトラブルは控えたい。

俺は道具類をしまい、

迂回して慎重に実家に戻った。


 次の日、母が強ばった顔で話してきた。 

お墓で何をしていたのかと。

すでに噂になってしまったようだ。

知ってるだろう、あのことだよ。

母に説明すると、

どうやら納得したようだ。

ご近所さんにはうまく言っておくとのこと。

それはそうだ。

母が喜ぶことをしたまでだ。


 父は、ある事件の弁護人だったのだが、

突然殺されてしまった。

そのとき犯人は分からなかったのだが、

俺は知っている。

あの近所の友人だということを。

実際に殺したわけではなく、

片棒を担いだくらいだ。

実際の犯人はプロに違いない。

それはそうと、あの事件は迷宮入りして、

もう忘れ去られてしまっている。

俺には理解できない。

なぜ父を殴打し、焼き殺したのか。

同じことをしたまでだ。

隣の、友人の墓に。

良い人はマネしないで下さい。

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