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初期練習作(短編)

昔の出来事

暗めのお話です。苦手な方はお避け下さい。

 痛みを取りのぞく為の手術。

そのために僕はここに来た。

在来線がゆっくり行き交う、

僕の田舎。

みんなは元気にしているだろうな。

懐かしい光景が目に浮かんだ。


 実家の玄関をくぐると、

母が出迎えた。

父はすでにこの世にいない。

ありきたりな会話をしながら、

母が久しぶりの手料理を作ってくれる。

元気でいることを確認し、

母はほっとした表情をする。

もう親元を出て何十年も経つ。

その為に、まだ少し距離がある。


 実家の近所の友達の家に電話をしてみる。

誰もいないようで、

がっかりして電話を切った。

せっかくなら、今夜話したかったのに。

家族ぐるみでの、いい付き合いだったなあ。


 次の日、朝早く家を出て、

この地域にある菩提寺の墓に向かう。

母には言っていない。

昔から親しんできた、

美しい風景が広がっている。

何だか「おかえり」と

抱きしめられているようだ。

昔はこんなこと、

思わなかった。

長い年月を振り返った。


 墓に着いた。

辺りには誰もいない。

ちょうどいい。

俺には、これしかない。

母や友人に遠慮して、

猫をかぶる必要は、もはや無い。

ハンマーを振りかぶった。

墓石に振り下ろす。

何度も、何度も。

墓石には傷一つ付かない。

意外と丈夫なようだ。

ライターを取り出して火であぶる。

そろそろやめよう。

人が来るかもしれない。

言い訳は考えてあるけれど、

できればトラブルは控えたい。

俺は道具類をしまい、

迂回して慎重に実家に戻った。


 次の日、母が強ばった顔で話してきた。 

お墓で何をしていたのかと。

すでに噂になってしまったようだ。

知ってるだろう、あのことだよ。

母に説明すると、

どうやら納得したようだ。

ご近所さんにはうまく言っておくとのこと。

それはそうだ。

母が喜ぶことをしたまでだ。


 父は、ある事件の弁護人だったのだが、

突然殺されてしまった。

そのとき犯人は分からなかったのだが、

俺は知っている。

あの近所の友人だということを。

実際に殺したわけではなく、

片棒を担いだくらいだ。

実際の犯人はプロに違いない。

それはそうと、あの事件は迷宮入りして、

もう忘れ去られてしまっている。

俺には理解できない。

なぜ父を殴打し、焼き殺したのか。

同じことをしたまでだ。

隣の、友人の墓に。

良い人はマネしないで下さい。

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