第三話 始まり
「リッドォオオオオ!!!」
「っ、ふぁ?!」
意識は現代に戻る
つまり、良く分からん男に落とし穴に落とされ
気が付いたら爪に襲われてた訳だが
“リッド”と言う名に親近感を湧きながら背後から首を捕まれ引っ張られる
その刹那、俺の鼻先を風が引き裂かれながら爪が通過する
自然と俺の背を汗が伝う
(引っ張られるなければ俺死んでた……?)
救世主であるその男性であろう人物を振り返り
「……」
言葉を失った
身長凡そ180前後
赤い短い髪が逆立ち
男らしさを溢れさせる彫りの深い顔立ち
そして、バニー服
此 奴 は 危 険 だ
「リッドっ、怪我は無いか?!」
「あ、いや、無いんで。大丈夫なんで触らないで……」
逞しい筋肉で詰め寄らないでくれ
その体で抱き締められれば俺なんて一撃で潰れる
「なら良いんだ……。ったく、化け物を見て体が固まるなんて新卒並の事やらかしやがって。そこで休んでろ」
落ち着きのある低いその声で諭すように語られる
彼の背中には木こりの使うような物ではなく
明らかに戦闘用の斧が担がれていて
それを片腕で構えながら俺に背を向ける
此処で漸く俺を襲った化け物の正体が見える
「ドラ…ゴン……?」
アニメの中でしか見たことのないその生物
全身が鱗に覆われ、大きな翼を持ち長い尾を揺らす
そして、口からチロチロと火が溢れるところを見ると
俺の全身が歓喜した
始めてみるドラゴンは夢にまで見た逞しい姿その物で
この感動を他の人にも分かち合いたいが周囲には赤髪の男と俺しか居ない
(二人でドラゴン狩り…?)
人生は止まらない、
俺が理解しない間にもドンドン時間は進む
「“燃える火の懺悔”【炎燃え揺る線-BurningSword-】!」
男性が右手で握る斧の刃を左手で触れながら何かを呟く
「あつっ……、」
俺の頬に触れる気温が急激に上昇する
それに伴い男性の握る斧が赤く染まり
発火する
『転生』
(あぁ……俺魔法の世界に転生させられたんだ)
頭のネジが外れてしまったのか
悠長にそんな事を考えていると徐々に視界が暗くなる
「っ……い、きが……っ!?」
遠くなる意識に気付き深い息を吸おうとするが、
何故か呼吸が出来ない
それどころか体が動かない
痺れたかのように体を感じられず、俺はそのまま地面へ顔から倒れた
遠くなる意識の中、咆哮と打撃音が聞こえる
必死の戦闘が行われているのに、みれない