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第一話 始まりの始まり
「リッドォ!!はやく動け!!」
男性の声を背に俺の頭へ向けて獰猛な獣の爪が襲いかかる
「いやいやいやいや、は?!?」
何を言ってるか分からないと思うが、
俺は此処から始まった
襲い来る爪が異様に遅く感じられる
(走馬燈が見えるときってこんな感じなのかな……)
そんな事を呑気に考えていれば、記憶の中の十数分前を思い出す
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「あぢぃ……」
姉の急なメールを受けコンビニへアイスを買いに行っていた所だ
八月半ば。余りにも暑い……
日差しが俺の体を燃やすんじゃないかと錯覚するほどに
自慢の黒髪は汗でしおれている
数分前の己を恨む、
たかがお使いに香水を付けたのだ
汗と香水の香りが混ざり更なる地獄を招いている
「くっさ……」
日差しと臭いで目眩を起こしながらゆっくりと歩みを進める
(帰ったら俺アイスを食べるんだ!)
妙なフラグを立てた気がするが、大丈夫であろう
「あっ……」
間の抜けた初老の男性らしい声が脳に響く
上から聞こえた気がした為に天を仰ぐと
「フラグ回収乙であります」
真っ赤な鉄骨が俺の鼻先数センチに存在していた