ぷろろ~ぐ
ぷろろ~ぐとは「プロローグ」のことです。決してふざけているわけではございません。
勉強すると怒られる、というのが、我が来栖川家の習わしらしい。
実際、私が学校の宿題をマッハでやっていた時のこと。
「今何をやってたの!?まさか勉強してたんじゃないでしょうね!」
まさにその通り。
今、まさに数学の計算中だったのだが、急に母が部屋に入ってきたため、漫画の下に宿題を隠したのだ。
それにしても、日本の母は感が磨かれているなあ。
どうして分かったんだ。
「勉強してる暇があるなら友達と遊んでらっしゃい!」
普通、逆なんじゃないか?
母は、とにかく私が友達の輪に入らないことが不満らしい。
分かんないかな~。
入らないのではなく、入れないのである。
人見知りの激しすぎる私は、友達と何かをすることが苦手だ。
そこが母の怒りに触れるらしく、友達と遊んでいても、ちょっと私がはみ出ると、キッとこちらを睨んでくる。
そんな母親がいるか?
いるんだ、それが私、来栖川恵美子の母なのだ。
妹の明美になんて、もっと酷い。
明美は、友達なんていらない派なので、1人が大好きだ。
そこが母と対立する理由で、明美が日曜なのにゆっくり家でくつろいでいると、母が怒りだし、誰かと遊べと言ってきた。あまりの恐ろしさに、明美は泣きながら友達に電話したという。
その反動で、すっかり他人恐怖症になった私も妹も、学校で親友と呼べる人はいなかった。
そんな私も中学生。
恋に恋するお年頃で、好きな人くらいはできた。
相手は学校のアイドル、千葉武夫先輩。
ぶっちゃけ、そこいらの芸能人より断然かっこいい!
千葉先輩とは、会話したことすらないけれど、いつか世界一素敵な告白をしたいな、と思っている。
そして、あわよくば両想いに。
なんて夢を巡らせ、ふと学校の屋上に目をやると、人影がみえた。
ゆらっと動くその影が、徐々にふちに近づいていく。
え、何、アレ。
自殺!?
どうしよう、と周りを見回す。
何人か生徒が行き来しているが、誰も気づかないのだろうか。
「ねぇっ、あれ見て!やばくない?」
私は知り合いの生徒を見つけると、引き止め、屋上を指さした。
「何がやばいの?やばいの来栖川の方だろ」
屋上を見つめても、何も感じてくれない知り合いにイラっとしたが、そうこうしているうちに、影は飛び降りてしまった。
「ああーーーーっ!」
私の叫び声にびくっとする友人を無視して私は走りだした。
どうしよう、自殺を見て見ぬふりをしてしまったぞ。
無事でいてよ、って、無事なわけないいぃ!屋上4階だよ。
屋上に続く階段を登り、ドアに手をかける。
ガチャガチャ。
あれ?開かないぞ。
って、そんな場合ではない、人が死んだんだ。
体当たりでドアを壊そうと、思いきり後ろに下がる。
せーの!
と声をかけて走りだすと、ドアに当たった感触はなかった。
あったのは、床に叩きつけられた痛みだけ。
「わたしに何か用かな?」
ジェントルマンな、でもコワモテの男の人が、私を見下ろしていた。
魔法少女になってよ、とか聞かれたらそっこーでなります。