出会いをプロデュースします。
僕の手元に突然届いた、パルパテイト学園大陸の星の宮学園からの合格通知書。
本当は家の近くの高校に行く予定だった。
だが、親の入学金不払いで合格取り消しになって頭を抱えていたところに、入学金と授業料免除の嘘の様な話が転がり込んで来た。
怪しい手紙に詐欺かと思ったが、突如覚えの無い記憶が蘇る。
どうやら僕は、ギャルゲーの「星をめぐるデスティニー」通称『星デス』の世界に転生したようだ。
「よっしゃーーーー!!」
「何叫んでんの透。」
思わず、ガッツポーズをしてしまった。
これ好きだったんだよな。親に星の宮学園に行く事を話して、早速荷物をまとめる。
早く出ないと入学式に間に合わないからな。
入学式の日
突風が吹いて、僕の視界を桜の花びらが覆う。
目を開けると、すぐ側に女の子がいた。長い黒髪でたれ目の、和服が似合いそうな美少女だ。
「あっ…、透君?」
「もしかして……葵ちゃん? この学園を受けてたんだ。」
「うん、親の仕事の都合でね。兄も今年からここで教師なんだ。3月に別れたばかりなのに、不思議だね。」
「そうだね。僕は親の都合でひとり暮らしだから、葵ちゃん達の家族が居て嬉しいよ。」
「そうなの? 透君が居る事知ったら、ママ喜ぶよ。いつでもご飯食べに来てね。」
「ありがとう。助かるよ〜。」
そんな話をしながら、入学式が始まる体育館へ揃ってむかった。
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統括部サイド
3月上旬にさかのぼる。
「部長、ただいま戻りました〜。」
「長い間お疲れさまでした。始くん。」
「でも、これからが本番ですよね。俺の妹が攻略者とか、複雑ですよ。」
「学園からは、うちの娘が指揮をとるから。少しは楽になるはずよ。あと数年お付き合いをお願いね。」
「はぁ。了解っす。」
この学園大陸は、恋愛ゲームを売りにしている。
いつからか、地球の日本という国でつくられたゲームと同じ世界になり、その登場人物が生まれてくるからだ。
統括部は、かつての恋愛ゲームでの主人公夫妻とその子供や親族、また日本のゲームの記憶をもつ転生者によって運営されている。
恋愛ゲームの実写を全世界に放送して、学園大陸をまかなっているのだ。全世界の各国からもスポンサーがついている。
始の両親もかつての恋愛ゲームの主人公と攻略者だった。そして、生まれた子供の一人も攻略者だった。
始達家族はゲームの筋道を合わせるために主人公の住んでいる国へ渡り、幼なじみとしてすごしていた。
これから、3年間も恋愛ゲームがつづくかと思うとうんざりする。
(なんで、半年とかじゃないんだよ。)
始は、来る日に備えて学園へ向かうのだった。
入学当日
(遥委員長、『星デス』の主人公と姫の出会いのシーン入ります。)
イヤリング型のイヤホンから声が入る。
(イアン、風の精霊の準備お願い。カウント5でいくわよ。花、姫の連れ出しよろしく。花が校庭に出たら、人の制限をしてね。)
((了解で〜す。))
((了解!))
試験の時に葵の友達になっていた花は、一緒に体育館へ行こうと葵を連れ出す。
その後、外の出入り口に清掃業者が入り、掃除を始める。
「すみません。少々お待ち下さい。体調の悪い生徒が出まして…。」
生徒達から、抗議が出るが聞き流す。
「あっ、ごめん。教室に忘れ物した〜。先に行ってて、すぐに追いつくから。」
「えっ花ちゃん。私も行くよ。」
「いいって、ささっと走ってくるから。」
葵を置き去りにして走り出す花。
(遥委員長、オッケーだよ。)
(カウント5、4、3、2、1、GO!)
風の精霊によって、桜の花吹雪が周囲に舞う。
こうして無事に透と葵の出会いが済まされたのであった。
(皆お疲れさま、無事完了よ。次は”星ラビ3”の主人公と王子の出会いよ。イアン、裏庭に移動よろしく。王子親衛隊誘導出来次第報告お願いね。主人公は勝手に現れるから大丈夫よ。)
統括部に休みは訪れない…。
星の宮学園には、今年の新入生でギャルゲーと乙女ゲーの主人公が居る。
『星のラビリンス』という乙女ゲーが大人気で、3作目の乙女ゲーと姉弟作としてギャルゲーが出たそうだ。
私たちの生まれはその時期に当たったらしい。
(忙しいけど、どちらの主人公も記憶持ちでノリノリでよかったわ。出会い編は楽に済むわね。)
星宮遥、前作『星のラビリンス』の主人公達を両親に持つ。星の宮学園の統括委員長。
ゲーム内では、攻略したいのに攻略できない隠しキャラとまで言われた。理事の娘であり、容姿端麗、成績優秀のモブなのだった。
恋愛ゲームは、どうしても何かが足りなくて同じ人しか攻略できない人です。