特務クラス①
第一魔術学校の北校舎の最果てにある教室。
今日からここが、新設された「特務クラス」の拠点となる。
集まった十五名の生徒たちは、どこか落ち着かない様子で周囲を見回していた。
彼らは皆、エリート至上主義のこの学園において「落ちこぼれ」の烙印を押された者たちだ。
そんな不安げな視線が集まる教壇で、ノイはチョークを片手に黒板へ向き直った。
「先生、授業の前に一つ質問いいですか」
前列の席から、エイダが挙手した。少し緊張した面持ちで、しかし真剣な瞳でノイを見上げる。
「なんだ、エイダ」
「あたしたちは今まで、実技の授業でこう教えられてきました。『魔力出力限界が低いのは努力不足だ。根性と反復訓練を積めば、出力の限界値はいくらでも引き上げられる』って……。でも、それって本当なんですか?」
エイダのその問いに、教室の空気がスッと冷えた。
他の生徒たちも、どこか言い淀むようにノイの顔を見つめる。それは彼らが長年、教師や親から呪文のように聞かされてきた言葉だったからだ。出力が低いのはお前たちの努力が足りないからだ、と。
ノイは手に持っていたチョークをカツンと黒板の受け皿に置き、静かに首を横に振った。
「結論から言えば、大嘘だ。少なくとも、この世界の『魔術式』の構造上、一度に引き出せる出力の限界値を後天的な訓練だけで大幅に引き上げるなんて不可能だ。あれはただの悪質なガセネタだな」
「じゃあ……じゃあ、なんで先生たちは『努力が足りない』なんて……!」
悔しそうに拳を握りしめるエイダの姿に、教室のあちこちから切実な思いが漏れる。
「理由は簡単だ。この世界の教育や権威を守る都合のいい言い訳だからさ」
ノイは冷ややかに笑い、チョークを指でトントンと叩いた。
「生まれつき高い魔力出力限界をもった貴族やエリートたちは、努力しなくても最初から高火力の魔法が撃てる。だが、それをそのまま『血筋の差』として認めてしまうと、平民や出力の低い者たちが反発するかもしれない」
だからこそ、奴らはこう仕組んだのだと、ノイは続けた。
「『出力が低いのは、お前たちが努力を怠っているからだ。血筋のせいではない』とな。」
「……そんなッ!」
「そうやって原因を個人の根性にすり替えれば、都合の悪い者たちは『自分は努力が足りないダメな人間だ』と勝手に絶望し、静かに脱落していく。エリートたちは何も手を汚さずに、自分たちの特権構造を正当化できるってわけだ」
その言葉に、生徒たちは言葉を失った。




