4節詠唱と魔力コスト③
「だが、教科書の式はどうだ。『聖なる』だの『紅蓮の』だの、無駄な装飾語句が各節に入り込んでいる。そのせいで各節の変数が『3』や『2』に膨れ上がっている」
ノイは地面の式の下に、ガリガリと数字を書き足した。
「(3 + 3) × (2 + 2) = 24。
同じ初級魔術を撃つだけなのに、魔力コストが20も多くかかってしまい、魔力出力の最大値が24未満の者が使用すれば、当然コストオーバーで不発になるか、最悪倒れる」
「でも……ヴァグネル先生たちは、これよりも魔力コストのかかる中級魔術や上級魔術を普通に使っています……!」
「あいつらは魔力出力限界が100越えのエリートだからな。魔法として一応は成立しているんだ。だが、無駄な発光エフェクトや演出に分散している分、実際の魔術の威力はかなり落ちている」
ノイは石灰の欠片で、下段の極小コマンドを強く叩いた。
「一方、俺の最適化式なら起動コストはたったの4だ。……わかるか? 無駄に魔力コストを消費する見た目だけの魔術より、魔力出力限界が50の俺が放つ魔力コスト4の魔術のほうが『速く、重く、強く』撃てるんだ」
ノイは驚愕に目を見張るエミーの肩に手を置き、真っ直ぐに見据えた。
「魔力出力限界の差なんて俺は気にしてない。力任せの無駄な魔法より、最適化された『魔術式』の方が強い。それだけのことだ」
その言葉を聞いた瞬間、エミーの中で、モヤモヤとくすぶっていた悔しさがすべて晴れ渡り、それ以上の圧倒的な熱へと変わった。
魔力出力限界50の底辺教師。
しかし、その頭脳には、この世界の常識を根本からひっくり返す「究極の最適化理論」が宿っている。
「……私、もっと知りたいです。先生の魔術を、もっと教えてください!」
エミーの瞳に宿った強い光を見て、ノイはフッと不敵な笑みを浮かべた。
「いいだろう。じゃあ、まずは明日の実技の授業で、あのエリートどもを魔術理論で叩きのめすための『次のステップ』を教えるとするか」




