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パチ屋って、変なとこだよ

作者: 天原 夢月
掲載日:2026/05/14

 この物語は、実際に自分が勤めているお店であった実話を少し脚色して書いています。今回は出会いと別れの季節にちなんだ物語を書かせていただきます。

 自分はパチンコ店に数十年勤めている一般スタッフです。この話は、自分が勤めている所の店舗の実話を少し脚色して書いている物語です。 


「入社から退職まで一時間」

 

四月。新しい出会いの季節になります。自分のお店にも当然新卒の若者が入社して来ます。自分は接客業なのに接客が得意でない為、メンテナンス系の仕事をしている事が多いです。そのおかげで、面倒な新人指導には選ばれないのでラッキーと内心喜んでいます。教える方も、教えられる方もとても緊張してしまいますよね。あれが嫌なのです。好きな人の方が少数だと思ってます。今回入社する新卒の指導係が、去年入社した後輩でした。ゲームの趣味が合う後輩で、わからない事を素直に聞きに来るやつでした。その後輩が自分に相談にきました。

「先輩…マジで嫌なんですけど。…何とかならないッスかね?」

「は?今更無理だろ…ドンマイ」

「ほ〜んとにヤダァァァ~」

何とも情けない声で来た事を今でも覚えてます。店舗長からの指示なんで基本は無理だと自分は諭しました。ちなみに、私は「やれ」と言われたのを「嫌です。無理です」と拒否した事が本当にありまして、それ以来指導の話は来なくなりました。そんなこんなで新卒が入社して店舗案内や就業規則等を覚えてもらう為、バックヤードで研修が始まります。最初の部分は店舗長から説明があり、その後に後輩にバトンタッチとなる流れでした。休憩時間に後輩がまた弱音を吐いてきてので「いい加減シャンとしろ!」と、けつを叩いてやりました。その後、新卒と後輩の研修が始まる筈でした。休憩時間が終わりホールに出ようとした時にインカムで店舗長が

「〇〇…事務所、いいか?」

と呼び出しをかけました。後輩は何だろう?と首を傾げながら事務所に向かいました。私もなんだ?と思いながらホールに戻りました。数分後。後輩が事務所から戻って来ました。後輩の顔は不安みたいな感じではなく、ポカァーンとした間抜けづらでした。私はどうかしたか?と聞きにいくと後輩が

「…今日入社した新卒、辞めていきました」

「は?…は???」

その話を聞いて私もポカァーンとした間抜けづらになってしまいました。後輩から経緯を聞くと、店舗長の最初の研修が終わり休憩に入ろうとしたら「あの…辞めます」と言われたそうだ。店舗長が理由を聞くと「なんとなく…」だそうで、説得虚しく退社と言う事になったそうです。この退社までの時間は一時間でした。この時の私の感想は

(何しに来たん?)

これでした。せっかく試験や面接を受けて受かったのに、すぐに手放す事がはっきり言って理解できませんでした。もちろんパチンコ業界という普通の方から見れば分かりにくい職業だと思います。ですが、職業経験と言う意味で働いてみる場所としてはありだと思います。長く続けるかは別として。この頃あたりから面接を受けて受かっても、入社する日に入社して来ない人が多くなりました。他社も受けて受かってそちらに入社するような感じかな?と私達の間では語られてます。しかし、断りの連絡が一切なかったです。どんな理由であれ連絡はよこして欲しいですね。



「まともに見える奴ほど…」

 人は見かけによらないとよく言います。私の店舗にもそんな面白おかしい奴が居ました。そのスタッフは一見礼儀正しい好青年でした。挨拶・言葉遣いはもちろん、業務態度・取り組む姿勢。どれを取っても久しぶりにいい人材が来てくれたと社内で好印象な若者でした。ですが、やはりパチ屋に就職するに辺りどこか頭のネジが外れた青年でした。彼が社内・業務に馴染み始めた頃から「ん?」となる片鱗が見え始めました。まずは虫が好きだと言う事が分かりました。それだけならまだ「そうなんだ」くらいで留まれましたが、好き過ぎて幼少期は採って育てて死んだ死骸を、部屋の壁に画鋲で刺していたそうです。中々にサイコパス染みていると思いました。そのせいで、両親に脳に異常があるんじゃないかと心配されて病院に行ったそうです。それはそうだろうなと私も心配になりました。今は流石にしてはいないようです。

 もう一つ彼の面白おかしいところは、基本的に何故か皆と違う意見や主張をする事です。俗に言う逆バリですね。例えば、休憩時間に休憩が重なっているスタッフと雑談をしています。

「〇〇が面白かった!〇〇さんも見てみなよ」

「そうなんだ…じゃあ今度見てみるよ」

と、なんて事はない会話をしていると

「実は自分も見ましたが…自分にはあまり響きませんでしたね」

と、話の腰を折るような割り込みをしてくる事が結構ありました。最初のうちは違う感性や感じ方をする人なのかと思いましたが、話を聞いていると大体の話に反対の意見を返していました。あまりに逆バリみたいな事をしているので、「逆バリするの好きなの?」と率直に聞いた事がありました。そしたら

「いや…実は、逆バリするのカッコイイってちょっと思ってます」

と、ニヤニヤしながら返されました。その時から私の中での彼の印象が

(あ、こいつ結構おかしい奴だ)

になりました。だからと言って嫌いになったかと言うとそうではなくて、普通にイジって雑に遊べるやつなんだと思ってしまいました。本人もある程度ならイジってください!とも言ってましたのでマゾの素質もあったようです。

 そんな彼ですが最近退職してしまいました。元々何年も勤めるつもりもなかったらしいですが、職場や人間関係が嫌になったわけではありません。しっかりと自分の将来を見据えての退職でしたので、私も頑張れよと一言伝えて見送りました。地頭が良かったので公務員となり、今は新しい環境で頑張っていると思います。私が唯一懸念しているのが、彼の性癖をその職場で受け入れられるかが非常に心配です。次の職場ではなるべく当たり障りの無い受け答えと、行動を願っています。



「かわいい後輩がガキ大将に」

 昔の新卒の話です。入社当時はそれはもうガチガチに緊張して、おっかなびっくり仕事していました。仕事にある程度慣れてからも、不安なのか色々と消極的な子なんだなと思ってました。私はその時人事異動で違う店舗に出向する事となり、その新卒の子とは離れる事になりました。私も初めての異動で緊張しながらも早く馴染もうと頑張って業務していました。少し落ち着いた頃、地元に戻り配属元の店舗の様子を見に行きました。色々と様変わりしていましたが、ある程度分かるので懐かしさがありました。店内を見回していると、心配だった新卒が私に気付き声をかけてきました。

「あれ?先輩じゃないッスか!!お疲れ様です〜」

「お、おう…元気にやってるか?」

私の記憶の消極的な子の人物像と全く真逆の感じになっていて、正直面食らいました。しかし、垢抜けて明るくなったならそれに越した事はないと思い嬉しい気持ちになりました。それから半年後くらいに再び人事異動で配属元の店舗に帰る事になりました。私は戻るのかと嬉しいような面倒くさいような感覚になりましたが、社命なので従わなければなりません。戻ってきてルールが変わった事などを確認しながら日々の業務に勤しみました。そうして分かった事がありました。垢抜けて明るくなった後輩の理由が。それはこの業界ではあるあるなパチンコに依存気味だという事でした。一度勝ちを経験してしまうと、次も次もと打ちたくなる衝動。その泡銭で豪遊し優越感を得てしまい、自分ならやれるという勘違いの思い込み。後輩はそれに陥ってしまっていました。仕事は確かに出来るようになりましたが、先輩スタッフの意見を素直に聞かず、自分の方が上手く出来ると身勝手な理由で勝手に仕事をする事もありました。また特定のお客様とばかり接客をして、他のお客様を蔑ろにもする場面が多々ありました。それらについて私や先輩が注意をすると

「いや、接客業なんでお客様を大事にするのは当たり前じゃないですか?何か悪いッスか?」

「あのお客様がこっちのルールを守ってないから伝えたんすよ!なのに逆ギレされたんスけど?!俺が悪いんですか!!」

と、私達に返してきました。もちろん、接客業でお客様とのコミュニケーションはとても大事です。ですがそれは来店してくれた全てのお客様にしなければならないのです。特定の方にだけ特別な接客をして、それ以外をテキトーに扱うという事はスタッフとしては駄目なのです。しかし後輩は自分は悪くないと常に主張し、気に食わなければ不貞腐れてまともに仕事をしなくなりました。その度にまた指導が入り、不貞腐れてるを繰り返す悪循環が続きました。更に悪い事に無断欠勤も増えて、会社内では完全な腫れ物になってしまいました。その頃には誰の話も聞かなくなり、本当に手のつけようがありませんでした。そして、現代では珍しいクビになるエピソードが起こりました。それは他の店の稼働調査の為に社用車で外回りに行っている時でした。通常ならどんなに遅くても三十分から四十分で帰って来れます。しかし、その日は一時間を過ぎても帰ってこず、連絡もありませんでした。流石に何かあったと思い、役職者が後輩のスマホに連絡しました。私はホールで気になりながら業務をこなしていました。休憩時間になり私はバックヤードで一服していると、役職者が見るからに疲れた表情でバックヤードに入ってきました。私が「どうしました?」と聞くと、本当に気怠そうに話してくれました。

「今、稼働取りに行ってるあいつ何だけど…スピンして対向車にぶつかったらしいわ」

「えっ?!マジっすか!?」

私は耳を疑いました。確かに季節が冬という事もあったので、凍結した路面で滑ると言うのはこちらでは日常茶飯事です。ですが、仕事中に社用車で事故にあってしまったというのが問題でした。もちろん会社的な意見です。実際私は車の事故より、運転していた後輩が気になりました。聞けば本人と相手側で怪我等はありませんでしたが、後輩のその後の対応が状況を悪化させたらしいです。追突事故はお互いの車の破損状況や怪我の有無の他に、優先道の確認・運転手同士の運転の仕方・発進時の確認と色々と話し合い、警察立ち会いの元で免責の確認等をします。しかし後輩は事故を起こしてテンパって、本来会社に一報や相手方との話し合いをすっ飛ばして自身の親に事故の報告をしたそうです。テンパって一番信用している人間に電話をするのは分かりますが、その間に相手方が警察を呼んだり先に色々対応していました。その時にこちら側が一方的に悪いと決めつけた風に話していて、全てこちら側の責任にされていました。ですがそんな大事な場面でも後輩は親との電話を続けていたそうです。その電話が一時間近く音沙汰なかった原因だったようです。その後は店舗長が現場に向かい、後輩の代わりに事故の対応をしたそうです。店舗長が何とか相手方を刺激せずに話し合いをまとめられたようで、何とか最低限の対応で済んだようでした。それから店舗に帰って来て、店舗長は怒るのを通り越して呆れながら説教をしていました。説教されている時の後輩の顔が本当にこの世の終わりみたいな表情だったのを今でも覚えています。初めての車での事故でパニックになりどうしようか迷うのは仕方ありません。ですが相手方や警察の話に参加せずに店舗長が来るまで一切話していないというのは、やはり問題があります。少し辛辣にはなりますが、流石に庇いきれません。その後直ぐに後輩は退職しました。音も立てづにと言うのはこの事なんだと思いました。





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