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修羅神   作者: 不病真人
第一部 撼世奇人 

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11/12

第十一話 衝撃

ガキン――!


 フォンの腕と、ヒリュウの手刀が真正面から噛み合った。

 金属音にも似た衝撃が下水に反響し、苔の水滴が一斉に落ちる。


「っ……!」


 フォンは踏ん張る。

 だがヒリュウの手刀は、想像以上に重い。


(ただの跳躍手刀じゃねぇ……!)


骨が鳴り、皮膚の下で肉が震える。




 受けた瞬間、振動を激しく感じる。


 衝撃が腕から肩、背骨、腰へと流れ、地面に逃げる。

 水たまりが弾け、下水の床に波紋が走った。


(打撃じゃない!まるで押される!推してやがる!)


 「ウオおおおお!まだぁまぁだぁ!ぶっ潰れろ!!!」


ジャラッ——。


 投げた。


 鉤爪が壁を穿つ。

 石を噛み砕き、鎖が一気に張る。


 次の瞬間、ヒリュウの体が引き寄せられる――否、違う。

 地面が、引っ張られた。


 鎖が地面を削り、床の岩盤が抉れ、ヒリュウはそれをまるで“足場”にして蹴った。

引っ張るだけなのに、何かを蹴ったようだ。

そう、まるで上身よりも充分に強い足で飛んだかのようだった。


 爆発的な加速。


 フォンの視界から、赤い影が出来上がる。

朦朧として猛烈。


「悪魔のお戻りだあ!」


「ぐっ!」

 「叫べこの名を!」


「あ、あ...あああ!あれは天魔の誘い!」


ヒリュウの鎖が空気を切る。二本、三本、天井に叩き込み、そこへ体を預けるようにして振り子の軸をつくる。

まるで雨だ。

引き立て役とでも言うか、赤布が風になびく。フォンはそれを見て、次の瞬間に理解する——あれは単なる突進ではない、軌道の生成だ。


ヒリュウは脚で振り子の反動を溜め、一本の鎖を素早く解く。宙を舞う赤の塊。空中手刀——手のひらを刃にする動きが、鋼鉄の振り子と同期する。

ヒリュウの体は空中で八の字を描き、拳は手刀のまま。空気を裂く一閃がフォンの側面を襲う。


 (はっ、速ッ!)


「フォン!その程度か!その内臓が強さは!」


 「...レ、レイ!」


(...あぁ...俺の強さをまだ見計らっているのか..)


 「無常の!グハァ!」


「レイ!なにを!」


(なっ!)


 「ヤッヤマッ!」


「手数多くて損はしない...まさか観客が真の観客のみとは思うまいか?フォンよ!」


 「お、お前ええ!」


レイはヤマをフォンの方に飛ばした、彼は囲まれていた。剣闘士が応援者と呼んでいたやつらに。


 「さぁ、始めようか!!真の試合を!死合うぞ!」


「来い!」


 「シャオリャ!」


(い、今行くのかレイ!おお...頭かく...いや、違う、ヤマを使えッってことか!?)

 

 「ぅんん...おおおおうぃうううあああああ!あに!」


バシン!


ジャラッ——。


ヒリュウの鎖が空気を切る。二本、三本、天井に叩き込み、そこへ体を預けるようにして振り子の軸をつくる。

赤布が風になびく。フォンはそれを見て、次の瞬間に理解する——あれは単なる突進ではない、軌道の生成だ。


 しかし叫びがその空気をさらに切り裂く、叫んでいるヤマの体が宙を舞った。


 重傷を負ったはずのヤマは、すでに意識が朦朧としていた。肋骨が何本か折れ、左腕は不自然に曲がり、口からは血泡が溢れている。

それでもレイの手によって投げ出されたその身体は、まるで巨大な鉄槌のように剣闘士の懐へと飛来した。


「ぐぅおおっ!?」

ヒリュウが咄嗟に両腕を交差させてガードを固める。だがヤマの体重と勢いが加わった衝撃は、予想以上の破壊力を発揮した。

 


ドガァァン!

鈍い打撃音が響き、フォンの巨体が後退する。

勢いをそのままに利用し、バク転をした。


ヒリュウはその間にて脚で振り子のような反動を溜め、一本の鎖を素早く飛ばせば、まるで宙を舞う赤い彗星となる。

やがてその体も回転をやめては直線となり、鋼鉄の武器との振り子を同期させる。


 「セア!」

ヒリュウの体は空中で八の字を描き、拳は手刀のま構えへと。

空気を裂く一閃がフォンの側面を襲う。


しかし、彼ほどのものでなければフォンのこの行動についていくのは不可能であった。

応援者――いや、彼が手下たちの輪が一瞬だけ乱れた。

その隙を、レイは見逃さなかった。


 「風雲掌!」

レイは一気に彼らを飛ばした。

手の間には気流の渦が巻き上がる。

 その隣ではフォンは相変わらずにヤマを武器にする。

ヤマの傷が増したと言うのに。

「ヤマァ! お前はもう武器だ! 俺の最高の凶器だぞォ!」

レイは叫びながら跳躍した。

回転させたヤマの勢いを利用したから、そのままt空中で体を捻り、右足を振り抜く。


 「上か!?」

だが違った。

ヤマの重さを利用して早く下に堕ちればそのままヤマでヒリュウの攻撃を防御する。

次に着地したフォンは、ヤマの体に隠れて、ヒリュウの死角から、下段を薙ぐような鋭い蹴りを飛ばす。

それはヒリュウの脛を捉えた。

ゴキン

骨が軋む音がした。

 

ガッ!


ヒリュウは歯を食いしばりながらにヤマの体を掴み、盾代わりに振り回そうとした。

「返しだああああ!」

だがその瞬間、ヤマの右手が微かに動いた。


 「う……うぅ……あに……」

朦朧とした意識の中、ヤマの骨はヒリュウに刺さっているのを感じた。威力はほとんどない。

だがその意外はヒリュウの動作が一瞬だけブレた。

その刹那。

フォンの追撃がくる。

「オラァァァァ!」


 右のストレートがフォンの顎を捉え、続けて左のフックがこめかみを抉る。さらに膝蹴りが腹にめり込み、ヒリュウが大きく仰け反った。

だがそれは決してぶっ倒れるとか敗北を意味していない。


 

フォンはそんなことも知らずには即座にヤマの足首を掴み直し、今度は横薙ぎに振り回した。

ブンッ!

ヤマの足が弧を描き、ヒリュウの側頭部を直撃。

ヤマの体重が、まるで鉄球のように働いた。ヒリュウの耳から血が噴き出し、膝がガクンと落ちる。


 (違う!倒れるんじゃない!これは予備動作!)


ヒリュウの予備動作、それはほぼ跳躍できない体制からの極限のタックル。

それは普通の体勢よりも早く、だが正常な構えからすればきっと警戒される。

故にヒリュウはこうまでしてはフォンの、敵の不覚を狙おうとしてきた。


 「うおおおお」

(ま、間に合わん!)

フォンの雄叫びと関係なくそれは飛来する


フォンが、彼の手がヤマの足首を掴み直した瞬間、すでに遅かった。

ヒリュウの体が、膝をついたままの低い姿勢から、まるで地を這う蛇のように爆発した。

(あ……!)

フォンの脳裏に閃いたのは、レイの姿だった。彼が常に自分から、フォンからすればあり得ない体勢で凄まじい威力を発揮して、動作性もあっや。ヒリュウのこの一度、膝を折って体を沈め、地面を蹴る力を最大限に溜め込む。

それもレイを想起させるものだった。


そしてその考えの瞬間に、常識外れの低空タックルが間合いを詰めてくる。

普通の人間なら「膝が落ちた=ダウン」と勘違いする。

だがヒリュウにとっては、あれが最大の加速装置だった。

「ぐおおおおおっ!!」

ヒリュウが、地面を抉るように前へ突き進んだ。

直線だ。

凄まじい速さでおそらくは、軌道修正どころか、ぶつかる前より止まることを考えてもいない。

故に速い。

この膝立ちの姿勢から放たれたタックルは、通常の直立のタックルよりも速い。

放たれるのもそう、スタートダッシュは速く、そして放たれたこのタックルも速い。

 そしてフォンとヒリュウの間はもうかなりと近い。

この距離

 例え警戒していても反応が間に合わない領域だった。

フォンは、ヒリュウを近づきさせてしまった。

警戒をしていないせいであった。


右肩。

ヒリュウの肩が、フォンの右脇腹に正確にめり込んだ。

その衝撃は肩にまでも及ぶ。

ゴッ!


 内臓が一瞬で圧縮される衝撃。フォンの体が浮き上がり


「がはっ……!」

息が詰まる。肺が押し潰されたような痛み。

フォンはヤマを抱えたまま後方へ吹き飛ばされ、やがては地面に倒れる。

残る衝撃でヤマの体がフォンの胸に重くのしかかり、追い討ちをかける。

ヒリュウは即座に立ち上がった。

血まみれの顔だ、しかし目は冷静だった。

「てめぇの計算通りにはいかねぇよ、小僧……!」

ヒリュウはゆっくりと歩み寄る。

同時に剣闘士たちの輪が、再びレイを囲む形になっていた。


 「しぶといな、シャオ!」

フォンは這うように体を起こそうとしたが、右半身がほとんど動かない。

ヤマの体が、今度は呪いのようにレイを地面に縛りつけていた。

(くそ……ヤマ、ただでさえ今ので肩がやばいのに...骨が関節に刺さって上手く動けない……)

時間が経てば起き上がるだろう、だが、だがしかし!ヒリュウはそれを許さなかった。

次の瞬間、ヒリュウの足がフォンの腹に振り下ろされた。

ドンッ!

砂が舞い上がり、フォンの体が再び沈む。ヤマの体がクッションになったが、それでも衝撃は内臓を直撃した。

口から鮮血が噴き出す。


「もう殺す...わけでもない」

ヒリュウは嘲るように笑った。そしてゆっくりと拳を握り直す。

「俺はお前を殺す。だがな……お前が憎くてそうしている訳じゃない。」

ヒリュウはヤマの体をレイから引き剥がした。レイの指が、必死にヤマの服を掴むが、力が入らない。

ヒリュウはヤマの首根っこを片手で掴み、まるで獲物を掲げるように高く持ち上げた。

「だがこいつは違う、こいつは無能すぎる。弱者極まりない。見てろよ、フォン。ゴミが、どうやって粉々になるか、そしてこいつ」


 「わお!!!」

フォンの方から声が上がった。興奮と恐怖が混じり合う声だ。


 「てめぇら!てめぇら!こっちを見ろ!!」


「シャオ!」

ヒリュウはヤマの体を地面に叩きつけようとした。その瞬間――

フォンの目が、狂ったように動き出す。

「ヤマは……俺の武器だ……!」

フォンは折れた右腕を無視し、左手の指を地面に突き立てた。砂を掴み、爪が血まみれになるまで抉る。そしてその勢いで、体を跳ね上げた。

異常なまでの執念か?気が狂ったか?

その体が、まるで糸が切れた人形のようにヒリュウへ突っ込んだ。

ヒリュウがヤマを振り下ろそうとした刹那、フォンはヤマを掴んではそのままにヒリュウを下へと投げつける。


 「ば、バカな!腕が動かない!」

ヒリュウが見た先、それは棒のようにまっすぐ固まっているヤマだった。


彼は体にしがみついているフォンによって力を加えられて硬直する。

故にその力もヒリュウに伝わっては彼を硬直させた。


 「意外か!!お返しだああああああ!!」


 骨が砕ける音がした。

ヒリュウが仰け反り、喚く。


 「あああああ!!」

ヤマの体が手から離れる。レイはそのまま空で足を伸ばし、ヒリュウの胸板へ叩くように着地する。

ゴキィ!

ヒリュウの胸骨が凹んだか、凄まじい音がなる。


 ガン!

 

ヒリュウの手刀が再び!

彼に乗っているフォンに直撃する。

だがフォンは足を退かさない

「ひっ...ひぃいけええええ!」


 「いやだよおおばーか!うるセィエ!!」

当たる寸前、フォンはただ受けたじゃない。

受ける“軌道”を自ら作り替える。

フォンは直立するために足を伸ばしたように見えたが実はその動作がもたらす筋肉の動作を制限していないことを、彼の体内でしていた。

だから手刀の刃受ける際の衝撃を掴んだのだ。

相対する衝撃が相殺して、彼はなんとか立っていられた。


 つまり先に弱い衝撃がくることを選んで、それを正面から受けては、後からくる強い攻撃を相殺させた。

衝撃が掴まれた瞬間、フォンの体内で振動が分割される。

 「ふいいい!!!許して!!」


 「あ?」


フォンは足をどかす。


 「おうら!!」


 「ハッ!!!」


フォンの拳がヒリュウの顔にめり込む。

(別に許してねぇよ、くるのを予想してこうしただけだカス。)

フォンは選んでいた。

「あ?」

と言う声もそこからの疑問であった。

いかにヒリュウを潰せるかの最善を探す。

そうなればただ一つ。


 自分が捉えやすい、彼の直線タックルだろうと。


 「うっ...しかしおめぇなぁ...」

フォンは右手が折れていた。

(幸い元より肩が怪我して上手く動かんからいいか。)

彼はすでに傷があった腕でヒリュウにトドメをした。


ならば威力はなぜ足りたかと疑問が出ることもあるだろう。

事実ヒリュウの子分らは至極困っている。


 「なっ...なんで?」

「ひ..ヒリュウ様?」


(何驚ろいいぇてんだよ、こいつは衝撃を逃せられなかっただけじゃん。)


 そう、衝撃。

フォンは使った、衝撃を。

先ほどのヒリュウの攻撃を受け流した時と同じく。

今度は自分の弱い攻撃がヒリュウに流れて衝撃を相殺させては、強力なる一撃を与えた。


 だがなぜヒリュウがぶつけてきた時にある衝撃は無事なのだ。


(直線...それが敗因だな)


直線、ヒリュウは直線でタックルをする。

その際小さく体を動かして、例えば少し肩をすくめる程度。だがそれで自分への衝撃を逃す。


しかしフォンの完璧なる時間の衝撃は彼のその逃す動作の際の衝撃を殺した。


 故にヒリュウは自分で、自分の衝撃を消せなかった。


(受け身が取れなかったってことだ)


 「と言うわけでお前は俺の戦利品だ、ヒリュウ、しばらく起きれないように殴り続けてやる。」


ドゴォ! ゴリ バザー


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