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5話 再会

 試験が終わり、体が放り出されるようにして気が付けば試験室の外に出ていた。

 不思議な構造だな。


「よっ、オロチ。どうだった?」

「どう……か。俺の奴だけ多分故障してたから1位は取れないだろうな」


 途中からどういう訳か一向に魔物が出てこなくなったのだ。スコアも200点のまま停止しているし魔物が変わるたびに魔物自体の点数が上がってたから200点は相当低いと思う。多分1位は難しいだろう。

 もし落ちていたら故障していた旨を申告しにいって何とかしてもらうか。


「故障? そりゃ災難だったね。天下のレオンハルト帝国軍がまさかミスするとはね~。ま、気落ちしないでよ。僕だってちょっとミスしちゃったしお互い様さ。二人とも受かってることを願おう」


 ミスしても全然元気じゃないかこいつ。

 どうせ俺を慰めるために嘘をついたんだろう。

 それにしても運が悪い。完璧だと思っていた俺にも運が悪いという欠点があったとは驚きだ。運良い方だと思ってた。

 いやどう考えても故郷が魔物に消し飛ばされてる時点で悪いか。とまあ自分で心の中でブラックジョークがはけるくらいには回復した。

 

 それからというもの試験は次から次へと行われていく。

 その流れを見ながら俺はとある人物を探していた。最下位の「シオン」という名の存在だ。

 前で述べた通り、俺達の村で名付けられた名前はかなり珍しいものが多い。

 そしてシオンという名も俺達の村では珍しくもないが、世界的に見ればかなり珍しいはず。

 であれば俺の幼馴染のシオンである可能性は極めて高い。

 あいつがもし生き残っていたとするならば俺の今後のキャリアにおける最大の障壁になることは間違いない。

 魔力がない。一見するとそれはデメリットでしかないのかもしれない。

 だがそれと同時に奴について何もわからないという事にもなってくる。

 魔力が少ないながらもありさえすれば俺なら実力をある程度測ることが出来る。

 しかし魔力が存在しないながらもあいつは俺の実力と一度並んだ。だからこそ俺はあいつの実力だけは測る物差しが存在しないことになる。

 英雄になれるのはどの時代もたった一人だけ。それを脅かすとしたら。


「……あいつだ」


 その存在を見て俺は思わず言葉を口にしていた。

 生存者は1名。それが俺だけだったはず。不謹慎ながらもあの時俺は確実に英雄になれると思ってしまった。

 たった一度力を見せつけられただけ。だがあの出来事は今まで敵なしだったはずの俺からすればとても大きな事件であったのだ。


「あいつって、あー最下位の子? やっぱり知ってる子だったの?」

「ああ。知ってる。知ってるさ」


 そうか。お前も来たかシオン。

 だが英雄の座はお前には渡さない。何故なら俺がお前が見ることのできない高みへと昇り詰めるからだ。

 魔力ってのにはそれだけの力がある。


「あいつは俺の()()()さ」


 

 ♢



 第2種目が終了した。その結果がスクリーン上に表示された時、俺は思わず目を疑った。

 試験中の故障が原因で高順位は望めないだろうと思っていたのにまさかの1位だったからである。


「今年の受験生は豊作だな。まさか上限値が二人もいるとは」


 試験官のその言葉で何故途中で何も出てこなくなったのかを理解した。

 そして俺と同列で1位に名を連ねているのがシオンであることを確認してあの幼馴染のシオンであることが疑いようのない事実として突きつけられた。

 

「ふーん、あの幼馴染の子、1位なんだ」

「みたいだな」


 あっちも俺に気が付いているようで視線が合う。

 流石に俺があのオロチだってことは分かってたか。

 3年間会わなくとも幼馴染だったわけだしな。


「へ~、可愛い子だね」

「可愛い? まあ多少はな」

「多少どころじゃないよ。帝国でもトップレベルに入るくらい可愛いんじゃない?」


 やたらと食い気味にそう言ってくるアンドレアに俺は少し不思議に思いながら頷く。

 そして、胸は私の勝ち、という嬉しいのか悲しいのか分からない独り言が聞こえてくる。

 いやその部分、()に勝って何が嬉しいんだ?


「では合格者のみついてこい」


 第2種目を通過したのは20人。カトリンの時代には5人しか第2種目を通過できなかったらしいが、昨今の魔物被害も相まって基準が少し下げられたらしい。

 まあそれでも千人以上の受験生の中からたったの20人しか合格者は出ないのだが。

 試験官の指示に従い、俺は歩き出す。

 向こうからアイツが歩いてくる。

 久しぶりの対面だ。だが感傷に浸ることはない。

 

「久しぶりだな」

「……うん」


 言葉少なに交わした再会の挨拶は無機質なシオンの言葉で締めくくられると、そのまま会話することなく次の種目が行われる場所へと向かうのであった。

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