4話 入隊試験
第1種目の能力測定は問題なく終了した。
種目が終わる毎にスクリーンに順位が映し出されている限りでは俺がトップらしいしな。
まあ、魔法の技能についての測定が多かったから俺にとってかなり有利なものだったがな。
脱落者はここで半分くらいか。
「ねえ、君何位だった? 僕ちょっとヘマしちゃって5位だったよ」
そう言いながらも顔は少し誇らしげな先程の少女が隣に来る。
5位か……へえ、アンドレア・ヴァインレットって名前なんだ。
「その顔からしてどうせ落ちてなかったんでしょ? ねえ、何位なの?」
「教える義理はない」
「あっ、分かった! 僕より順位が低くて言いたくないんだ! なら聞かないでおいてあげる」
本当は1位だがそんな事を知らないアンドレアはニヤつきながら俺の顔を覗き込んでくる。
まったく。ここでの順位なんて何の役にも立たないというのにはしゃぎやがって。
そう、本番は第2種目にある。そこが最も点数の割合が高い。
たとえ第1種目で低くとも第2種目の点数次第では順位がひっくり返ることは大いにあり得る。
この順位というものが部隊を選ぶ優先権に関わってくるのだ。
何としても1位で通過したかった俺は順位が表示されているスクリーンを見上げる。
そして何気なくその最後に書かれた名前を見てハッとする。
「……シオン」
「ん? あー最下位だねその人。知り合い?」
「いや、そんな訳がない」
自分に言い聞かせるように俺はそう言う。
あの事件の後、カトリンさんと一緒に生き残りを探しにいき、確かに誰も生存者はいないと確認したはず。
シオンはその時に死んだんだ。だから居るはずがない。
「そんな事よりも次の種目に集中しないと」
「てかそういえば君、名前なんて言うの? 僕だけ知られてるのは不平等だよ」
それもそうか。そんなつもりはないが、名前を利用されるかもしれないという不穏な予測は後々面倒な事になる。
それに隠す必要性も感じないしな。
「オロチだ」
「ふーん。珍しい名前だね」
「よく言われる」
あの村ではこういった名前が多いのだが、ここに来てからというもの珍しがられることばかりだ。
そこでようやく俺の名前が一般的には変わっている名前であるという事に気が付いた。
「こちらに並べられている試験室に入室してもらう。もちろん1つの試験室につき1人だ」
そう言って試験官が案内した先には10個のこじんまりとした部屋が並べられていた。
実戦形式という話を聞いていたんだが、どう頑張ってもそんな風には見えない。あれ? 今年から筆記試験に変わったのか?
「順番は受験番号順にすると脱落者が存在し間違いが発生する恐れがあるため、先程の順位を使用させてもらう」
試験官がそう言うと、空中に半透明なスクリーンが表示され順位表が張り出される。
「1位の者から順番に部屋へ入室してもらう。1位の者は1番の部屋、2位の者は2番の部屋といった具合だ。ではまずは1位から10位の者までこちらに来てくれ」
へえ。いちいち毎回ランキングが公開される理由ってのはこれのためだったのか。
てか俺一番最初なのか。他の奴のスコアを見て安心しながら受験したかったのに。
受かる受からないの話ではなく俺にとっては1位が取れるかどうかが一番の懸念点だからな。
「僕、5位だから行かないとだ。じゃね、オロチ」
「いや、俺も一緒に行くよ」
「へ? そうなの? 案外順位高かったんだね」
「いや、順位表みりゃ名前知ってんだから分かるだろ」
どうやらかなり俺の事を過小評価していたらしく、探すのが煩わしいくらいの順位だと思っていたらしい。
順位表の頂点の座に示された俺の名前を見てアンドレアは目を丸くしている。
「い、1位なの……? それにベルンハイマーって」
「ああ。分かったらさっさと行くぞ。もう俺達以外は待機している」
そうして他の受験生たちと同じように俺は1番の部屋の前へと立つ。
トップの成績の者達が並んでいるため、他の受験生たちからの視線が集中しているのが分かる。
「ベルンハイマーってあのベルンハイマーか?」
「親戚かもな。魔導王は結婚してないし兄弟も居ないはずだしな」
別に隠しているわけではないが、カトリンさんに養子がいるという情報はほとんど出回っていない。
だから俺の姓を見てどんな存在なのかと測っている者は多い。
正直俺からすればどうでもいい事だ。誰の親戚であろうと俺がこの帝国で最強の軍人へとなることには関係ないのだから。
何を目指して「絶対的な力」を有するのか。それに対しての俺の答えは未だに出ていない。
だがその答えが出ていなくとも別にどうだっていい。手にしてから考えれば良いだけの話だ。
「制限時間は1人10分。では入れ」
そう言われて俺は目の前の部屋の扉を開ける。
周囲の景色が一瞬にして切り替わる。無機質な一室。しかしその広さは外から見たものとは全く違う。
十分に体を動かせそうな空間だ。
というか帰り方が分からんしそもそも試験の内容すら分からん。入ったら説明があるのかと思ったが、見たところ何もない。
「……いや、真ん中に何かいるか」
真ん中に魔物のような形をした生物らしき存在がいる。大きさは似て非なるが。
そして少し上を見ると0点と書かれている半透明なスクリーンが表示されている。
「取りあえず目の前のあいつを倒してみるか」
そう呟いて軽く大型魔法を放ってみる。数瞬後、魔物らしき存在の姿は焼失し、0点と書かれていた表示が10点という表示へと切り替わっていた。
つまりさっきの魔物らしき存在を倒せば10点獲得したという事だ。
「なるほど、理解した」
倒した後に新たに魔物らしき存在が現れる。それは先程よりも凶悪な見た目をしていた。
「取りあえず10分間、無心で倒せばいいという事か」
試験のシステムをすべて理解した俺は持っていた魔力を解放するのであった。
♢
「いきなり大型魔法だと……何だこいつは?」
最初の10人が入った直後、試験官は自身にだけ表示される各部屋の監視カメラを見てひとり驚愕していた。
注目しているのは「オロチ・ベルンハイマー」という名の受験生の画面。
例年、能力試験で1位の者は基本的に軍志望者が通う学校の主席であることが多いため、見たことのない名前であることにまず驚きがあった。
そして次に明らかに受験生レベルではないほどの魔法の威力、そして次から次へと重ねられていく点数の上がる速度は試験側で用意している訓練用魔物の規定数を超えかねないほどであった。
訓練用魔物は一応、それを製造することに長けた存在が軍にいるため、数は無限に用意できるものの、今回は受験生全員の分として用意しているため無駄使いはできない。
「まさか久しぶりに上限を突破する者が現れるとは。それもベルンハイマー、ね」
僅か開始5分で訓練用魔物の規定数を終え、不思議そうな顔をしている彼を見て試験官はニヤリと笑みを浮かべた。
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