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紅いホタル  作者: Karyu
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2082年11月4日 エジプト・カイロ

紅いホタル……。二年ほど前に書いていた草稿を見つけました。


それでちょっと書いてみようかと……。でも、ただいま違うのを執筆してますので皆さんの反響次第で決めさせていただきます、勝手ながら;;

 バン! バン!


 二発の乾いた銃声がとある建物の中で響く。銃声に伴い、二体の死体が血を流しながら床に倒れた。生々しい音が建物の通路に二つ、落ちる。


 現在位置はエジプト・カイロにある、とある研究施設である。建物内では3分ほど前から警報が鳴り響いており、先程倒れた二人の研究員を撃った一人の男は、銃を懐のホルスターにしまいながら駆けている。


 男、否、青年といった表現が正しいのかもしれない。青年は全身を黒いスーツとオーバーに包み、髪の色も黒い為、東洋人であろうことが予測されるが確証は持てない。


 青年は軽快な身のこなしで研究所内を疾走し、頭に装着していたゴーグルに浮かび出される電子地図で現在位置を確認する。


 青年は立ち止まり、またも銃を取り出す。通路両端に設置された、赤く点滅する警報ランプの光を頼りに、銃の種類はベレッタM92だと推測される。


 ベレッタM92、イタリア産の9mm口径の半自動拳銃である。


 青年はおもむろに銃を構え、自分の背後目掛けて数発連射した。


 バン! バン! バン!


 その弾数3つ。その銃弾に伴い3つの鈍く、生々しい音が続く。どうやら青年を追跡してきた武装兵が、銃を構えるより先に青年に撃たれたようである。青年の背格好から推測するに齢十代後半、しかし熟練の兵士を正確に撃ち抜く技量から、正確には計り切れない。


 青年はまたも駆け出し、一直線に延びる通路を、身を屈めながら疾走する。その速度は滑らかで無駄な動作がなく、足音一つすら聞こえてこなかった。


 暫くして、青年はまたも立ち止まる。目前には重厚そうな扉と、その横にはセキュリティロックが取り付けられていた。


 青年は手馴れた動作でセキュリティロックのカバーを外し、番号を入力する。ものの見事に扉は開き、中には複数の白衣を着た研究員が働いている。いきなり開いた扉に驚いた研究員達は見知らぬ青年の姿をただ凝視していた。


 青年はベレッタM92をホルスターから取り出し、躊躇いなしに研究員達へと銃口を定めた。


 バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン!


 10発もの弾丸は数秒も経たないうちにすべてが発射され、なんと二十人もの研究員が倒れた。研究員達の白衣からは紅い血の花弁が徐々に広がり、青年の周りには大小さまざまな血のバラが咲いた。


 青年はそのまま研究所の奥へと足を運ぶ。研究所はかなりの大きさを有していたが、今や青年以外に生命の兆しを促すものは何一つとして存在はしなかった。ただ無機質に音を奏でる機械と青年の一足一足が地面に当たる音のみである。


 カッ、カッ、カッと硬い床を鳴らしながら進む青年は、研究所の隅にあったただ一つの戸の前で立ち止まった。暗視ゴーグルの正面左側では電子地図が展開し、青年が目の前にする戸の位置は赤い丸で印され点滅していた。


「これより、調整を始める(レギュレイトスタート)


 青年は声を発し、それに答えるかのように今度は若い女性‥‥‥いや、少女の声が聞こえた。


調整承認(レギュレイトアプルーブ)


 青年の口元には暗くて視られないが小型のスピーカーが存在し、そこを通じてどこかと連絡を取っている様である。


 青年は右手に握ったベレッタM92を固く握り直し、右脚に全体重を乗せるようにして戸を蹴り破る一撃へと転じた。


 バタン!


「Who are you?!(誰だ、お前はっ!?)」


 戸の奥には部屋があり、その部屋の机の席に一人の男が鎮座していた。そしてその向かいには一人の研究員が報告書などを提出している最中であった。


 席に座る男は、スーツを着こなし恰幅の良いアラブの石油王らしからぬ出で立ちをしている。しかし青年はその恰幅の良い褐色の男の問いに応える代わりにベレッタM92の引き金を引いた。


 バン!


 鼻を差す薬莢の匂いが狭い空間で瞬時に広がり、自分の雇い主たる主人が殺された現場を目の辺りにした年長者の研究員は乾いた悲鳴を上げる。


 青年は銃口をその研究員に向けて引き金を躊躇わずして引いたが、ベレッタM92はカチッ、カチッと音を鳴らすだけであった。


 それを見極めたのかその研究員は逃げるように青年の隣を駆け抜けて行ったが、青年は円滑な動作でベレッタM92をホルスターに仕舞い、左手にワルサーPPSを構えた。


 ワルサーPPS、ワルサーPPKの後継機種であるサブコンパクト自動拳銃である。装弾数は9発であり、その内の一発が逃げ惑う研究員の背後に撃たれた。


 研究員は乾いた悲鳴をあげながら、前方に倒れこみ、ぴくりとも動かなくなった。


 青年は死体を一瞥し、その後研究所内を見渡した。当初、気付きはしなかったがこの場所は異質で奇怪であった。そもそも、ここまでの厳重態勢を施されている研究所であるのではあるが、それ以上にこの場所は異様な雰囲気で覆われている。


 この研究所にはある装置がたくさん並んでいた。並んでいるだけならまだしも、その装置はガラスのシリンダーケースが主体で。両端にはいくつものコードが取り付けられている。そしてそのケース内では一つのベッドのようなものが安置されており、その白いベッドの上には人型に模られた黒い炭のようなものが撒かれている。


 初見では皆目見当のつかないものであるが、青年は手馴れた動作で電子機器やコンピューターを操作し、ケースの一つを開けた。


 プシューという音と共に開け放たれたガラスケースからはアルコールなどの匂いと共にとても表現できないような汚臭が漂った。青年は首にかけられていたマスクを装着しながら黒いススのような物体を手に取り、腰のポシェットから小さなシリンダーケースを取り出して入れた。


 良く見ると、ガラスケースの装置の側面には容器が取り付けられており、その色は青く光り透明感を保っていた。青年はその容器の液体とも言える物質をも腰から取り出した別のシリンダーケースに入れ、仕舞う。


 青年はやるべきことを終えたのか、通信を開き言葉を発する。


調整完了(レギュレイトコンプリート)

調整完了確認(レギュレイトコンプリートコンファーム)。お疲れ様でした」


「これより帰還する」

「これより帰還、承認。脱出ルートを検出、転送。5分以内に現建物から脱出し乗り物を調達しポートまで戻ってください」


「了解。通信を終了する」

「了解」


 青年は口元に上げた小型マイクを下ろし、元来た通路をワルサーP22を構えながら暗闇の中、疾走した。来るとき同様、青年は音無くして走り出し、はだかる武装兵士を撃ち抜いていく。警報は未だ鳴り響き、赤い蛍光ランプが点滅する中を、青年は躊躇することなくして見事建物から脱出する。


 その後、青年は闇を疾走し手頃な車を調達(奪取)し、ネオンがカイロの町を照らし出す中を軽快なエンジン音を鳴らしながら指定されたポートへと向かって行った。













―エジプト、カイロ。


 それは地球最古とも言われるエジプト文明の栄えた国。国の八割が砂漠であるこの国は、世界一長いとされるナイル川の祝福を受けている。

 

 しかし第三次世界大戦の折、窮地のエネルギー危機を迎えたエジプトは政権を握っている上層部の独断により密かにTOHECトヘックの研究が続けられていた。


 そして今夜、エジプト主要のトヘック研究室が謎の人物により壊滅・消去された。

その人物の正体は誰も知る由もなかった。



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