〜愛結美side October.2〜
真夏のプールや誰も踏んでいない雪道より輝く君に見惚れていると、あの日のように彼が微笑みながらこちらを向いた。
彼ー矢野凌也くんの存在が私の中で特別になった日を
鮮明に覚えている。あれはまだ暑さがこれでもかと残っていた9月。私は遅くまで文化祭準備で教室に残っていた。
「いやーここまで用意したら大丈夫だよね。みんな帰るみたいだし私達も帰ろっか。」
私の唯一の親友、詩月は私の耳元でぽそっと言った。
「そうだね。疲れた。」
元々人が多い所が苦手な私はクラスのみんなでいても疲れる事が多々ある。クラスメイトとはいえ、慣れない人と1日作業を共にするのは精神がすり減ることだった。
リュックに荷物をしまっていると、お気に入りのピンクのハンカチが無いことに気がついた。全身の血が一気に引いていくのが分かる。どうしよう。あれは高校が別々になってしまった大事な幼なじみからもらった物なのだ。すぐに詩月に言って一緒に探した。ダンボールの下、ロッカーの中、机の上、どこを真剣に探しても見つからない。
色白な肌を真っ青にしながら探し続けた。ないないない。必死に探している私達のそばで何も知らない男子たちがゲームの勝敗で叫んでいる。耳に刺さるような声がズキズキと痛い。目の奥からじんわりと潤ってくる。今にも涙がこぼれ落ちそうだ。
焦って中身をぐしゃぐしゃにしてしまったリュックの前で呆然と立ち尽くしていると、
「何かあった?」
低いのに何故か綿あめ見たいな声の人が話しかけてくれた。




