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 夜中の3時過ぎに父と兄が帰ってきた。父は帰るなりフィルミナを抱きしめ、「つらい思いをさせて悪かった。」と言った。兄はすぐにアランを呼びにやり、やってきたアランから話を聞いている。

「くそっ、あいつ、俺の妹になんてことをするんだ。フィルミナ、本当にすまなかった。俺がいたらそんなことにはさせなかったのに。父上、これはもう『その時』が来たということではないでしょうか。」

「そうだな。ちょうどアランもいるから聞いてもらおう。」


 アランは

「それでしたら、私の父も同席してよろしいでしょうか。うちもさきほどからいろいろ話し合っておりまして、できればお話に加えていただけたらと。」

「そうか。ではこんな時間にすまないが、ご参加いただけるか。」

食堂に軽食が運ばれ両家の面々が集った。


 ケラニー侯爵がまず口火を切った。

「実は、前々から考えていたことなのだが、私は侯爵位を返上して、平民になり、ケラニー商会の事業にしぼろうと思う。エイデンを『留学』させるということを口実に、王子の側近からは外れるようにし、エイデンが卒業してから爵位を返上するつもりだったのだが、まさかフィルミナがこんな目にあっているとは知らず、迂闊であった。フィルミナ、どうか、この馬鹿な父を許してくれ。」

「お父様、馬鹿な父だなんて、とんでもないことです。」

続いてマクファーレン公爵が

「アランからフィルミナ嬢のことを聞き、怒りが収まらずにいる。フィルミナは我が家にとっても可愛い娘のようなものだからな。かねてからジェームスとも話し合ってきたが、これはいよいよ我が家も公爵位を返上する時が来たということのようだ。アランは長らく遠国に『留学』してきた。『留学』と言っていたが、学生でいたわけではなく、我が家の事業の準備、またケラニー商会の準備も同様にしてきた。かなり良い見通しがたったので、アランには一旦戻らせ、こちらの事業の基盤をチャーリーと共に作り上げようと思っていた。まあ、多少早くはなるが、もう準備は整ったと思ってもよいだろう。ジェームス、よいか?」


 「ああ。だが、どうだろう。うちは破談に持っていくには爵位を返上ということで丸く収まるだろうが、お前のところはどういう理由にするのだ?」

「それでしたら、ひとつ良い手があるかと。」

チャーリーが少し黒い笑みを浮かべて言う。

「俺の婚約者のマリー嬢ですが、先日フィルミナがあのバカ王子に叩かれたといって、目に涙を浮かべて怒っていました。それで、俺がパトリックを殴れば、大きな騒ぎになり、爵位返上と進められるのではないでしょうか。」

「そうか、一発いくか。」男たちはちょっと嬉しそう。

「落ち度はあのバカにあることですから、それで怒れないでしょう。そこを爵位返上で丸く収めるということで、なんとかならないでしょうか。」

「うーむ、俺が殴りたいのだけどなあ。父上、どうせ爵位を返上するのですから、俺も一発。」とエイデンが言う。


 「フィルミナ、本当は俺がお前を守るはずだったのに、しばらく目を離した隙にこんなことになっていたなんて。本当にすまない。何度謝っても足りない。」エイデンはフィルミナに頭を下げた。

「お兄様、やめてください。お兄様は何も悪くありません。」

「ところで、マリー嬢が言っていたのだが、あのエリンという女、魔法か何かでバカ王子を籠絡しているのではないでしょうか。」

「魅了か?それは禁呪だし、かなりの魔力の持ち主でないとできないのだが。」エイデンが言った。

「魔石なら可能だな。または、魅了とおなじ作用をする媚薬のようなものがある。ラセールでそれを耳にした。」と、アランが言った。


 「これから学園に行って探ってきます。俺はまだ側仕えだし、いろいろ探れると思います。」エイデンが言う。

「俺も探ってみる。」チャーリーも言う。

「それじゃああなたたちは早く部屋に戻って少しでもお休みなさい。」リサとマリアンヌは息子たちを追い出した。

「それでは今夜はこれで解散ですな。明日は執務を休んで、アランと事業について話をしよう。ジェームスも加わるか?」とマクファーレン卿が言うと、

「有り難い。ぜひ加えてくれ。」とケラニー卿が言った。

マリアンヌはリサに

「あなたはなるべくおやすみなさいね。心配なのはわかりますけど、今あなたが体を壊したらフィルミナちゃんが悲しい思いをしますからね。」

そう言ってハグをして別れた。


お読みいただきありがとうございます。

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