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お立ち寄りいただきありがとうございます。
「アラン兄様、あしたは何時頃に着くの?」
「そうだなあ、ここの庭はきれいだし、この街もなかなかフィルミナが楽しめそうな街だから、ここをゆっくり出て、昼食をここでとって、それからのんびり行って夕食前に着く、という感じだな。夕食は会社のある街のレストランにしよう。良い街だぞ。」
「楽しそう。あしたもお買い物しちゃお。これから住む家にはお庭はあるの?」
「あるよ。掃除してくれるじいさんが庭もきれいにしてくれてる。」
「お花植えてもいい?」
「もちろんだ。きれいにしてくれ。」
フィルミナがアランの顔を見てにこにこしている。
「なんだ?」
「アラン兄様ってやっぱりとっても優しいなあと思って。」
「なんでだよ?」
「だって、近いなら今夜ここに泊まらなくても夜遅くに着いたじゃない。でもゆっくりして楽しませてくれようとしたんでしょ。優しいなあ。アラン兄様、ありがとう。」
フィルミナはそういってアランの頬にキスをした。
・・・なっ、また拷問だ。
「ど、どうってことないさ。俺もサボりたかったってだけだ。」
フィルミナはにこにこと笑っている。
・・・これいじょうの拷問はやめてくれー。
翌日は、朝寝をした。
フィルミナも疲れていたのか、なかなか起きない。
それをよいことに、アランはフィルミナをずいぶんと長い間眺めていた。
抱きしめて寝ていられるのもきょうまでだな。
そう思うと、アランは寂しかった。
きょうはフィルミナに楽しんでもらおう。
フィルミナの笑顔が見たい。
フィルミナが目を開けた。
猫のようにうーんと伸びをする。
かわいい。
「アラン兄様、おはようございます。」
「おはよう。よく眠れたか?」
「はい、とっても。」
そう言ってフィルミナはアランの胸に顔をこすりつける。
「ははは、フィルミナは猫みたいだなあ。」
「猫だったら飼ってくれる?それでずうっとお膝の上に置いてくれる?」
「・・・ばーか。」
アランはそういって、フィルミナの鼻をちょんと突いた。
それからゆっくり朝食をとって、街に出てみた。
フィルミナは馭者たちへのお礼を買いたいと言った。
「何がいいかしら?」
一生懸命考えているフィルミナを見て、アランはとても心がほっこりした。
誰に対しても誠実で、優しいフィルミナをあんなに冷たくあしらったクソ王子が憎い。
知らぬうちに怖い顔をしていたようで、フィルミナが
「ごめんなさい、ぐずぐずして、急ぐわね。」と謝る。
「違う違う、怒ってるんじゃないんだ。フィルミナはこんなに人のことを考えて優しいのに、そんなフィルミナを冷たくあしらった奴が憎いと思っていただけだ。」
「アラン兄様・・・ありがとう。私ね、もう忘れるの。だって今はアラン兄様とずっと一緒にいられるようになったんだもの。だからアラン兄様も忘れてね。」
そう言ってにっこりしたフィルミナが健気でかわいくて、抱きしめたくなった。
「ねえ、これなんかどうかしら?」
かわいらしい箱に入った焼き菓子の詰め合わせ。
「いいんじゃないか?うまそうだ。」
「ほんと?じゃあこれ2個と大きな箱のを2個買おう。」
「馭者は2人だぞ。」
「いいのいいの。大きな箱の1個は今夜みんなで食べて、もう1個はあしたオフィスでみんなで食べるの。」
「ふははっ、フィルミナは食べること考えるのは上手いな。みんな喜ぶぞ。」
「やだ、それって私が食いしん坊だって言ってない?」
ははははっ、「言ってるかもな。」
それから園芸店に行った。
花の種と植木鉢を見ている。
アランもいろいろ見回していたが、花言葉の一覧があった。
ひまわり・・・私はあなただけを見つめる
・・・
アランは花屋に赤いバラとカスミソウの花束を作ってくれるよう頼み、出来上がったら見えないようにして馭者に渡してくれるよう頼んだ。
「何植えようかしら。」
「ハーブか?」
「いいえ、ハーブはお仕事用。今から買うのは私が楽しむため。まずちいさな植木鉢に植えたいの。」
「遠慮しなくても庭に植えていいんだぞ。」
「うん、ありがとう。これはね、部屋の窓辺に置きたいの。」
「そうか、部屋に植物があるのはいいな。」
「でしょ?ピンクのお花と青いのと、白いのがいいかな。種から育てるとね、ペットって感じで情がわくのよ。」
「なるほど。楽しい趣味だな。」
「ねえ、アラン兄様の趣味ってなあに?」
「俺か?さあ、なんだろうなあ。馬かな。馬に乗って走るのは気持ちがいい。」
「いいわね、私も好き。またどこかに行きたいな。」
「ああ、行こう。いい眺めのところがあるぞ。」
「ふふ、約束ね。」
遅めの昼食を取り、のんびりと進み、ラセールの家に着いた。
「ありがとうございました。おかげさまで楽しく過ごせました。これ、あとで召し上がってね。」
フィルミナがそう言って馭者たちにお菓子の可愛い箱を渡すと、馭者たちは恐縮して
「お、俺達に?いいんですかい?」と嬉しそうだった。
荷物をおろして部屋に入る。
デクランが待っていて、挨拶を済ませる。
「はじめまして。フィルミナと申します。どうぞよろしくおねがいします。」
「デクランと申します。私は、実は『はじめまして』ではありません。王都にいた頃、フィルミナ様を何度かお見かけしておりました。あの頃はまだかわいらしいお姫様でしたが、今はすっかり美しくなられましたね。」
「まあ、そうですの?ありがとうございます。」
「それにお噂はかねがね」
「・・・っ、デクランっ。」
「コホン、えーと、夕食はいかがなさいますか?」
「きょうは外で夕食にする。」
「そうですか、では、なにかございましたら、なんなりと。」
「他の皆はもう戻ってるか?」
「はい。もうすぐ夕食、というところですので。」
「ではちょっと紹介しよう。」
デクランは他の3人、シムス、ネイサン、ボブを紹介した。
「フィルミナと申します。どうぞよろしくお願いします。」
「おおっ、シムスと申します。フィルミナ様は王都で何度かお目にかかっておりました。お美しくなられました。どうりで」
アランがごほんと咳払いをした。
「ネイサンと申します。よろしくおねがいします。なるほど、こんなに美しい方ならアラン様が夢中になるのも無理ないですなあ。」
ゴホッゴホッ アランの咳がとまらない。
「ボブです。よろしくお願いします。私がこの中で一番若いので、一番こき使われてます。フィルミナ様のことはアラン様の想い人ということで」
ゴホッゴホッ
「アラン兄様、大丈夫?」
「あ、ああ、なんだかほこりっぽいな。フィルミナ、君の部屋に案内しよう。」
残された4人の生暖かい視線が痛いアランであった。
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