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お立ち寄りいただきありがとうございます。


 リサとマリアンヌはきょうも楽しくフィルミナを囲んで女子会である。

「きょうはたっくさんドレスを買うわよ。」母は気合が入っている。

「お母様、そんなにもったいないです。今までのもたくさんあるんですから。」

「何言ってるの。あのバカのために作ったものは全部処分でして、一から買い直すのよ。」

「そんなもったいないこと!」

「大丈夫、捨てません。少し直して寄付するから役に立つわよ。経済の循環にも貢献するわ。」

「良いですわね。私も一緒にお見立てしますわ。」マリアンヌもワクワク顔。

3人はまずは行きつけの店に入った。


 「リサ様、アランに聞きましたけど、ラセールではパーティードレスは殆ど要らないようです。お出かけ用ならセミフォーマル程度、普通にしていたら、今日のみたいな服が良さそうよ。」

「そうですわね。もうお貴族様ではなくなるのですもの、そういう服をたくさん買いましょう。」

リサは、それはもう、かたっぱしから普段着とセミフォーマルを買いまくった。

もちろんリサとマリアンヌも便乗して。

「私達もこれからラセーヌに行くことも多くなりますものね。楽しみだわ。」

「支店は港町にあるから、おいしい魚介料理もあるそうですわよ。」

「まあ、楽しみね。」

そんな2人を見てフィルミナはくすりと笑う。

「お母様、おばさま、いらしてくださいね。私、美味しいお店とか、かわいいもののお店とか調べておきますから。」

「もちろんよ、ラセールで女子会。楽しみだわ。」


 今日のお昼は昔からの行きつけのカフェ。

「流行りのお店もいいけれど、行きつけのカフェも落ち着くわねえ。」

きょうのメニューはフィルミナはチキンのサンドイッチ、リサがローストビーフのサンドイッチ、マリアンヌは小エビのサンドイッチだ。個室だし、3人で交換して全種類を食べてどれがいいか比べてみる。

「なんだか学生時代に戻ったようね。」とリサが言うと、

マリアンヌは「そうそう、学校サボって来たりね。」と言い、「見つからないかハラハラして、そのスリルがいいのよね。」

「ふふふ、お母様たち、悪いことしてたんですね。」フィルミナが笑うと、

「あら、そういういたずらが学生の思い出になるのよ。」リサはそう言ってハッとした。フィルミナはそういう経験がないのだろう。学校が終わるとすぐに王宮に行って教育を受けたり、王妃と会ったりしていたのだから。

マリアンヌも同じことを考えたようで、ふたりで顔を見合わせ、切ないような表情になった。マリアンヌが

「フィルミナはこれからたくさん『悪いこと』ができるわよ。アランを巻き込んでお仕事サボって遊びに行ったりしなさいね。」といたずらっぽく言った。


 「そうよそうよ、朴念仁のアランもそういう悪いことしなきゃね。」マリアンヌが言う。

「おばさまったら、朴念仁だなんて。」

「あら、そうよ、あの子、昔から妙に真面目でね、つまらないのよ、困ったもんだわ、ジョンとそっくり。」

「そうね、ジェームスが学校サボって、それの尻拭いをいつもジョン様がなさってたわね。」

「ジョンが、『儂がジェームスを良い成績で卒業させてやったのだ』って自慢してるわよ。」

「ジェームスは今はもうお腹出ちゃって動きも悪くなったけど、先生に追いかけられた時なんて、それはもう逃げ足速かったわよ。」

「まあ、おもしろい、そうでしたの。なんだかお父様たちのお若い頃を想像するのって楽しいわ。」

「きのうもうちで、アランはどうしてあんなに朴念仁なのだという話になったんですけど、ジョンが『それは儂に似たからだ』って自慢気に言ってたわ。自慢気に言うことでもないでしょうに。もうちょっと気が利けばいいのにって、母親にしてみたらいらいらするわ。」

「ふふふ、でもおばさまはそんなおじさまが好きだったのでしょう?」

「そうなのよねえ。気の利いたことのひとつも言えなかった人だけど、とっても純情で一途でね。良い人だわ。」

「ごちそうさま。本当に、ジョン様は昔からマリアンヌ様一筋でしたわね。」

「おじさま、素敵ですね。」

「でしょ?アランも父親にそっくりなのよ。」マリアンヌはそう言って、フィルミナの顔を伺った。

フィルミナは気づかないふりをして紅茶を飲んだ。


 その後3人はドレスにアクセサリーに靴にバッグに、と、何軒まわったことだろう。山のような箱とともに帰宅した。

「お疲れさまでした。たくさん歩いて足が棒のようになっちゃったわ。』リサが言うと、

「楽しかったわ。喋りすぎて笑いすぎて顎が痛いわ。」とマリアンヌも笑う。

「おばさま、お母様、ありがとうございました。とっても楽しかったです。今夜はごゆっくりお休みください。」フィルミナはそう言うと、ふたりにハグをした。


 デレクが出てきて

「フィルミナ様、アラン様より、もし時間があったらラセールのことを話したいとのことですが。」

と言うので、

「はい、わかりました。今から伺ってもいいかしら?」

「あら、そうなの?それじゃ私、これからフィルミナちゃんを攫って行きますわ。」

マリアンヌがそう言って、フィルミナと腕を組んで自宅に戻っていった。

ふたりの姿を見送ったリサは

「いつかこうやって義母様と楽しくおつきあいできますように。」と願っていた。


お読みいただきありがとうございます。

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