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お立ち寄りいただきありがとうございます。


「ケラニー家が爵位を返上するにあたって、うちは当面はそのままにしておく。」

チャーリーが少し息巻いて言った。

「父上、ケラニー家がこれだけあのクソ王子にバカにされたのに、うちはまだあのクソ王家に従うのですか?」

「少し待て、チャーリー。何もうちはあのクソ王家に忠誠を誓い続けると言っているわけではない。使えるものは大いに使おうというだけだ。しばらく、ケラニー商会とうちの業務が軌道に乗るまで、貴族の立場を利用させてもらうということだ。」

「なるほど、それなら話はわかりました。大いに利用してやりましょう。」


「そこでだ、アランはケラニー家が爵位を返上したら、またラセールの支店に戻る。ラセールでの業務はこちらや領地よりもむしろ忙しいので、慣れたアランに任せたい。」

「はい、承知しました。」


マリーがこっそりとチャーリーに言う。

「ねえ、でも、そうしたらフィルミナはアラン様と会えないわ。かわいそうじゃない?」


 ジョンがマリーとチャーリーをちらと見て続けた。

「そして、フィルミナ、君もラセールの支店に行ってはもらえないだろうか?」

「え?私がですか?」

「ラセールの支店では薬草や薬品も取り扱っているのだ。君の知識が大いに役立つ。こちらでクソ王子たちから妙にちょっかいを出されるのも忌々しいしな、ラセールに行けば、アランが君のことを守るだろう。」

「それは・・・あの・・・」

「大丈夫だ、俺が守るから、何も心配せずに薬草のことなどで手伝ってほしい。」

アランがにっこり笑ってフィルミナに言った。

「まあ、素敵。そうこなくっちゃね。」マリーは大喜びだ。

「一緒に来てくれるか?」アランがフィルミナの顔を覗き込むと、フィルミナはこっくりと頷いた。

 

 夢のようだわ。

フィルミナはベッドで犬のぬいぐるみを抱きしめてそうひとりごちた。

アラン兄様と一緒にラセール国に行けるなんて。

突然フィルミナはハッとした。

アラン兄様にどなたか決まった人がいるかもしれない・・・

アランはもう21だ。

誰か決まった人がいても、もっというと、結婚していてもおかしくない年齢だ。

しかもあれだけ良い人なら、好きになる女性がたくさんいても不思議ではない。

どうしよう、そうしたら私・・・そう考えだしたら涙が出てきた。


 エイデンがフィルミナの部屋に来た。

「フィルミナ、入っていいか?」

フィルミナは急いで涙を拭って微笑みを作ってドアを開けた。

「どうした?なにか辛いことでもあるのか?パーティーが心配か?」

泣いてたのが秒でばれた。

「いいえ、大丈夫です。」

「なんだよ、大丈夫じゃないだろ。俺に言えないことか?母上ならいいか?」

「そんな、やめて、大げさなことじゃないわ。」

「じゃあなんだよ、言ってみろよ。」

「なんでもないったら。」

「なんでもなくて泣くかよ。言え。」

「・・・・・・その・・・アラン兄様と一緒にラセール国に行った時に・・・」

「なんだ、行きたくないのか?アランはいやか?」

「そうじゃなくて、その・・・」

「なんだよ、はっきり言えよ。」

「その・・・アラン兄様と一緒にラセール国に行って、そこにアラン兄様の婚約者とかがいらしたら、私、肩身が狭いなと思って・・・」

「へ?」

エイデンは間抜けな顔でそう言ったかと思うと大声で笑いだした。

「ぶっはははは、アランに、婚約者か。あははははは、腹痛え。」

「何笑ってるのよ。」

「だってお前、はははは、それで泣いてたのか?はははは、アランがか。はははは」

「悪かったわね。そんなに笑うことないでしょ。」

「あはははは、そうかそうか、お前、そうかそうか。あはははは。」

「何よお兄様。アラン兄様はあんなに優しくて、素敵な方だもの、好きになる女の人なんかいっぱいいるわよ。」

「あーおかしい。いやあ、久しぶりにこんなに笑った。おい、まあそんなにふくれるなって。」

「だって・・・」

「心配すんなって。ま、明日にでもアランに直接訊いてみろ。」

「まさかそんなこと」

「あははは、お前、かわいいな。」エイデンはそう言ってフィルミナの頭をがしがしと撫でた。


 「ところでな、フィルミナ、父上と母上がこれからの学園だが、パーティーまでの間は休んでそのあと退学したらどうかと言っててな。」

「退学、ですか。」

「ああ、ちょっともう一度下まで来てくれるか?」


 エイデンに伴われてフィルミナがサロンに戻るとマリーとチャーリーはいなかったが、両夫妻とアランはまだ話していた。

フィルミナはちょっと気まずいなと思ったが、エイデンの手前何もなかったふりをした。

エイデンの隣に座ると、ジェームスが、「エイデンから学園の話しを訊いたか?」と言われたので、フィルミナは「はい」と答えた。

「お前の気持ちはどうだ?」

「できればおっしゃるとおりにさせていただきたいです。マリー様たちにお会いできないのはちょっと寂しいですけど、放課後にでも会っていただきたいなと思います。」

「そうかそうか。それではそのようにしよう。」


 続けてリサが

「ドレス、買いに行きましょう。」

と言ったのだが、

「あの、お母様、そのパーティーは婚約解消を言い渡されるような日ですから、地味な古い服で良いかと思います。パトリック様のために着飾りたくありません。」と言った。

「それもそうねえ。まあ、あなたは古いドレス着てもかわいらしいからいいけどね。わかったわ、それじゃあ明日はラセール国に持っていく服を買いに行きましょう。」

「あら、そういうことなら、私もご一緒させていただきたいわ。」マリアンヌが目を輝かせている。

「ふふふ、また女子会ね。」

「今度はどこのカフェにしましょうね。」

母親がふたり、楽しそうだ。


お読みいただきありがとうございます。

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