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学園は小高い丘の上にある。生徒たちは主に貴族、それに事業で成功し大きな財産を築き上げた平民が少し、という構成だ。王族もいて、現在の王子たちもこの学園に通っている。
ケラニー侯爵家の娘、フィルミナもこの学園の生徒である。そしてフィルミナの婚約者、この国の第2王子パトリックもこの学園にいる。
フィルミナは8歳の時に第2王子パトリックの婚約者となった。婚約は王命であったため、幼いフィルミナは元より、親のケラニー侯爵にすら断るという選択肢はなかった。フィルミナは聞き分けの良い子供だったので、口ごたえせず従い、以後王子の婚約者としての厳しい教育も素直に受け、優秀な成績をあげていた。国王と王妃は美しく、心優しく、賢いフィルミナを今から実の娘のように可愛がっている。
フィルミナには兄と弟がいる。兄のエイデンはパトリック王子と同い年で、幼馴染である。弟のショーンはまだ幼くて、フィルミナもエイデンもとびきりかわいがっている。エイデンはかわいがっているのはショーンだけでなく、フィルミナのことも些か過保護なほどかわいがっている。今年でエイデンは卒業で、卒業後は他国の大学に留学することが決まっている。本当は幼馴染のパトリック王子の側仕えとして国内にいるべきところなのだが、エイデンの強い希望により、ケラニー侯爵が国王と交渉し、フィルミナを王子の婚約者としてさしだしているのだからということで願いが聞き届けられた。エイデンは今は留学の準備のためということで領地にいる。
フィルミナはとても心優しい少女である。ケラニー侯爵の教育方針が、誠実で謙虚で思いやりのある人間になることと、将来貴族でなくなっても生きていけるようになんでもひとりでできるようにすることなので、ケラニー家の子どもたちは皆そのように育っている。フィルミナの美貌は年と共に増し、優しい性格は、誰もが魅せられた。ケラニー家の使用人たちは皆フィルミナが大好きでフィルミナも使用人たちと一緒に掃除をしたり、料理をしたり、庭の植物を育てたりしている。
そんなフィルミナは幸せかと言うと、実はそうではない。毎朝学校に行く時間になると、必ず腹痛がする。それを隠して登校するのだが、登校すれば早速いやなことが待っているのだ。
フィルミナはにこやかに友人とも挨拶し、おしゃべりしているが、ごく親しい友人は知っている。原因は同じクラスのエリンという生徒。エリンは最近急に富を増やして爵位を闇で買った男爵家の令嬢だ。パトリック王子にすり寄って、どういう手段を用いたのかはわからないが、パトリックはすっかりエリンに夢中になった。今はパトリックとエリンはほとんど常に一緒にいて、パトリックはフィルミナを嫌うようになっていた。エリンがフィルミナに嫌がらせを受けたとパトリックに言うと、パトリックはフィルミナを責め、ひどい時はフィルミナに手を上げたこともある。フィルミナの友人たちは憤慨し、教師に話をすると息巻いていたが、フィルミナが止めたのでそれは実現していない。
家に帰るとフィルミナはほっとする。学園にいるときは、昼食も食べられないくらいに緊張し、辛さに耐えている。学校を辞められればどんなにいいか、婚約を解消してもらえればどんなにいいか、フィルミナは一度だけパトリックに婚約を解消したいのではないかと聞いてみたことがある。その時は、お前はそれがたやすくできないことがわかっているからそう言っているのだな、陰険な女だと頬を叩かれ、激しく責められてしまった。それ以上言えなくなってしまって、物陰でひとり涙を拭っていたら、友人のマリーが気づき、慰め、代わりに怒ってくれていた。友人は有り難いものだと、フィルミナはあらためて感謝した。しかし、状況はかわらない。むしろ悪化していく
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