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間章 参

 横内進一の弟が家族に隠れて女装をするためにアパートの一室まで借りているとは思わなかった。


 僕個人としては、人の趣味嗜好は気にするものではないのだが、相手が横内進一の親族であるならば、知っておいて利用しない手はない。


 今まで自分の気持ちを抑圧してきたであろう横内歳三には残念な話だが、ここまできて、罪人の家族がかわいそうだからというちっぽけな理由で止まる気は毛頭ない。


「なるほど、知られてはいけない秘密を知られたと」

「ああ、そうなんだ」


 横内進一を観察していれば、彼が親から受け継いだ会社の帳簿を見なくてもある程度は分かる。給料に見合ってなさそうな高級車や高級時計。趣味の模型にも散々お金を使っている。お金が湯水のように湧き出るわけもなく、彼が給料以外の場所からお金を引き出しているのは一目瞭然だろう。


 バレた相手はおそらく次男の横内英二。彼は親から進一が受け継いだ会社の副社長をしている。真面目な性格で家庭も持っている横内英二は兄であり社長の横領などを見逃すことはできないだろう。


「だから、あんたに知恵を貸してほしいんだ。どうすればいいと思う?」


「……あなたが置かれている状況を、詳細に説明してもらえば、誰にもバレずにその相手にずっと黙ってもらう方法を教えられると思いますよ。もちろん、知恵をどう使うかはあなた次第です」


 横内進一は強欲だ。


 彼は、昔の罪を忘れ、今なお新しい罪を古い罪で塗り直して、その上に立っているのだろう。その強欲と鈍感さは、やはり償わなくてはいけない。


 彼が昔と変わらず、最低な人間で本当によかった。


 罪深い人間だからこそ、僕も心が痛むことがない。仮に心が痛んだとしても、僕が止まることはない。


 償いを忘れた罪は膨れ上がり、こうして報いを受けることになったのだ。牢屋に入った後で、自分がどうしてこうなったのか気づくといい。それが唯一、罪人にできることなのだ。


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