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一話 男子と女子の喧嘩?

 異世界召喚という物を知っているだろうか? よく漫画やゲームの世界で導入に用いられるあれだ。異世界に魔王がいてそれを倒す為の勇者が召喚されるのだ。


 そんな物が現実にはないと思っていたのに俺――有本剛毅(ありもとごうき)――は三年五組のクラスメートと共に異世界で魔王と戦う為に勇者の一人として呼び出された。


 戦いは困難を極めたが多大な犠牲を払いながらも十年の時をかけて遂に魔王を倒し、無事に元の世界に戻る事が出来たのだ。


 今日は戻ってきてから初登校だ。女神様にお願いした甲斐もあり死んでしまったクラスメートも生き返ると言っていたから再会を楽しみにしていた。


 諸事情により皆の記憶は消した為、異世界の出来事を覚えているのは俺だけだが贅沢は言っていられない。


 なんにしても男女分け隔てなくとても仲が良い大好きなクラスだったので今日から皆でまたわちゃわちゃしようではないか。


 そして俺は今教室の扉の前に立っている。この扉の先に俺のクラスメートがあの時のまま仲良くしている思うと頬が緩んでしまい、勢いに任せて扉に手を掛けた。


「お前らどうしたんだよ!? いきなりもう二度と話かけるなっておかしいだろうが!」

「おかしくないわよ! キモい男子達と卒業まで一緒だなんて死んでもごめんだから!」


「おはよ……う……?」


 目の前の異様な光景に思わず言葉を失ってしまう。


 まず男子と女子の集団がそれぞれの代表者を先頭にお互い対立してる。男子と女子で口論をしているようだがこんな事は前は今までなかったはずだ。


 そしてその先頭の男女もまた激しく言い合っているようだけど一体何があったんだ?


「だから、もう別れるって言ってんの! しつっこいのよ!」

「納得出来るわけないだろ! 訳を言ってくれ!」

「あんたが大嫌いだから。死ぬほど嫌い」

「なっ……!」


 どうやら先頭の女子の方が同じく先頭の男子へ別れ話を切り出し、それを男子が拒んでいるらしい。十年ぶりの登校早々なんて事だ。


 先頭に立って言い合っている男子は俺の親友の神崎茂(かんざきしげる)だ。我が三年五組の男子の中で特に目立つ存在で常にクラスの中心にいる。


 クラスのみならず校内でも有数のイケメンとして知られていて人当たりもよいので女子人気が非常に高い。


 対して先頭で神崎と対立しているのは新藤莉愛(しんどうりあ)という女子生徒だ。


 容姿端麗でウェーブのかかったミディアムボブの明るい金髪と抜群のスタイルは圧倒的な存在感をはなっており、今日までに道行く人を振り向かせてきたに違いない。


 そしてそれらを際立たせる瑞々しい肌をほんのりとメイクで整え制服を若干着崩しているからまさにギャルという言葉が相応しい美少女だ。


 性格も気は強い所もあるが面倒見はいいので我がクラス女子達のリーダー的存在として皆を纏める事が多かった気がする。異世界に行く前の記憶が正しければの話だが。


 しかも彼女は元人気アイドルで現役時代はテレビで見ない日はなかったから知らない人がいないくらい滅茶苦茶有名だったのだ。


 当然校内でも人気が高く学校の二大美少女の一人だと言われていて男子に告白される姿もかつて何度か見た記憶がある。


 しかし新藤さんを好きな人にとっては誠に残念な事だが、彼女はそこの神崎の幼馴染であり彼女なのだ。


 異世界に召喚される一週間くらい前に神崎から告白してめでたく付き合う事になったはず。スクールカーストトップで美男美女の幼馴染カップルとか羨ましい限りだ。


 ……そういえばこの二人は凄い仲が良かったっけ。


 もう全てが懐かしくて微笑ましい。本来なら仲良しだった二人をずっと見ていたかったのだが……。


 なんにしてもこんなにも悪意と敵意に満ちた教室は生まれてこの方初めてだ。話を聞いてみないと分からないな。


 ちょうど俺は男集団の最後列で困惑した様子の眼鏡を掛けた親友――綾小路武(あやのこうじたけし)――を見つけたので声を掛けた。


「おはよう、久しぶり綾小路。これ一体どうしたんだ?」

「有本か……。どうもこうもないよ。……久しぶりって何だ? 金曜日に会ったばかりだよな?」


 綾小路もかなり困惑しており、何が起こっているのか分からないと言った風だ。


 彼と話をするのも久方ぶりとなる。異世界では不幸にも死んでしまったからまたこうして話ができて嬉しい。


 しかし間違えて久しぶりとか言ってしまった。次は絶対間違えないように気を付けないと。


「なんかさ、新藤さんが神崎に別れようって言いだしたんだ。それが口論になってヒートアップしちゃったんだ」

「浮気でもしたのか? 新藤さん滅茶苦茶モテるもんな」

「分かんないけどきっとそうなんじゃないか? 神崎達がそれを疑って問い詰めているんだけど、新藤さん達もかんかんになっちゃって男女で対立が始まって……」


 故にこの対立か。なるほどな。記憶の糸を手繰り寄せるが二人とも本当に仲が良かったはずだ。


 アイドルを辞めた理由が一度しかない学生生活を大切にしたいって話だったけど、俺から見れば神崎と過ごしたいというのが一目で分かったので微笑ましく思っていた。


 校内の理想の男女といえばまず初めに彼らが挙げられていたし、俺も二人の仲睦まじい関係に憧れた時期もある。


 だからこんな事が起きているとなると外野としては困惑しかない。


「あなた――剛毅、おっはー!」

「「「!?」」」


 考え事をしていたのに女子の集団から一人の女の子が満面の笑みで飛び出してきて、勢いよく俺の腕に抱き着いてきたので中断せざるを得なくなった。痛いなり。


 俺に突撃してきた女子生徒の姿に女子達は皆男子との言い争いを止めて、一斉にこちらを凝視しだす。いきなり黙ってしまったがどうしたんだろう?


「絵里奈、おはよう。ちょっと色々当たってるし力が強すぎて腕が痛いよ、どうしたんだ!」

「何々ー? 私のおっぱいに興奮しちゃった? 剛毅はスケベな子だねえ!」

「やかましい! ふざけた事を言う絵里奈のほっぺたなんかこうしてやる!」

「あーん、ほっぺぐにぐにー!」


 俺は揶揄ってきた女子生徒の頬をこれでもかというくらいに弄繰り回す。


 この色気の欠片もなさそうな事を笑いながらのたまってきた彼女の名前は間宮絵里奈(まみやえりな)


 肩に届かないショートカットの黒髪で身長も平均より少し高めな為、一見するとボーイッシュな印象を抱かせる。しかしれっきとした女の子であり俺の幼馴染で片思い相手だ。


 少し子供っぽい言動とボーイッシュな見た目が相まって男女と評する見る目のない素人さん方もいらっしゃるが、容姿はとても整っているから美少女である事は間違いない。


 多分ガチでおめかししたら男の注目を集める事は間違いなし。よく一緒にいる新藤さんとかいう規格外な比較対象がよくないだけ。


 しかもおっぱいだって実はめちゃくちゃおっきくて三年五組の女子の中だと一番大きいのだ。着やせするからぱっと見だと分からないけども。


 まあそういう訳で俺の中では二十年連続で美少女ランキング不動のナンバーワンといえるのだ。


 むしろずっと女の子してる新藤さんよりも時たま女性らしさを見せる絵里奈の方が絶対爆発力があると俺は思うけどなあ。リミッターを外せば絵里奈が最強に決まってる。


「旦那――有本君、おはよう。あのさ、今日あなたの為に作ってきたお弁当を食べて欲しいんだ。絵里奈にも満点を貰った自信作なんだけど……」

「えっ? 俺?」


 

 絵里奈の事を考えていたらいつの間にか新藤さんもこちらに近づいてきていて話かけられた。


 先ほど神崎と対峙していた時とはうってかわって少し恥ずかし気に頬を染めている。とても嬉しそうに微笑んでいる。


 しかしお弁当……? 神崎ではなく俺に? ……何で?


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― 新着の感想 ―
[一言] まだ2話までしか読んでりませんが、とても面白いと感じました。これからも頑張ってください、応援しています!
[一言] この主人公嫌い
[良い点] 主人公は異世界の記憶覚えてるのに、身に覚えないんか?異世界でも何にも話してなかったんか
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