第1話 くっ殺先輩
以前からそこそこ人気の生主だった俺は
業界最大手のVTuber事務所にスカウトされた。
ぶっちゃけここまでは良い。
だが問題はママである。
はっきり言って中の人間の性能より、ガワの方がこの世界では重要だ。
とは言え目の前に置かれた数枚のガワの内
どのイラストを選べば人気が出るかまったく俺にはわからない。
俺が女性VTuberなら人気の出そうなガワは一発でわかるが
男性VTuberはそもそもデータが少ないし、俺は男のイラストに興味がないのだ。
結果俺は目隠しで適当に数枚のガワから1枚を選んだ。
よくわからんがイケメンのイラストが俺に微笑んでいた。
ママは美少年スキーという大御所BL作家らしい。
俺はホス吉というよくわからんホスト系VTuberとしてデビューした。
デビュー配信から数日で俺のチャンネル登録者数は5万人を超えていた。
女性VTuberならあり得る話ではあるが、男性VTuberの俺の場合ママが大当たりだったと言わざるを得ない。
まあ運も実力の内とは言うが、先輩女性VTuberと、とんとん拍子でオフコラボが決まったのは話が出来過ぎている。
ただ俺はオフコラボに対してそんなにワクワクはしていなかった。
そもそも女性VTuberの魂に興味がある人間はそんなにいない。
中の人が30代子持ちだとか、とんでもない化け物だったりするパターンも普通にあり得るからだ。
加えて今日オフコラボする予定のくっ殺先輩は前世無しの女性VTuberなので事前に予習のしようがない。
くっ殺先輩は別に女騎士の女性VTuberではないが、くっ殺感が溢れるお嬢様キャラだ。
結構人気な先輩でチャンネル登録者数は17万人もいる。
最大手の事務所だけあって成績は事務所内でまだ10位以内には入っていないが
くっ殺先輩の人気なら10位以内に入るのは時間の問題だろう。
そんなことを考えてるうちにカランカランと音を立て
待ち合わせの喫茶店にくっ殺先輩が現れた。
何で初見でくっ殺先輩の魂がわかったかって?くっっ殺せ!とブツブツつぶやいていたからだ。
思ったよりだいぶヤベェのが来たなと途方に暮れる俺にくっ殺先輩は言った。
「くっ殺せ!」
先輩身バレするんで普通にしゃべってください。
そんなこんなで俺とくっ殺先輩はオフコラボするスタジオまで移動していた。
今回俺がオフコラボの相手に抜擢されたのは
昔のオフゲーをやる企画のついでにプレイする
降下してバトロワる系のゲームが俺が上手いからくっ殺先輩の介護係というわけだ。
「言うてもこの手のゲームはやれば誰でもある程度はうまくなるもんだと思いますよ」
「くっ殺せ!」
昔のオフゲーをやる企画が終わって
ついでのバトロワる系ゲームでくっ殺先輩の介護にかかる
「ホス吉これ武器何取れば良いんですの?」
「俺はショットガン、サブマシンガン、アサルトライフル、スナイパーライフル、回復、ロケランorグレネードって感じに、なるだけ武器種が被らないようにはしてますね」
「スナイパーライフルとグレネードは腐りにくくなくて?」
「んーソロだと腐る時もありますけどチーム戦だとスナイパーライフルはさすがに誰かが持ってて欲しいっすねー。あとソロだとグレネード使う暇なくて腐ることは確かにあるんですけど、チーム戦だとグレネード投げるスキがありますし、グレネード連打は敵も割とテンパって死んでくれますし普通に強いです」
「オタク君特有の早口かしら?」
配信外ではくっ殺BOTな先輩だが、配信が始まれば普通に人気VTuberムーヴができる辺りは流石にチャンネル登録者数17万人をほこる先輩であった。
仕事が終わり解散になるが、くっ殺先輩と途中まで道が一緒なのでダラダラと後ろを歩いていた。
「ホス吉って思ったよりヤリ〇ンって感じじゃないよね」
「先輩! 配信外でもくっ殺以外の言葉しゃべれるんじゃないですかぁっ!?」
「だってさぁオフパコ目当てでしょ男性VTuberとか!」
なるほどそれでキワモノ感を演出してたのか
「いや、そういう人が居るのは事実ですけど、普通はそれだけじゃできないっすよ。特に男性VTuberは企業勢でも人気出るかわかんないですし」
「あはは! ウソウソちょっとからかっただけ!! ひまだしさー今からうちにおいでよ!」
「は? 先輩でもパコりますよ!」
「ダウト! 無理無理! 童貞でしょホス吉って?」
「ぐぬぬ……」
結局くっ殺先輩の挑発に乗り、俺はくっ殺先輩のマンションに来ていた。
「うわぁメスの匂いがするって思ったでしょ?」
「いやいやいやいや! 普通に汚部屋じゃないすかここ! するのはゴミの臭いですよ!!」
「ちょっと着替えてくるからのぞかないでね?」
「誰がのぞくかよ!」
数分もするとくっ殺先輩が着替えてきた
「あ、あ……」
くっ殺先輩が女騎士の格好をしてる。脳が混乱している何だこれ……
「ホス吉のような戦闘のプロを待っていました。さあ私と組みましょう?」
俺と先輩の足元にポータルのようなものが開き、そのまま異世界に落ちた。