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伝説の勇者(レベル:マイナス39)  作者: mysh
勇者の復活編
7/49

勇者(冒険者)、ダンジョンを調査する(後)

     ◇ スニード



 しばらく進むと、奇妙な光を発見し、とっさに立ち止まった。


「あの光はなんだ……?」


 すこし道をくだった先に、強烈な光を発している場所がある。自然の光ではない。ランプが光っているように見える。


「エーテルとうじゃないですか?」


「……エーテル灯?」


「エーテルを燃料ねんりょうにした最新式のランプです。連邦の方が設置せっちしたんですよ。あれで二、三ヶ月は平気で点灯てんとうし続けるんです」


「へぇー、そんな便利なものが発明されたのか」


 昔はそんなものなかった。だから、第一階層ではよくころんだっけ。冒険者が拠点きょてんとするベースキャンプも、ランプのいらない第三階層にあるのが普通だしな。


「でも、黒魔法でしか点灯できないみたいなので、私たちにはあつかえないんですよね」


「魔導士の地位ちいがだいぶ上がったみたいだな」


 そばまで行くと、かなりまぶしかった。かたちは普通のランプと変わらないが、炎のそれではなく、太陽のような光をはなっている。


 明るいな。これは便利だ。ただ、こんなところを照らしてどうするんだ。ちょっと行けば、元の明るさに戻っているし。ダンジョンにランプが置いてあること自体、初めて見た。


 不思議に思って辺りを見まわしていると、足もとで何かが光っているのに気づいた。



     ◇



 その場にしゃがんで、近くの穴をのぞきこむ。穴は円形で、大きさは腕が入るぐらい。これはワームがあけたものだろう。


 こういった穴自体はめずらしくないが、奥のほうに強い光がある。よく見ると、光は魔法陣の紋様もんようをえがいていた。


「ちょっとこれを見てくれ」


「はい……。これはワーム型ですね」


 ダンジョンの穴には二種類ある。モグラ型とワーム型だ。


 前者ぜんしゃはモグラ型モンスターが掘り進んだもので、一定いっていのかたちをしていないが、傾斜けいしゃがゆるやかで歩きやすい。今、俺たちがいる場所がそうだ。


 後者こうしゃはワーム型モンスターが掘ったもので、きれいな円形をしていて垂直すいちょく方向にのびている。


 基本的に冒険者は前者を進むが、後者はショートカットに使える。下層かそうに行くほど穴が大きくなるのは共通だ。


 だが、今はそんなことどうでもいい。


「そうじゃなくて、奥のほうを見てみろ」


「……何か光ってますね」


「どうしてこんなところにあるんだ?」


「なんなんですか、これ?」


「……お前、魔導士じゃないのか?」


「白魔法しか使えない未熟みじゅく者なので」


「いや、これは白魔法だから。結界けっかいだよ、結界」


「これって結界ですか。小さくてわかりませんでした。いちおう、知識はありますけど、使う機会がないので見なれていないんです」


 結界はエーテルの流れをせき止めるために用いる。例えば、ベースキャンプの出入口付近には、それが二重にじゅうに張られていることが多い。


 なぜそんなことをするかといえば、エーテルの存在しない地帯を作りだすことで、モンスターが近づかないようにすることができる。


「ただの結界ではなさそうだな」


 結界を張った意図いとはわかる。ここからエーテルが下層へ流れていかないようにしているんだ。


「もしかして、これが原因ですか?」


「原因の一つだろうが、これだけではないな。もっと奥へ行ってみよう」



     ◇



 さらに進む。すぐに元の明るさに戻った。


 エーテル灯とやらは、あの穴の周辺を照らすために設置されたのか。そうすると、結界を張ったのも『連邦の方』ということになる。


 だんだんと道が広くなってきた。入口付近(ふきん)にあれだけのスライムがいたんだ。そろそろ第二階層のモンスターが出てきてもおかしくないが、相変わらずスライムだらけだ。


「……奥に何かいるな」


 異変を感じ、歩く速度をゆるめる。


「モ、モンスターですか……?」


「まだわからない」


 さっきのエーテル灯があるのだろうか。かどをまがった先が明るい。それだけじゃない。急激にエーテルの濃度が上がってきた。


「気をつけろ」


 後ろのルニーナに注意を呼びかける。初めての経験だ。なんだ、この奇妙な気配けはいは。レベルの高いモンスターでもいるのか。


 かどをまがると、異様いような光景が目に飛びこんできた。


「なんだこれは……」


 言葉を失った。おびただしい数のスライムが、壁や天井に張りついている。


 その先にあったのは――結界だ。ただ、二重、三重に張られていたため、複雑な紋様をえがいているように見えた。


 そうか、これが原因か。冷静になってみれば、第一階層のモンスターだけが大発生するとしたら、これ以外に考えられないか。


「ルニ……」


 報告しようと思って後ろを振り向くと、ルニーナの姿が消えていた。

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