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伝説の勇者(レベル:マイナス39)  作者: mysh
勇者の復活編
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勇者(冒険者)、ダンジョンを調査する(前)

     ◇ スニード



 ルニーナを連れて、ダンジョンへ足をふみ入れた。


 ダンジョンに入るぐらいのことで、かなりしつこく抵抗されたな。まあ、ビビってるのは俺も同じだけど、こっちは死活しかつ問題だからしかたない。


 とはいえ、我ながら情けない。第一階層をちょっと歩くだけなのに、レベル5の魔導士におもりを頼まなければいけないとは。



     ◇



 地面や壁のいたるところに、スライムが張りついている。相当そうとうな数だ。こんな光景、今まで見たことない。外に出てきてしまうのも納得できる。


 ここは知っているダンジョンのようで、俺の知らないダンジョンだ。ていうか、なんでスライムしかいないんだ。他のモンスターはどこ行った。


 スライムであることはありがたい。こいつは害がないからな。もし大量発生したのがトードだったら、俺は年がら年中毒にかかっていただろう。


 ふと不安になった。後ろを振り向き、ルニーナがついて来ているか確かめる。


「ちゃんとついて来てますよ」


 ルニーナがおびえた様子で言った。


 メチャクチャ警戒している。これは完全に誤解してるな。すぐにでも、それを解きたいところだが、あのことはできるだけ秘密にしておきたい。


「……何かわかりましたか?」


 そんなにすぐわかるわけがない。どんだけ帰りたいんだ。


「まだわからないが、こういう時はたいてい奥に強力なモンスターがいて、スライムたちがそれに押しだされてるんだよ」


「なるほど……」


 なんて適当なことを言ってみたけど、それだけでは説明がつかないんだよな。


 その場合、一時的に大量発生しても長続ながつづきしないはずだ。周囲の環境に変化がないかぎり、そのダンジョンで生息せいそくできるモンスターの数は決まっている。


 エーテルの濃度に見合わない数のモンスターがいれば、いずれ共食ともぐいを始めるだろう。つまり、大量のスライムをやしなうだけのエーテルが、この場所に存在するんだ。


「なんでスライムしかいないんだ?」


「奥のほうがどうなっているか知りませんけど、この辺りのダンジョンは、みんなこんな感じですよ」


「……そんなバカな」


 地域によってかたよりはあっても、トード・ラット・バットとかは一定数いるもんだろ。


 いったい、何があったんだ。


 スライムは物理攻撃がききにくいから、こんな状態だと戦士系の冒険者は苦労させられるな。



     ◇



 奥に進んでも状況に変化はない――というか、スライムの数がどんどんと増えていっている。


「モンスターの数はどうだ。以前とくらべて増えてるのか?」


「昔の事情がちょっとわからなくて……。町に出てくるようになったのは、駆除くじょを担当していた連邦の方がいなくなってからです」


 役人にモンスターを駆除してもらうって、本当に異常事態だな。昔は冒険者がモンスターをうばい合っていたのに。


「あの、足もとに気をつけてくださいね。スライムをふみつけるとヤケドしますよ」


「スライムは身のほどを知っているから大丈夫だよ」


 モンスターとの間に歴然れきぜんとしたレベル差がある場合、全身に軽くエーテルをまとうだけで、進んで道を開けてくれる。そもそも、俺はスライムのいた火でヤケドなんてしない。


 注意すべきは状態異常をともなう攻撃だ。なぜなら、俺はそれにかかりやすい。自慢じゃないけど、防御しなければ百発ひゃっぱつ百中ひゃくちゅうだ。しかも、ほうっておいてもなかなかなおらない。


 ルニーナを強引に連れてきたのも、それが理由だ。ただ単に、回復役が欲しかった。もうパートナーなしでは、ダンジョンを歩けない体になってしまった。


 第一階層のモンスターでいうと、トードの粘液ねんえきによる毒と、バットの金切かなきり声による耳鳴りあたりが要注意だ。


 まあ、治らないのはやっかいだが、毒で気持ち悪くなって体力をすり減らすのも、耳鳴りで耳が聞こえづらなくなるのもガマンできる。


 マヒや石化といった凶悪きょうあくなものにくらべれば、その二つはたいぶマシだ。


「やけに明るいな。第一階層とは思えない」


「……そうなんですか?」


 普通なら、第一階層は足もとが見えづらいぐらいの明るさだ。スライムがかすかに光っているとはいえ、ここまで明るくなるとは思えない。


「第二階層ぐらいに思える。エーテルの濃度が高いんだよ。スライムの大量発生はそれが原因かもしれない」


 感覚的なものだが、エーテルの濃度は明るさだけでなく、空気感や肌ざわりでもわかる。


「なるほど。じゃあ、原因がわかったことですし、外に戻りましょうか」


「濃度の高い原因がまだわかってないだろ?」


「……そこまでやっていただかなくてもいいですよ」


 ルニーナはいやそうな顔をしている。モンスターが怖いのか。それとも俺が怖いのか。どっちだろう。どっちでもいいか。


 もう決めた。意地でも謎を解明して、こいつを見返してやる。乗りかかった船だしな。奥で何が起きているのか、正直気になっている。


 ただ、油断はできない。このぐらいの濃度があれば、第二階層のモンスターが現れてもおかしくない。


 第二階層にはマヒの攻撃をしかけてくるのがいる。一番やっかいなのがスネークだ。うっかりふみつけて、かまれでもしたら、全身マヒコースだ。


 石化と違って、マヒは意識があるから、精神的にもダメージが大きい。石化の心配はいらないだろう。さすがに、リッチは第一階層まで上がってこない――と願いたい。

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