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伝説の勇者(レベル:マイナス39)  作者: mysh
勇者の蜂起編
49/49

勇者(反乱者)、思いをぶつける

今回も途中で視点が切りかわります。



     ◇ ミロ卿(冷血卿)



 ふいに男が立ち上がった。とうとう人狼じんろうおさ事切こときれたか。男がこちらをチラッと振り向いたが、すぐに前を向いた。


 エーテルの光がまたたく。結晶で回復したのか。


「話は終わったか?」


「ああ」


 男が振り返った。


 敵意を感じるが落ち着いている。奇妙なほど落ち着いている。この存在感は何だ。いまだかつて味わったことがない。なぜか、不思議な気分にさせられる。


 レベル39で始末するのはしい。後々(のちのち)の楽しみのために、見のがすのも一興いっきょうか。私と年齢は変わらないようだが、先々(さきざき)の成長は十分に見込みこめる。


「私の部下が君にこっぴどくやられたようだ」


「……」


「それでどうする。相手をしてやってもいいが、君は利口りこうな男のようだ。現に、さきほどは激情にかられることもなく、私に勝負をいどもうとしなかった」


 男は何も答えない。じっとこちらを見すえている。戦うかどうかで迷っているのか。


「おとなしく立ち去るのなら見のがそう」


「……余裕だな」


 ようやく男が口を開いた。やはり落ち着いている。虚勢きょせいを張っているのか。あせりや動揺どうようがいっさい感じられない。私が怖くないのか?


「お前は逃げないのか?」


「……なぜ私が逃げる」


「それなら、ここで決着をつけよう」


「私はかまわないが……」


「お前は何のために戦う」


「……何が聞きたい」


「上からの命令でか?」


「まあ、そうなるかな」


「俺は自分のために戦っている。かつてのダンジョンを、お前らの手から取り戻すためにな」


「……いちおう、理由を聞いておこうか」


「冒険が好きだからさ」


 何を言いだすかと思えば。思わず失笑しっしょうしてしまった。


「エスペロのメンバーらしい発想はっそうだな」


 男の顔つきが変わった。


 とっさに右腕をかまえるほどの――ゾッとする何かを感じた。雰囲気からして違う。この感覚はいったいなんだ。私はこの男の何を恐れているんだ。


 男がゆっくりと歩きだす。ただならぬ殺気を感じ、私は反射的に〈火炎〉の魔法を放った。男はそれをよけることなく受けきった。


 なぜだ――、なぜよけなかった。


 今のは小手試こてだめし。事実、半分ほどの力しか使っていない。レベル39もあれば、受けきれたとしても不思議ではない。


 しかし、よけるそぶりすら見せなかったのが不可解だ。私が手加減することわかっていたとでも言うのか? 


 私の実力を見誤みあやまっているのか。それともあなどっているだけか。


 ――後悔させてやる。


「図に乗るなよ!」


 今度は全力で〈火炎〉の魔法を放った。男は豪炎ごうえんにつつまれ、たちまち姿が見えなくなった。


 回避した様子はない。終わりだ。あっけなかったな。たとえ全力で防御していたとしても大ダメージはさけられない。つけ上がったばつだ。


 ほどなく、男の姿が現れた。


 ……なぜだ。男は無傷だ。すずしい顔をしたまま、こちらを見すえている。やせガマンをしているのか……?


 男は歩めを止めない。私は追いたてられるように、再び豪炎をほとばしらせた。


 しかし、結果は変わらない。男にダメージをった様子はない。


「……どうしてだ? ありえない! こんなバカなことがあるわけない!」


 男が近づいてくる。足がふるえる。息がくるしい。私は後ずさった。気づくと、壁ぎわまで追いこまれていた。


「なぜだ……、なぜお前は平然としていられる……?」


 男が私の右手をつかみ上げる。マズい。これでは魔法が使えない。


「私のレベルは78だぞ! その私が全力で攻撃したんだ! どうしてお前はそれを防ぎきれる!」


 男が何かを放ち、顔に突風が吹きかかった。


 近くにいた部下が失神しっしんした。たったそれだけのことで。全身が石のようにかたくなる。つかまれた右手が痛い。息が止まりそうだ。


「俺のレベルは200以上だ」


 男が声をしぼりだすように言った。感情をあらわに。怒りにふるえながら。


「に……200……?」


 何を言っているんだ、この男は。考えることができない。足がすくんで動かない。


「お前らのあたまに伝えろ」


 視界のはしで強烈な光がひらめく。そちらへ目を向ける。男の右手が神々(こうごう)しいほどに輝いていた。


「このスニード・ミルフォリオが、地獄の底から舞い戻ったとな!」


 男が言ったことの意味はわからなかった。


 私はここで死ぬ。ただ、そう思った。



     ◇ ダンツォ



 戦いが終わった。ウヌオさんの活躍によって、俺たちの圧倒的勝利に終わった。


 自分は後方でルニーナさんのガードをしていたので、一度も魔導士と戦うことなく、倒した相手を布でしばったりしていた。


 かなりの敵に逃げられたとはいえ、マスタークラスの魔導士を大量に捕まえた。これも全員、ウヌオさんが倒したらしい。


 これだけの捕虜ほりょがいれば、連邦にどれだけの要求をつきつけることができるだろう。少なくとも、アルト城で捕まったフォルトさんたちを取り返せるはずだ。


 やつらが逃亡したおかげで、一時的に捕まっていた仲間も全員救出できた。ただ、犠牲者が一人出た。数日前に会った人狼族の長だ。冷血卿との一騎討いっきうちに敗れたらしい。


 おたがいの犠牲を減らすため、いたずらに相手の命を奪わない。よほどの悪事を働いたとか、恨みを買ったりしていないかぎり。連邦はその暗黙あんもくのルールを破った。


「すまない。ひと足遅かった。助けることができなかった」


「助けられなかったのは我々も同じ。長のかたきを討ってくれたことに礼を言わなければならない。ありがとう」


 冷血卿は死んだ。自分はその場にいなかったけど、目撃した人の話によると、ウヌオさんがたった一撃で倒してしまったそうだ。


 ウヌオさんに殺す気があったかどうかはわからない。背後に壁があったことがわざわいしたようだ。冷血卿の死体は建物のぶ厚い壁をつき破り、瓦礫がれきのそばに横たわっていた。


 人狼の長の命を奪ったのだから、これは当然のむくいと言えるかもしれない。このことで連邦にどうこう言われる筋合すじあいはない。


 わかっていたこととはいえ、やはり、ウヌオさんのレベルは39ではない。秘密にしてるみたいだから、あえて聞かないけど。


 ここでの戦いは俺たちの勝利に終わった。でも、これで終わりじゃない。きっと連邦は本気で俺たちをつぶしに来る。本当の戦いはここから始まるんだ。

勇者の蜂起編はこれで完結です。

ストックがなくなってしまったので更新を停止します。

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