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伝説の勇者(レベル:マイナス39)  作者: mysh
勇者の蜂起編
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勇者(反乱者)、市街の乱戦に加勢する

     ◇ スニード



 ムダに体力を消耗しょうもうしてしまった。内側にあった鉄製の門がゴチャゴチャとした仕組みだったから、面倒になって横の壁と外側の門を破壊した。


 市街で人狼じんろう族が戦っているのが見えたのであせっていた。


 対人たいじん戦はひさびさ。まだ若い頃は、結晶や鉱物こうぶつを横取りしようとする連中とよく戦ったが、『勇者』の称号しょうごうを得てからは、ケンカを売ってくる人間はいなくなった。


 だから、レベル不明の人間がどの程度で気絶きぜつするかなんて、加減がさっぱりわからない。かといって、力のしみをしている余裕もない。


 ここで状態異常にかかったら終わりだ。たとえ救出されても、治療を受けているうちに、すべての決着がついてしまう。それだけはなんとしてもさけたかった。


 冷血卿れいけつきょうとかいうレベル78の敵を倒すだけの力が残っているのか、いよいよあやしくなってきた。


 地上の場合、全力で戦えるのはせいぜい三分。自然に回復する量は一日でそれと同程度らしいから、要は八時間休んでも、一分間しかのびない。


 城壁の上での戦いも、はたから見ている以上に力を使った。数秒間ためた全力の波動はどうを、広範囲に向けて撃ち放つ。得られた結果を考えれば、これは看過かんかできる。問題は防御だ。


 瞬間的に爆発させる攻撃と違って、防御はエーテルの消費が大きい。いつ飛んでくるかわからない攻撃にそなえなければならないからだ。


 相手のレベルが20でもノーガードならそれなりのダメージを食らう。状態異常にかかりやすい俺は、なおさら慎重にならなければならない。


 たとえ相手のレベル78だろうと、俺なら半分以下の力で防御できるが、裏を返せば、半分近いパワーを使って、常に防御を展開てんかいしなければならない。


 残された時間は一分もないと考えるべきか。それに敵はエーテルリングとやらで回復できるから厄介やっかいだ。


 こんなことになるなら、ここへ来る前に下層かそうへ行って結晶を調達ちょうたつしておくべきだった。



     ◇



 激しい戦闘の行われている中心部へ急ぐ。かなりの数の人狼と魔導士が、入り乱れて戦っているのがわかった。


 通りをまがったところで、人狼とはち合わせた。


「待て! 俺たちは仲間だ!」


「例のエスペロという組織か」


「そうだ。遅れてすまない。仲間たちもすぐに来るはずだ」


「……ありがたい」


「ヴェントはどうした」


おさはあの建物で敵の大将と戦っている」


 あのレベル78か。ヴェントはそいつと遜色そんしょくないレベルらしいが、早く行ってやらないと。


「ひとりで戦ってるのか?」


「敵が希望したのだ。私は長と別れてから、敵のジャマが入らぬよう外を見張っていたのだが、それまで姿を見せなかった敵がいっせいに現れた。遅れて来た仲間たちとともに反撃に出たのだが、徐々に押され始め、仲間たちと離れ離れになり、連携れんけいも取れなくなってしまった」


「そうらしいな」


「最初は互角ごかくに戦えていた……。だが、私の体力はきかけているのに、やつらは疲れを知らない。私が一度しとめた相手が復活していたりする」


「おそらく魔法だろう」


 気絶した人間を目ざめさせる白魔法がある。手のひらの刻印こくいんからエーテル結晶を強制的に吸収させ、そのショックで目ざめさせるというものだ。


 あまり一般的ではない。レベルに見合った大きさのエーテル結晶が必要だし、白魔法を使えるやつは多くない。はっきり言って、自然に起きるのを待つほうが早いんだ。


 でも、身近みぢかに白魔法を使えるやつがいて、結晶を簡単に調達できる環境なら話は変わってくる。エーテルリングってやつを使ってるんだろう。よく考えたな。


 問題はやつらがどれだけの数を持っているかだが……。


「長が心配だ。敵のわなにかかっているかもしれない」


 ヴェントも心配だが、こいつらをほうっておくわけにもいかない。ただ、体力のことを考えると、ここで消耗したくない。


 目の届くところに、〈電撃〉の魔法をぶっ放しているやつがいる。見たところレベル50以上ある。ああ、あの服装はマスタークラスか。


 バターロたちはどうした。別の場所へ行ったのか、それともここへ来る途中に敵に襲われたか。どっちにしろ、あいつらにマスタークラスはが重いか。


「わかった。ヴェントは俺にまかせろ。とりあえず、あそこで暴れているやつだけでも片づける」


「あいつは手ごわいぞ」


「わかってる。あいつの注意を引きつけるぐらいの元気は残っているか?」


「ああ、そのぐらいなら……」


「なら行くぞ。のんびりしているヒマはない」


 アイコンタクトをかわしてから、敵のいる通りへ飛びだす。人狼はわざと敵の視界に入るように、大回りに進んでいく。


 対して俺は、敵の死角しかくから一直線に接近した。敵の注意は前方を横ぎって行く人狼に引きつけられた。だが、すぐに興味を失い、こちらに気づかれてしまった。


 敵の放った電撃が不規則ふきそくに広がっていく。防御に使う力すらもったいない。すこしでも力を温存おんぞんするため、物理的によけることにした。


 これは危険なけだ。無防備な状態で魔法を受ければ、感電してしまい、しばらく立つことさえできなくなるだろう。


 俺はいっきに飛び上がった。枝葉えだはのようにのびていく電撃を飛び越えて、敵の背後へまわりこむ。着地後にすかさず反転し、敵に回しげりを食らわせた。


 宙に浮き上がった敵が数十メートル吹き飛び、路上ろじょうをころげまわる。敵は地面に倒れたまま、ピクリとも動かなくなった。


 やりすぎだった。レベル50というのが頭にあるから、つい力を入れすぎてしまう。魔導士は打撃に弱いから、〈バリア〉を張っていないかぎり、手加減していいのか。


 さっきの人狼が近づいてきて、敵の姿をキョロキョロとさがし始める。やがて路上に倒れた敵を発見すると、しばらく警戒するように見ていた。


「あいつはもう心配ない」


「あ、ああ……」


「まあ、魔法で目ざめさせられるから、注意したほうがいいが……、先にあっちを片づけないとな」


 交差する通りの先に複数の敵を発見した。使っている魔法を見ると、一人は確実に50を超えている。


 考えが甘かった。慢心まんしんしていた。敵は地上での戦いに特化とっかしている。ダンジョンでモンスターと戦うのとはわけが違う。戦い方を根本こんぽんからあらためないといけないみたいだな。

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