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伝説の勇者(レベル:マイナス39)  作者: mysh
勇者の蜂起編
43/49

ヴェント(人狼)、冷血卿と対峙する

     ◇ ヴェント



 誰とも出会うことなく、城門じょうもんにたどり着いた。


「敵の姿は見当たりません」


「守る価値はないということか」


 三人で手分てわけして付近を確認したが、敵は逃げおおせたあとだった。身のほどを知っているとも言えるが、誘いこまれている気がしてならない。


「この門はどうなっているのでしょうか」


「この塔の中で何かをするのでしょうか」


 外側の門はカンヌキでかたく閉ざされているだけだったが、鉄でできた内側の門は、複雑な仕掛しかけがほどこされ、我々には開ける方法がわからなかった。


「トンドロ。お前はいったん外に戻り、仲間たちが城壁をのぼるのを手助けしてやってくれ」


「わかりました」


 ブランコをしたがえて市街しがいを進んだ。通りの中央を堂々と進んでも、敵はいっこうに姿を見せない。避難ひなんした後なのか、住人の姿も見えなかった。


 市街の中心地までやって来ると、建物のかげや、屋上に隠れる敵を遠目とおめに発見したが、攻撃してくる気配はなかった。


「張り合いがありませんね」


好都合こうつごうだ。さっさと敵の大将の首を取るぞ」


 そうは言っても、まだ決めあぐねている。確実に勝利するには、まずはザコを倒すことを優先し、敵の大将は後回あとまわしにすべきだろうか。


 実力が拮抗きっこうしているなら、体力を回復してからでないと心もとない。姿を見せないところをみると、長期戦でこちらを消耗しょうもうさせようとしているようにも思える。


「待て!」


 我々の行く手をさえぎるように、ひとりの敵が飛びだしてきた。これまでの相手とは違う。かなりの実力者だと、対峙たいじしただけでわかった。


「お前が敵の大将か?」


「私は違う。貴殿きでんは人狼族のおさ、ヴェント殿か」


 かたくるしい男だ。何かたくらみがあるとしか思えないが、話ぐらいは聞いてやるか。


「だとしたらなんだ。降伏こうふくするとでも伝えに来たのか?」


「いや、ミロきょうは貴殿と一対一で戦われることをお望みだ」


「……一対一で?」


 ふん、一対一なら勝てるとでもいうのか。おもしろい。どんなツラをしているのか、早くおがみたくなってきた。


わなではないでしょうか?」


「もしそうだとしても、返り討ちにするまでだ」


 ここはやつらの庭。油断は禁物きんもつだが、信じてみるか。


「お前らの大将はどこにいる?」


天守てんしゅの大広間でお待ちになっている」


 男が近くの巨大な建物を指さす。遠くからでも目立っていたあの建物だ。


 男の案内を受け、建物の正面にまわる。門をぬけた先にある大きな扉は、私を迎え入れるように開かれていた。


「ブランコ。お前は外を見張っていろ」


「はっ」


「もし私に何かあった場合、トルドロと二人で仲間たちを指揮しろ」


「……」


「もしもの場合だ。そんな顔をするな」


「……はっ」


「まかせたぞ」



     ◇



 正面の扉から、建物に足をふみ入れる。入ってすぐの場所は落ち着かないほど天井てんじょうが高かった。


 これほど巨大な部屋は初めて見た。第五階層へ初めて行った時の感覚に似ている。空間をムダに使っていると思えてならない。まったく、人間は理解に苦しむ。


 部屋の広さはほどほど。一対一で戦うことを考えれば、じゅうぶんだ。我々はフィールドを縦横じゅうおう無尽むじんにかけまわって戦うので、せまい場所では力を発揮できない。


 ほどよい高さに張りだした通路がある。たやすく飛び乗れそうなので活用できそうだが、いかにも敵の伏兵ふくへいが現れそうだ。気をつけなければ。


 部屋の中央で男がたたずんでいる。気配けはいだけで敵の大将だとわかった。高レベル特有とくゆうのそれがあったからだ。


 部下を一人も連れていない。不気味な雰囲気だ。私が接近してきているのに、身がまえる様子もなく、おだやかな表情を浮かべている。


貴様きさまが敵の大将か?」


「そうだ。君は人狼族の長――ヴェントか?」


「いかにも。部下を連れていないのか?」


 反応を見きわめよう。口では一対一を望んでいると言っていたが、あやしいものだ。


亜人あじん最強とうたわれる男との戦いにおいて、部下など足手まといになるだけだ。君も同じ考えじゃないのか?」


 実際に私もそうしたが、部下をかろんじるような言葉は口にしたくない。


「私がたったひとりで相手をすると約束しよう。ただ、そちらが仲間を呼んでくるぶんにはかまわない」


愚弄ぐろうするな。お前の相手など、私ひとりで十分だ」


 男がわずかに口元くちもとをゆるめた。緊張しておらず、恐怖を感じている様子もない。表情にとぼしいのに、なぜか喜びに打ちふるえているように見えた。


 絶対的な自信があるのか。それとも、戦闘にえているだけか。


「戦う前に一つ忠告しておこう」


「なんだ」


「君への殺害命令が出ている」


「……ほう」


「これは大変異例(いれい)なことだ。君も承知しょうちしているかもしれないが、私たちは無益むえきな殺害を控えてきた。それは遺恨いこんを残すことになり、報復ほうふくを呼びかねないからだ。よほどの重罪人じゅうざいにんでなければ、我々は見返りを条件に解放してきた」


 縄張なわばりをめぐって、やつらと衝突したことがある。それによって部下数名が行方不明となったが、後日ごじつ、要求をのめば捕虜ほりょを解放すると持ちかけられた。


 モンスターは狩らない。縄張りを自由に通行させてもらえればいい。悪くない条件だったため、我々は要求をのんだ。すると、約束通り、仲間全員が戻ってきた。


 ただ、結果的にそれはあやまちだった。やつらは我々の縄張りへ流れるエーテルをせきとめるなど、裏で工作活動を進めていたからだ。おろかにも、我々はそれに気づけなかった。


光栄こうえいに思ったほうがいい。連邦という巨大国家が、君に恐れをなした。存在し続けてはいけない危険人物だと認定したのだ」


「……それは光栄なことだな」


 あざけるように返す。だから、どうした。まともに答えるのもバカらしい。


「それを承知の上で戦ってもらいたい。私も命を奪われる覚悟で、君との戦いにのぞもう」


愚問ぐもん――。始めからそのつもりだ!」

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