勇者(反乱者)、仲間たちと作戦会議を行う
◇ ダンツォ
バターロさんが仲間を集めに外へ出て行った。いくつかの宿屋に分かれて泊まっているそうだ。
しばらくすると、宿屋の一室に続々と人が集まってきた。
「集めたぞ」
「……これで全員か?」
ウヌオさんがガッカリした様子で言った。俺たち三人をぬいたら十人もいない。ここまで少ないんだ。
「街を見回っているのや、外へ偵察に出ているのがいる。夜には戻ってくるはずだ。まあ、全員かき集めても二十数人だろうが」
ひと呼吸置いてから、ウヌオさんが話を始めた。
「部外者の俺がいきなり来てなんだと思うかもしれないが、ケストハーロの襲撃を予定通り決行してほしい」
部屋の中がざわつく。みんな困惑の色を隠せない。
「人狼たちだけに戦わせたくないんだ。ここで約束を破れば、あいつらとの関係は取り返しのつかないことになる」
誰も何も言おうとしない。部屋が沈黙でつつまれる。
「無理強いはしないつもりだ。それに危険だと思ったら、すぐに引き返してもらってかまわない」
「しかしだな……」
「敵は俺が全部倒すから、敵の注意を引きつけてくれるだけでかまわないんだ」
「連邦の魔導士をあなどらないほうがいい。最低でもレベル30。レベル50を超えているのがゴロゴロいるんだぞ」
バターロさんが苦言をていした。
「それはわかってる」
ウヌオさんは本気だ。だけど、疑いの目を向けられている。みんなが信じられないのも無理はない。実力を知っている俺がどうにかしなければ。
「あの! ウヌオさんは強いです。トロールを一撃で倒したのを、この目で見ましたから」
「……トロールを一撃で?」
「本当か?」
みんなから次々と驚きの声が上がる。
「レベルはいくつなんだ?」
「最近計っていないからわからないが……、少し前は39だったかな」
「レベル39なら、トロールなんて倒せないだろ」
当たり前のようにツッコミが入る。ウヌオさんは押し黙ってしまった。やっぱり、本当のレベルは秘密なのか。
「いや、彼は俺の目の前でも、監獄のぶ厚い壁を破壊した。トロールを倒せても不思議ではない」
バターロさんの擁護が入って場が静まった。
「そんな冒険者が協力してくれるなら……」
「俺たちもできることなら約束を守りたいからな」
部屋に前向きな空気が広がっていき、ウヌオさんの顔も明るくなっていった。
「誰か、異存のあるやつはいるか?」
誰からも声が上がらず、作戦を実行に移すことが決まった。
◇
「ケストハーロまではどう行くつもりだったんだ?」
「ダンジョンを進んで、バカ正直に正面突破さ。関所までは二手に分かれて進むつもりだったが、この人数だとかえって危険かもな」
ウヌオさんの質問に、バターロさんが答えた。
「……関所? ダンジョンに関所があるのか?」
関所のことを知らないんだ。昔からあったものじゃないけど、作られたのは五年くらい前だと聞いたことある。
「ああ、ちょうど海峡を渡った辺りにある」
「関所を知らないんですか?」
「悪い。こっちのほうはしばらく来てなかったからな。事情がよくわからないんだ」
「北方の地上に関しては、事実上連邦の領土と言ってもいいからな。ダンジョン同様、北方へ渡る人間も『管理』してるのさ」
「そうすると、ケストハーロへ行くには、その関所を通らなければならないのか」
「はい。下層までもぐれば別ですが、結局、上層で連邦が待ち伏せているから、時間がかかるだけだと思います」
「船で渡ることは考えたくない。用意するだけでも時間はかかるし、船上で攻撃を受けたらひとたまりもない」
船の上では魔法で遠距離攻撃ができる魔導士が圧倒的に有利だ。関所でも厳重な警備がしかれているから、それほど違いはないかもしれないけど。
「たとえ上層でも、ケストハーロへ行くルートはいくつかあったと思うんだが……」
「ああ、数年前まではもう一つあった。だが、そっちは出口がふさがれてしまったんだ。結局、関所のほうへ戻るしかない」
「……そういうことか」
ウヌオさんが苦笑いする。連邦は本当に徹底している。
適当にダンジョンを進んでいると、連邦のふさいだ出口によく出くわす。モンスターの数が極端に少ないとか、そういうことで早めに察知するしかない。
「第四階層を進むのは無理ですか?」
「これだけの大人数だとな……。ケストハーロ方面はあまり詳しくないし、時間のロスも大きすぎる」
さすがのウヌオさんでも、大人数を守るのは無理か。
「関所ってのはどんな感じなんだ?」
「結構なものだぞ。頑丈な門があって、二重、三重に柵が張りめぐらされている。おまけに小屋まであるからな」
「ダンジョンにずいぶんと大がかりなものを作ったな」
「人狼対策の側面が強い。魔導士は身体能力が低いから、柵に隠れて魔法で攻撃するんだ」
「あと、そこに関所を作ったのは、巨大な結界を張ってエーテルの流れをせき止めるためだ。ケストハーロは地形的にエーテルが集まりやすい。本来なら、人狼族の縄張りへ流れていくそれを、やつらが独占しているんだ」
「人の神経を逆なでするのが本当にうまいな」
ウヌオさんがあきれながら言った。
「それこそ、人狼族が立ち上がった最大の理由だからな」
怒っているのは人狼族だけではない。連邦は大陸各地で同様のことをやっているから、俺たち冒険者や、他の亜人たちの不満は高まるばかりだ。
「守りはどれくらいいるんだ?」
「予想もつかない。普段なら十人もいないが、俺たちを待ちかまえているだろうからな。ただ、ケストハーロの防衛を考えれば、やつらも関所ばかりにかまってもいられないはずだ。人狼族は北から攻撃をしかける予定だからな」
人狼族は地上からケストハーロへ向かえるので、関所を通る必要はない。ちなみに、俺たちは南から攻撃をしかける予定だ。
結局、関所を強行突破するという、従来の方針でいくことに決まった。




