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伝説の勇者(レベル:マイナス39)  作者: mysh
勇者の蜂起編
39/49

勇者(反乱者)、仲間たちと作戦会議を行う

     ◇ ダンツォ



 バターロさんが仲間を集めに外へ出て行った。いくつかの宿屋に分かれてまっているそうだ。


 しばらくすると、宿屋の一室に続々(ぞくぞく)と人が集まってきた。


「集めたぞ」


「……これで全員か?」


 ウヌオさんがガッカリした様子で言った。俺たち三人をぬいたら十人もいない。ここまで少ないんだ。


「街を見回っているのや、外へ偵察ていさつに出ているのがいる。夜には戻ってくるはずだ。まあ、全員かき集めても二十数人だろうが」


 ひと呼吸置いてから、ウヌオさんが話を始めた。


「部外者の俺がいきなり来てなんだと思うかもしれないが、ケストハーロの襲撃を予定通り決行してほしい」


 部屋の中がざわつく。みんな困惑の色を隠せない。


人狼じんろうたちだけに戦わせたくないんだ。ここで約束を破れば、あいつらとの関係は取り返しのつかないことになる」


 誰も何も言おうとしない。部屋が沈黙でつつまれる。


「無理()いはしないつもりだ。それに危険だと思ったら、すぐに引き返してもらってかまわない」


「しかしだな……」


「敵は俺が全部倒すから、敵の注意を引きつけてくれるだけでかまわないんだ」


「連邦の魔導士をあなどらないほうがいい。最低でもレベル30。レベル50を超えているのがゴロゴロいるんだぞ」


 バターロさんが苦言くげんをていした。


「それはわかってる」


 ウヌオさんは本気だ。だけど、疑いの目を向けられている。みんなが信じられないのも無理はない。実力を知っている俺がどうにかしなければ。


「あの! ウヌオさんは強いです。トロールを一撃で倒したのを、この目で見ましたから」


「……トロールを一撃で?」


「本当か?」


 みんなから次々(つぎつぎ)と驚きの声が上がる。


「レベルはいくつなんだ?」


「最近計っていないからわからないが……、少し前は39だったかな」


「レベル39なら、トロールなんて倒せないだろ」


 当たり前のようにツッコミが入る。ウヌオさんは押し黙ってしまった。やっぱり、本当のレベルは秘密なのか。


「いや、彼は俺の目の前でも、監獄のぶ厚い壁を破壊した。トロールを倒せても不思議ではない」


 バターロさんの擁護ようごが入って場が静まった。


「そんな冒険者が協力してくれるなら……」


「俺たちもできることなら約束を守りたいからな」


 部屋に前向きな空気が広がっていき、ウヌオさんの顔も明るくなっていった。


「誰か、異存いぞんのあるやつはいるか?」


 誰からも声が上がらず、作戦を実行に移すことが決まった。



     ◇



「ケストハーロまではどう行くつもりだったんだ?」


「ダンジョンを進んで、バカ正直に正面突破さ。関所せきしょまでは二手ふたてに分かれて進むつもりだったが、この人数だとかえって危険かもな」


 ウヌオさんの質問に、バターロさんが答えた。


「……関所? ダンジョンに関所があるのか?」


 関所のことを知らないんだ。昔からあったものじゃないけど、作られたのは五年くらい前だと聞いたことある。


「ああ、ちょうど海峡かいきょうを渡った辺りにある」


「関所を知らないんですか?」


「悪い。こっちのほうはしばらく来てなかったからな。事情がよくわからないんだ」


北方ほっぽうの地上に関しては、事実上連邦の領土と言ってもいいからな。ダンジョン同様、北方へ渡る人間も『管理』してるのさ」


「そうすると、ケストハーロへ行くには、その関所を通らなければならないのか」


「はい。下層かそうまでもぐれば別ですが、結局、上層じょうそうで連邦が待ち伏せているから、時間がかかるだけだと思います」


「船で渡ることは考えたくない。用意するだけでも時間はかかるし、船上せんじょうで攻撃を受けたらひとたまりもない」


 船の上では魔法で遠距離攻撃ができる魔導士が圧倒的に有利だ。関所でも厳重げんじゅうな警備がしかれているから、それほど違いはないかもしれないけど。


「たとえ上層でも、ケストハーロへ行くルートはいくつかあったと思うんだが……」


「ああ、数年前まではもう一つあった。だが、そっちは出口がふさがれてしまったんだ。結局、関所のほうへ戻るしかない」


「……そういうことか」


 ウヌオさんが苦笑にがわらいする。連邦は本当に徹底てっていしている。


 適当にダンジョンを進んでいると、連邦のふさいだ出口によく出くわす。モンスターの数が極端に少ないとか、そういうことで早めに察知さっちするしかない。


「第四階層を進むのは無理ですか?」


「これだけの大人数おおにんずうだとな……。ケストハーロ方面はあまりくわしくないし、時間のロスも大きすぎる」


 さすがのウヌオさんでも、大人数を守るのは無理か。


「関所ってのはどんな感じなんだ?」


「結構なものだぞ。頑丈がんじょうな門があって、二重、三重にさくが張りめぐらされている。おまけに小屋まであるからな」


「ダンジョンにずいぶんと大がかりなものを作ったな」


「人狼対策の側面そくめんが強い。魔導士は身体能力が低いから、柵に隠れて魔法で攻撃するんだ」


「あと、そこに関所を作ったのは、巨大な結界を張ってエーテルの流れをせき止めるためだ。ケストハーロは地形的にエーテルが集まりやすい。本来なら、人狼族の縄張なわばりへ流れていくそれを、やつらが独占しているんだ」


「人の神経を逆なでするのが本当にうまいな」


 ウヌオさんがあきれながら言った。


「それこそ、人狼族が立ち上がった最大の理由だからな」


 怒っているのは人狼族だけではない。連邦は大陸各地で同様のことをやっているから、俺たち冒険者や、他の亜人たちの不満は高まるばかりだ。


「守りはどれくらいいるんだ?」


「予想もつかない。普段なら十人もいないが、俺たちを待ちかまえているだろうからな。ただ、ケストハーロの防衛ぼうえいを考えれば、やつらも関所ばかりにかまってもいられないはずだ。人狼族は北から攻撃をしかける予定だからな」


 人狼族は地上からケストハーロへ向かえるので、関所を通る必要はない。ちなみに、俺たちは南から攻撃をしかける予定だ。


 結局、関所を強行きょうこう突破するという、従来じゅうらいの方針でいくことに決まった。

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