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伝説の勇者(レベル:マイナス39)  作者: mysh
勇者の蜂起編
38/49

勇者(反乱者)、ブルアルバーロに急いで戻る

     ◇ ダンツォ


 俺たちは人狼じんろう族の里をあとにした。


 ケストハーロの攻撃に参加すると、ウヌオさんが人狼族と勝手に約束をしてしまった。でも、あくまでウヌオさん個人がした約束で、自分たち――エスペロが守る義務はない。


 ただ、ウヌオさんはトロールを一撃で倒すような人だ。そんな人が力になってくれるなら、フォルトさんがぬけた穴をめるどころではない。おぎなってあまりあるかもしれない。


 レベル39だというのは気がかりだけど、ただ単にウソをついている可能性もある。自分の目で確認したわけじゃないし、冒険者がレベルをいつわることはめずらしくない。


 あの強さを見ると、いくらなんでもサバを読みすぎている気もするけど。


「あんな約束しちゃっていいんですか? 私たちは部外者ぶがいしゃですよね?」


 ルニーナさんも批判的な考えのようだ。


「ついさっき当事者とうじしゃになったんだ」


「……それに私も加わってますか?」


「心配するなって」


「どういう意味合いですか? あいまいな答えはやめてください」


 あいまいにしたまま、ウヌオさんがこちらを向いた。


「仲間との合流ごうりゅう場所にまちがいはないか?」


「……はい、ブルアルバーロでまちがいありません」


「二日もあれば戻れるな。すぐにでも出発するぞ」


「それはかまいませんけど、約束はできません。俺、エスペロでは下っぱの下っぱですし、組織の方針に口をだせる立場じゃないんです。それに、そこへ仲間が集まっているかどうかも保証できません」


「それならそれでかまわない。さっきも言っただろ。たとえ俺ひとりでも行く。人狼たちだけに戦わせるわけにいかない」


「でも……」


「連邦の魔導士は第四階層のモンスターより手強てごわいか?」


 連邦にはレベル50台の魔導士が当たり前のようにいるし、冷血卿れいけつきょうにかぎれば、第四階層のモンスターより強い。だけど、それをもしのぐ力をウヌオさんに感じる。


「俺を信じろ、ダンツォ」


 信じようと思った。この人にけてみたいと、心から思った。


「わかりました。いえ……、感動しました。エスペロのみんなが行かなくても、自分だけはついて行きます」


「よし、その意気だ。ただ、本音ほんねを言えば、もっと仲間がほしい。俺にだって限度げんどがあるからな。そこまで時間に余裕はない。急ごう」



      ◇



 いったん第四階層までおりてから、大陸に渡る道を選んだ。


 行きと同様、ウヌオさんはルニーナさんを抱きかかえながら進んだ。ただ、走るスピードが二倍近くになっている。ついて行くだけでも大変だ。行きの時はあれでもセーブしていたんだ。


 行く手に立ちはだかるモンスターを、ウヌオさんは数メートル離れた場所から倒す。モンスターがこちらに気づいていなければ、その脇を平然へいぜんとかけぬけて行くので、ヒヤヒヤものだった。


「ダンツォ、拾える結晶は拾え!」


 そう指示を出されたけど、走りながら拾えたのは五回に一回ぐらい。急いだけど、その日のうちに大陸へ渡ることはかなわず、また野宿のじゅくをすることになった。


 翌日は朝から走り続け、大陸に渡ることはできたけど、ブルアルバーロにたどり着くのは無理そうだったので、行きの時にも立ち寄った小さな町で宿を取った。


 まだブルアルバーロまで距離がある。ただ、朝から走れば、昼頃には到着するはずだ。


 ケストハーロ襲撃は明後日。仲間が集まらず、解散している可能性だってある。今はみんながいることを祈るしかない。



     ◇



 朝食もそこそこに、翌日も朝イチから走り続けた。ルニーナさんはウヌオさんに抱かれているのに慣れたようで、赤んぼうのように腕の中でウトウトしていた。


 ブルアルバーロの近くまで来たところで、安全を考慮こうりょして地上へ出ることにした。北方ほっぽうへ向かう街道が近くを通っているし、ダンジョンにも有名なルートが多い。


 そのため、この辺りは連邦の魔道士たちの行き来が多い。道のせまい上層じょうそう遭遇そうぐうしたら戦うしかない。地上は地上で危険だけど、逃げ場があるだけマシだ。


 ルニーナさんは地上に出てから背中へ移動した。さすがに、人目ひとめを気にしたらしい。途中、魔道士をふくむ連邦の一団と遭遇したけど、なんとかやりすごせた。


 魔導士の格好をしたルニーナさんが、カモフラージュに役立っているのかもしれない。彼女はとても冒険者に見えない。



     ◇



 昼すぎにブルアルバーロに到着した。


 集合場所と言われていた酒場はまだ開いていない。その近くの交差点へ行って、目立つところに立っていたけど、仲間はなかなか現れなかった。


「本当にここなのか?」


「はい……」


 ここは連邦の街ではないけど、やつらがいてもおかしくない。


 しばらく待っていると、「おい」と背後から声をかけられた。振り返ると、知り合いではないけど、見たことのある冒険者が立っていた。


「フォルトの仲間か?」


「はい」


「こっちだ」


 男のあとをついて行く。小さな宿屋の多い通りに入った。


「連邦がかぎまわっているから、アジトを別の場所へ移したんだ」


「みんな無事ですか?」


「無事といえば無事だ。さすがの連邦も、よその国でしかけてきたりしないさ。だが、予定の半分も集まっていない。特にフォルトのとこは数えるほどしか来ていない」


 うちのギルドからは三十人以上が反乱に加わる予定だった。やっぱり、みんな捕まってしまったんだ。あそこから逃げられただけでも奇跡だったのかもしれない。


 宿屋の一つに入ると、見慣れた顔を見つけた。アルト城から一緒に脱出したバターロさんだ。ヒゲをそったようで、顔がさっぱりしている。


「ダンツォ、無事だったか」


「バターロさんも」


「何度も捕まりかけたけどな」


 バターロさんと肩を抱きあって、無事を喜びあう。


「おお、二人も一緒か!」


 確か、ウヌオさんたちとは監獄かんごくで同室だったんだっけ。


「人狼族の里へは行けたのか?」


「はい、ウヌオさんのおかげで」


「そうか。恩に着るよ。脱獄だつごくの時といい世話になりっぱなしだな」


「気にするな」


「それで、人狼族はなんと言っていた?」


「そのことなんですが……、人狼族はこっちが参加するしないに関わらず、予定通り決行するつもりだって」


「……そいつは弱ったな」


「こっちはどういう話になってるんだ?」


 ウヌオさんが話に加わってきた。


「みんなあきらめている。もう街を離れたやつすらいる。今の戦力では、ケストハーロにたどり着けるかどうかもあやしいからな」


 ウヌオさんの表情がくもる。話を切りだしづらくなった。ただ、決心はにぶっていないようだ。


「話がある。できるだけ人を集めてほしい」

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