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伝説の勇者(レベル:マイナス39)  作者: mysh
勇者の蜂起編
32/49

勇者一行、モンスターの気配を察知する

     ◇ ダンツォ



「ちょっと待ってください。もう少しゆっくり行ってください」


 ルニーナさんが遅れ始めていた。もうヘトヘトのようで、足がフラついている。


 まだ三分の一も来ていない。こんな調子で大丈夫だろうか。レベル6ならしかたないけど、ウヌオさんはどうして彼女を連れてきたんだろう。


「これでもゆっくり行っているんだ。このペースだと何日かかるかわからない」


 白魔法を使える魔導士が一緒にいるのはありがたいけど、ルニーナさんは置いていったほうがいいんじゃないだろうか。モンスターや連邦の魔導士と戦闘になる可能性は高いし。


「ダンツォ。どのくらいで向こうに着きたいんだ?」


「反乱を起こすのが六日後の予定でしたから、遅くとも三日以内には。仲間のところへ報告に戻る時間もほしいですし」


「三日って……、そんなにかかるんですか?」


人狼じんろう族の里はブルアルバーロのはるか先にあるからな」


「……そうでしたね」


 ルニーナさんが言葉を失う。やっぱり、彼女には無理だ。


「まあ、走っていけば、ここからでも一日で行けるけどな」


「えっ……、走っても一日では無理だと思います」


 アルト城から人狼族の里までは三百キロぐらいある。いくらレベルが高くても一日では……。


「ああ……。そうだな、一日では無理だな」


 しばらく考えこんでいたウヌオさんが、こんな話をきりだした。


「俺がかかえて運ぼう。前がいい? それとも後ろがいい?」


 それならいけるかもしれない。だけど、ウヌオさんの両手がふさがるし、体力は持つのだろうか。冒険者は仲間を運ぶのに慣れてるから心配いらないか。


「……じゃあ、前でお願いします」


 ルニーナさんが悩んだすえに答える。ウヌオさんがさっそく抱きかかえると、彼女はさっきと違って顔を赤らめている。


「やっぱり、恥ずかしいですね」


「誰も見てないからガマンしろ」


 この二人の関係が気になる。かなり仲がいいんだけど、恋人同士には見えないんだよなあ。不思議だ。


「この状態で〈バリア〉の魔法を使えるか、確認しておこう」


「右手があいていれば大丈夫ですよ」


 ルニーナさんが〈バリア〉の魔法を使う。ウヌオさんが安心した様子を見せた。


 そうか。ウヌオさんは第四階層を進むにはレベルが低いから、状態異常の攻撃を警戒しているのか。あれはレベル差があると、かなりの確率でかかるからな。


 やっとルニーナさんを連れてきた理由がわかった。


「よし、行くか」


「本当にシールドみたいにあつかわれそうでイヤなんですけど」


「そんなあつかいしないって。チョウよ花よと大切にするさ」



     ◇



 俺たちは再び走りだした。


 人間を抱きかかえているとは思えないほど、ウヌオさんの足どりは軽快。自分としてはややオーバーペースで、置いていかれそうなくらいだ。


「向こうにデカいのがいるな。こっちへ行こう」


 開けた場所に出てから、ウヌオさんが進路を変えた。


「見えないところでもわかるんですか」


「遠くのモンスターでも気配で察知できるよ」


「上のほうばかりを気にしているのは理由があるんですか?」


 ルニーナさんが指摘した。言われてみると、ウヌオさんはさっきから上のほうをしきりに警戒している。


「コカちゃんは高いところのっぱりやくぼみにいるんだ」


「コカちゃんって、コカトリスのことですか?」


「知ってるのか。あいつは石化光線を放つから気をつけろ」


 うわさに聞いたことある。ただ、レベルもそこそこで、そこまで危険ではないと聞いたけど。第四階層のモンスターなら、トロールやベヒーモスの名前のほうが耳にする。


 せまい道に入ってから、ウヌオさんが走るスピードをゆるめた。を上げてる場合じゃないんだけど、ついて行くだけでも大変だったのでありがたかった。


「待て」


 ほどなく、ウヌオさんがほぼ歩いている状態まで速度を落とした。張りつめた表情で前方を見すえている。


「デカいのがいる」


 ここは道が細いから、よけて通れそうにない。


「戻りますか?」


「いや、戻るとかなり遠回りになる。ルートもはっきりしない」


 だけど、自分たちで戦えるのだろうか。第四階層のモンスターはレベル50が当たり前だ。ウヌオさんはともかく、自分は戦力にすらなれそうにない。


「戦うってことですか?」


「ああ。逃げられるのなら逃げたいが」


 ウヌオさんが立ち止まって左右を見まわす。


「いくつかまじってる感じだな」


 複数いるってことか。自分もさっきから気配だけは感じている。それでも目の届く範囲にいないってことは、相当そうとうデカいってことだ。


「二人とも覚悟はいいか?」


「……本当に戦うんですか?」


 ルニーナさんが不安げに言った。


「自分は何をすればいいですか?」


「戦闘はまかせろ。俺の後ろに隠れていればいい。ただ、俺にもしものことがあったら、安全な場所まで連れて行って、ルニーナに魔法で治療ちりょうさせてくれ」


「……わかりました」


「それなら、私はさらに安全な場所にいていいんですね?」


「いや、お前はこのまま〈バリア〉の魔法を展開てんかいしててくれ」


「それって一番危険なポジションですよね!?」


「心配するな。第四階層では〈バリア〉の魔法を使い続けても、あっという間に回復する。魔法が使えなくなることはない」


「そんな心配してませんよ!」


 なんかもめてるけど、自分はウヌオさんの言葉に甘えよう。


 でも、ルニーナさんを抱きかかえたまま、どうやって戦うつもりだろう。攻撃する時におろすんだろうけど、そんなハンデをつけた状態で、すばやいモンスターに対応できるのだろうか。

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