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伝説の勇者(レベル:マイナス39)  作者: mysh
勇者の蜂起編
30/49

勇者一行、第四階層へ降下する

ウヌオ=スニード(伝説の勇者)です。

ダンツォはしばらくその名で呼び続けます。

     ◇ ダンツォ



 北方ほっぽうにある人狼じんろう族の里へ向かうため、出会ったばかりの冒険者――ウヌオさんと一緒にダンジョンの奥へ進む。


「まずは第四階層へおりるぞ」


「道はわかりますか?」


「悪いが、さっぱりわからない。ここは来た記憶がないからな。ただ、第四階層までおりられれば問題ない。たいていの道はおぼえてるし、上層じょうそうと違って、道が入りくんでないから迷うこともない」


 この目で見たことはないけど、第四階層は穴が広いから、道が枝分えだわかれしてることが少ないって聞いたことがある。


「あの、この女性の方は? 魔導士っぽい格好してますけど」


「魔導士だぞ」


「はい、魔導士です」


 連邦の役人には見えないけど、結構服装が似ている。冒険者って感じじゃないし、恋人だろうか。


「名前はルニーナ。役人だけど、連邦の魔導士じゃないから安心しろ。現に、今朝けさまで監獄かんごくにいたし、俺の脱獄だつごく仲間でもある」


人聞ひとぎきの悪いこと言わないでください。監獄に入れられたのも、脱獄したのも、あなたに巻きこまれただけです」


 二人もあそこに捕まってたってことか。


「何をやって捕まったんですか?」


「連邦の船をしずめたんだっけ?」


「なんで私に聞くんですか。自分の胸に聞いてください」


 船を沈めたって……。この人、かなりの大物だ。そういえば、さっきバターロさんが、ウヌオさんに助けられたって言ってたな。


 ――ん、どういうことだ? 一緒に捕まっていた人から助けられたってこと……?


 だいぶ明るくなった。もう第二階層に入ってるな。壁や地面に草やコケが生えだすから、見た目でも判断がつく。


 ウヌオさんの足どりが慎重になった。下層かそうにのびる縦穴を探しているようだけど、時どき天井のほうも見上げている。


 不思議とモンスターには出会わない。でも、なんとなく気配を感じる。近くに強力なモンスターがいるような気がする。


「近くに何かいませんか?」


「……そうか?」


「ええ、異様いような気配を感じます」


「おどかさないでくださいよ」


 ウヌオさんがしきりに辺りを警戒し、ルニーナさんもビクビクふるえている。


 これから第四階層に行くっていうのに、このメンバーで大丈夫だろうか……。



     ◇



「待て」


 急にウヌオさんが立ち止まった。


「エーテルの流れを感じる。近くに縦穴があるかもしれない」


 さすがベテランの冒険者。そんなことまでわかるんだ。


 下層へは縦穴を使っておりる人が多いらしい。縦穴はゆるくカーブしてるから、スベり落ちていくかたちになって、慣れてくると楽しいという話だ。


 ウヌオさんの言葉通り、近くで大穴を発見した。大きさは三メートル近い。


「こんなのに落ちたら、ひとたまりもありませんね」


 ルニーナさんが大穴をのぞきこむ。


「よし、ここから第四階層までいっきにおりるぞ」


「えっ!?」


 ルニーナさんが驚く。高いところから飛びおりるのは大丈夫だけど、まだ第四階層へ行くこと自体に不安がある。


「どうして第四階層とわかるんですか?」


「穴を見ればだいたいわかる。このぐらいの大きさだと、第四階層のワームが地上に向かって掘り進めたものだからな」


 確かに、ここまで大きいのは見たことない。第一階層で見かける縦穴なんか、腕が入るかどうかの大きさだし。


「さあ、行くぞ」


「ちょ、ちょっと待ってください。ここをおりるんですか?」


「あっという間だぞ」


「あっという間なのはかまいませんけど、この穴、先が見えないですよね?」


「せいぜい二、三百メートルくらいだって」


「……せいぜいの基準がまったく理解できません」


 二、三百メートルか……。ルニーナさんの気持ちはわかる。自分でもおじけづく深さだ。十メートルくらいなら、気軽に飛びおりられるけど。


「エーテルをシールドのようにまとえば、まったく痛くないし、むしろ楽しいぐらいだけどな」


「そんな芸当げいとうできませんよ!」


「そうか……。そうだったな」


 ウヌオさんが考えこむ。魔導士はただでさえ身体能力が低いから、戦士である俺たちのようなことはできない。


「だったら、俺が代わりにシールドを張るから、一緒に下りるぞ。一メートルくらいなら、他人の体でも問題なく守れる。一時期、何度もやっていたから安心してくれ。相手はもう少し体の小さいやつだったけどな」


 ルニーナさんがシブい表情をする。ウヌオさんの言葉を疑っているようだ。自分も疑った。他人を守れるシールドってなんだ。魔法だろうか。


「俺からもお願いします」


「……わかりました」


 俺が頭をさげると、納得してくれた。ウヌオさんがルニーナさんを抱きかかえる。


「しっかりしがみついてろよ」


 見てるだけでもドキドキするぐらい体が密着みっちゃくしているけど、それを気にしている様子はない。やっぱり、恋人同士なのだろうか。


「ダンツォ、お前は経験あるか?」


「いえ、穴をおりるのは初めてです」


「できるか?」


「はい、やれます」


「エーテルを全身にうすくまとう感じだ。油断してると服がやぶけたり、すり傷になるぞ。あと、着地の衝撃がかなり強い。着地部分に力を集中させ、全力で防御するんだ」


「わかりました」


 着地は問題ない。高いところから飛びおりる時は、無意識にやってしまうぐらいだ。


「俺が先に行く。十秒たってから飛びこめ」


 ウヌオさんが迷いなく穴に飛びこんだ。


「キャアアアア!」


 二人の姿はすぐに見えなくなり、ルニーナさんの悲鳴が穴の中で反響はんきょうしている。


 心の中でカウントする。十を数えてから、覚悟を決めて飛びこんだ。


 穴の中は意外と明るかった。けれど、ヘビのようにうねっているので先が見えない。


 どんどんとスピードがアップしていく。恐怖を感じるくらい速くなった。ただ、背中や足にこすれる感触があっても痛みはない。


 十秒ほどで強い光が見えてきた。目のくらむほどのまぶしい光――それにつつまれた瞬間、いきなり空中に投げだされた。


 目がくらんでいて前が見えない。体が回転している。ジタバタと手足を動かしても、どこにも当たらない。


 そうだ、全力で防御しないと。でも、どこを? 


 落ちてる方向が地面なのはわかる。けれど、風景が回転してるから、目がまわってわけがわからない。ヘタしたら頭からつっこんでしまう。


 死が頭をよぎって、思わず目をつむると、大きな腕に抱きとめられた。目を開けると、ウヌオさんの笑顔があった。


「まだまだ練習が必要だな」


 地面におろされてから、現状を確認する。かたわらでルニーナさんが腰をぬかしていた。

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