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伝説の勇者(レベル:マイナス39)  作者: mysh
勇者の蜂起編
29/49

勇者(脱獄犯)、北方への道案内を買って出る

     ◇ スニード



「それで、このあとはどうするつもりだったんだ?」


「ブルアルバーロへ向かって、他のギルドの仲間たちと合流する予定でした。自分は別行動で、人狼じんろう族の里へ行く予定だったんですけど」


「人狼族? 人狼族の里へ行って何をするんだ?」


伝令でんれいのためです。今日の作戦のこととか、次の作戦のこととか。近々、人狼族と共同で連邦相手に反乱を起こすことを計画していましたから」


「人狼族と冒険者が……。時代は変わったな」


 俺は個人的に仲良くしていたが、冒険者と人狼族はお世辞せじにも関係がいいとは言えない。なぜなら、縄張なわばり争いでたびたび衝突していたからだ。


監獄かんごくの襲撃はその前哨戦ぜんしょうせんで、アルト城に注意をひきつけ、連邦の戦力を分散ぶんさんさせるためでもありました。なのに……」


「さっきの話とつながるんだが、連邦は北方ほっぽうのケストハーロにもエーテルを精製せいせいするための施設しせつを作る予定らしい。それができれば、人狼族にとっても死活しかつ問題だ。そこで急きょタッグを組んで、連邦相手に反乱を起こすことになったんだ」


「それなら、これから北方へ行くのか?」


「わかりません。たとえ行けたとしても、何を報告したらいいか。俺たちが反乱に参加できるかどうかもあやしいですし」


「だったら、なおさら伝えに行かなきゃダメだろう。せっかくきずいた関係が台なしになるぞ」


「行きたいのはやまやまですけど……」


「ブルアルバーロへのルートをおさえられたんだ。それで、しかたなくこちらへ引き返してきた。外海そとうみに出られれば、なんとかなりそうだが」


 大陸は山脈さんみゃくによって内海うちうみ側と外海側に分断されている。ちなみに、気候が安定していて、海上かいじょう輸送が便利な内海側の都市のほうが圧倒的に繁栄はんえいしている。


「外海に出るルートなんて、いくらでもあるだろ」


 ダンジョンの入口はそこら中にあいていて、それがあめの目のようにのびている。そのすべてをおさえるなんて、とうてい無理だ。


「それはそうだが、連邦が手当たりしだいに入口をふさいでしまったから、ルートがかぎられているんだ」


「行き止まりが多くて、迷路みたいになってます。地上から向かっても、連邦が網を張っているかもしれませんし、山をのぼったり、インテラプラーモまで戻ると、約束の日までに間に合いません」


 ルートが星の数ほどあっても、肝心かんじんの出口がふさがれていたら元も子もないか。地上を進むと体力の消耗しょうもうが激しくなるし、くそっ、連邦は考えたな。


「俺たちは戦力の大半を失いボロボロの状態。おまけに、それを連絡することすらままならないときた。これで人狼族との信頼関係もおじゃんだな。何もかも終わったよ」


 バターロが肩を落とした。どうにかしてやりたい。俺に何かできるはずだ。


 ――そうだ。あるじゃないか。


「今、人狼族の里はどこにあるんだ? 昔と変わってないか?」


「ああ、おそらく。今のところ、あそこまでは連邦の手がおよんでいないからな」


 だったら行ける。人狼族はダンジョン内に里をつくる。そして、すべてのダンジョンは地下でつながっている。外海に出なくとも、直行ちょっこうする手段がある。



     ◇



「あきらめるのは早いぞ」


「何かさくがあるのか?」


「その前に北方へ渡るルートを教えてくれ」


「内海側のルートは連邦がことごとく封鎖ふうさした。ゆいいつ残されたルートも、やつらが厳重げんじゅうに警備している。そこを通るには衝突覚悟で突破とっぱするしかない」


「地上から船で渡る方法もありますが、港にも連邦の目が光っていますから、船を用意するだけでも大変です」


「その封鎖っていうのは、具体的にどうやってるんだ?」


出入口でいりぐちめてしまったり、細くなっているところを人の手で落盤らくばんさせて通れなくしていることもある。おもにドワーフをやとってやらせているという話だ」


 ドワーフか……。あいつもやらされたのかな。


「あと、新たな穴を作らせないために、モグラやワームを狩る専属せんぞくの部隊までいるぞ。そいつらはついでに冒険者狩りをしている噂もある」


 ご苦労なことだ。でも、それなら問題ないな。


「それなら大丈夫だ。道はある。あまり、ダンジョンをなめないほうがいい。ダンジョンは人間の手で管理できるものじゃないんだ」


「でも、実際……」


「人狼族の里へは若い頃から通いつめていた。だから、俺はいくつもルートを知っている」


「それは昔の話なんじゃないですか? 今は封鎖されているって言ってたじゃないですか」


 ルニーナが後ろから耳打ちしてきた。


「それは上層じょうそうの話だろ?」


「……?」


「入口付近や第二階層なら、天井の高さは三、四メートル。その程度なら封鎖することも可能だろう。だが、第四階層ならどうだ。穴の大きさは十メートル近くあるぞ」


「確かに……。確かにそうかもしれないが、第四階層を進むってことか……?」


「あの、俺はレベル的に第三階層でもつらいんです。きもだめし的な感覚で、一度行ったぐらいで、第四階層なんてとても……」


「俺も似たり寄ったりだ。第三階層はよく行くが、仲間がそろっていなければ危険を感じる」


「大丈夫だ、俺が一緒について行く。ちょっと事情があって、第四階層のほうがくわしいくらいなんだ。人狼族の里はダンジョン内にある。そこまでおりれば、直行することだって、外海側に出ることだって簡単だ」


 状態異常の攻撃をするモンスターは、第四階層のほうが少ない。リッチも絶対にそこまでおりてこない。だから、俺は第四階層のルートを好んで使っていた。


「ウヌオが強いのは知っているが……」


「失礼ですが、レベルはおいくつなんですか?」


 ダンツォに尋ねられた。口止めするように、ルニーナへ目配めくばせする。


「……レベルは39だ」


 二人とも沈黙した。不安に感じるのは無理もない。レベル39だと第四階層はギリギリのライン。若い頃の俺は、そのぐらいのレベルで行っていたが、安全を考えるなら、せめて50はほしいところだ。


 ルニーナは別の意味で黙っている。本当のレベルを隠すことに罪悪感はあるが、まだ秘密にしておきたい。


「俺を信頼してくれ。人狼族に大切なことを伝えなければいけないんだろ?」


「……わかりました」


「俺も一緒に行ったほうがいいか?」


「いや、バターロはこのことを他の仲間に伝えてくれ。用が済んだら、俺たちもブルアルバーロへ戻るつもりだ」


「わかった」


「あの……、私は?」


 ルニーナが不安げな声を上げる。


「ルニーナは俺と一緒に来てくれ」


「……ですよね」


 このあとバターロと別れ、三人でダンジョンの奥へ向かった。

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