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伝説の勇者(レベル:マイナス39)  作者: mysh
勇者の蜂起編
28/49

勇者(脱獄犯)、冒険者たちの苦境を知る

     ◇ スニード


 やったぞ。ルニーナをなんとか説得できた。これで百人力ひゃくにんりきだ。


 現状、ダンジョンをひとりで進むのは危険すぎる。だが、ルニーナさえいれば下層かそうまで行けるし、そこで結晶なり鉱石こうせきなりを取ってくれば、当面とうめんの資金を調達ちょうたつできる。


「それで、これからどうするんですか? いきなりゴルフポールドへ行くんですか?」


「とりあえず、ダンジョンをぬけて、安全な街へ行きたいな」


「安全な街というと……?」


「連邦の魔導士がいなくて、冒険者のたまり場になってる街がいいな」


「私、他の国のことはくわしくないんですけど、今どき、連邦に従っていない国なんてあるんでしょうか」


「そんな状況なのか。じゃあ、あいつらはなんなんだ?」


「そうそう、聞いたことあります。連邦に抵抗している冒険者ギルドがあるって」


「それだ! そいつらがいる街へ行こう」


「どこにいるのかなんて知りませんよ。風の噂を耳にしたくらいですから」


「さっきのやつらに聞いたほうが早いか……」


 でも、魔導士がウジャウジャいる場所に戻るのもな。いちおう脱獄だつごく犯だし、あいつらがまだいるともかぎらない。失敗したかな。


 その時、入口のほうから、足音と話し声が聞こえてきた。



     ◇



「誰か来るぞ」


 ルニーナを岩かげに連れこみ、そちらの様子をうかがう。どうやら二人組だ。逆光ぎゃっこうでよく見えないが、ローブを着た魔導士のシルエットではない。


 かすかに話し声が聞こえる。聞きおぼえがあった。現れたのは監獄かんごく相部屋あいべやだった男――バターロだった。


「おい」


 小声で呼びかけると、二人組が身がまえた。


「俺だ。監獄で一緒だったウヌオだ」


「おお、あんたも無事だったか」


「ああ、命からがらにな」


「バターロさん、この人たちは?」


 一緒にいた少年が声を上げる。年齢は十五歳くらい。こんな子供も戦ってたのか。


「俺たちを監獄から救いだしてくれた恩人だ。かなりの冒険者だぞ。俺とはくらべものにならないくらいにな。こいつはダンツォだ」


「ウヌオだ」


「よろしくお願いします」


「聞くまでもないと思うが、カーニバルはどうなった?」


「俺たちの負けだ。完膚かんぷなきまでにたたきのめされた。俺が仲間と合流した時には、あとの祭りだった」


「リーダーのフォルトさんを始め、多くの仲間が捕まりました。街から脱出した仲間も逃げのびられたかどうか……」


 ダンツォは声をふるわせている。


「はた目からも無謀むぼうな戦いに見えたが、最初から勝算しょうさんはあったのか?」


「冷血卿が誤算ごさんだった。レベルが80近いという話だし、今回の襲撃はあいつの留守るすをねらって決行したのに」


「大通りで暴れまわっていたあいつか」


「本来なら、あいつは北方ほっぽうへ向かっているはずだったんです。まんまと踊らされました」


「助けに来た側が捕まるという皮肉ひにくなことになってしまったが、ウヌオのおかげで、最悪の結果だけはまぬがれた。ありがとう」


「ああ。それより、まだ事情がのみこめてないんだが、良かったらくわしく教えてくれないか。協力できることがあるかもしれない」



     ◇



 二人から聞かされた話は衝撃的なものだった。


 連邦は自らの領地で、ダンジョンの封鎖ふうさや、通行の規制をするなどしていて、それに反発した冒険者たちとの衝突が、大陸全土(ぜんど)で巻き起こっているそうだ。


 現在は冒険者側の劣勢れっせいで、多くの冒険者ギルドが解散に追いこまれ、残っているものも弱体じゃくたい化の一途いっとをたどっているらしい。


「連邦は自らの手でダンジョンのすみずみまで『管理』する気だ」


「しかし、あれだけ広大なダンジョンを『管理』するって、途方とほうもないことを始めたな。思い上がっているとしか思えないが」


「実際、うまく行っているから厄介やっかいだ。ダンジョンは地下でつながっているから、やつらの領地でなくとも影響が出てくるからな。聞くところによれば、地道じみちに地図を作って、エーテルの流れを詳細に把握はあくしているらしい。敵ながら頭が下がるよ」


 俺の時代にも地図はあったが、主要なルートや狩場かりばを記しただけで、全体の一割もカバーしていないシンプルなものだった。まあ、未知みちの場所が多いからこそ、冒険が楽しかったんだけどな。


「連邦のせいで、第二、第三階層のモンスターが特に減りました。エーテルが上から流れて来なくなったんです。しかも、うろついてるのがアンデッド系の魔法しかきかないモンスターが多くて、戦士系の冒険者がレベルを上げる場所が、どんどんと少なくなっています」


「あそこのダンジョンもスライムだらけだったな。あれは意図いと的なものだったってことか」


 許せない。ますます見過ごせなくなった。大好きなダンジョンをメチャクチャにしやがって。


「しかし、連邦は何の得があって、そんな大がかりなことを始めたんだ? 冒険者への嫌がらせってわけじゃないよな」


「それも理由の一つかもしれませんよ。自分たちの戦力が相対そうたい的に上がるんですから」


「それはそうだが、モンスターが減少すれば、あいつらだって困るだろ?」


「一番の理由はあのリングを作るためだろう」


「……リング?」


「やつらはエーテルリングと呼んでいます。魔導士しか使えない、人工じんこうのエーテル結晶が付いているんです」


「人工のエーテル結晶……。来るところまで来たな」


 そういえば、ノルダピエードのダンジョンに、エーテルを利用したライトがあったな。あれと同じようなものか。


「リングがあれば、結晶がなくても力を回復できる。つまり、あいつらはモンスターを狩る必要がないんだ」


 そういうことか。あのレベル78の魔導士は、それがあるから全力で魔法をぶっぱなすことができたのか。おかしいと思った。


「そのリングとやらがあれば、地上でも力が使いたい放題ってわけか」


「そうです。作るのに結構な時間がかかるそうで、一部の連中しか使えないって話ですけどね」


「だから、やつらと地上で戦うのは得策とくさくじゃない。とはいえ、連中はめったにダンジョンにもぐらないけどな」


「それはどうやって作ってるんだ?」


「くわしくはわからないが、エーテルの精製せいせいとやつらは呼んでいる。魔法を使っているのは確かだ。第三階層あたりに施設を作るそうだ。それは大陸各地にあって一番有名なのがゴルフポールドにある。ダンジョンを『管理』してるのも、エーテル濃度の高い場所を作りだすためだ」


「それがあれば、モンスターがいなくなっても影響なしか……」


「ああ。リングのおかげで、連邦の魔導士とのレベル差が年々(ねんねん)開いてきている。なにせ、あいつらは地上にいながらレベル上げができるからな」


 地上でレベル上げか……。あきれて言葉が出ない。何の夢もないな。常識が完全にくつがえっちまった。


「フォルトさんは、俺たちの組織で唯一ゆいいつのレベル50超えだったのに、ああもあっさり負けるなんて……」


 ダンツォはこの世の終わりって顔をしている。かけてやる言葉が見つからない。

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