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伝説の勇者(レベル:マイナス39)  作者: mysh
勇者の蜂起編
27/49

勇者(脱獄犯)、ルニーナにすべてを告白する

     ◇ ルニーナ



「理由を話したら、ついて来てくれるか?」


「はい……。いえ、まちがえました。理由を聞いてから考えます」


 真剣な表情だったので、口がすべりました。


 彼がため息をつきます。そこまで言いたくないのでしょうか。見てるだけで、息がつまりそうです。


「実はな。俺ってさあ……、レベルが高いだろ?」


「はい……」


 ――ん? なんですか? ここまで引っぱって自慢ですか?


「確か、39でしたよね?」


「いや、39じゃないんだ」


「この間、私がこっそり計った時には39でしたよ」


「そう見えたかもしれないが、実際は違うんだ。だったら、ここでもう一度計ってみてくれ」


 私の見まちがえだと言うんでしょうか。レベル39と表示されたのをハッキリおぼえていますが、本人がそこまで言うなら、計り直すしかありません。


 〈解析〉の魔法を使用してから数秒後、思った通り、空中に39という数値が浮かび上がりました。


「やっぱり39ですよ。どこからどう見ても39です」


「39っていうのは合ってるんだが、それの前に棒が付いてないか?」


「棒……? はい、付いてます! 棒が付いてます!」


 確かに棒が付いています。なんですか、この棒。今まで見たことがありません。でも、もしかしたら毎回表示されてたかも……。ダメです、確信が持てません。


「俺のレベルはマイナス39なんだ」


「……マイナス? マイナスってどういうことですか?」


「マイナスっていうのは……、例えば、こっちがプラスだとすると、こっちがマイナスだ」


 彼がジェスチャーで説明します。ちなみに、最初のこっちが右手で、次のこっちが左手でした。


「マイナスの意味はわかりますよ!」


 すかさずツッコみます。説明が難しいのはわかりますけど、かえってわかりにくいです。


「私が聞きたいのは、レベルがマイナスになる理屈りくつです」


「第五階層にいる『神獣しんじゅう』を倒すと、褒美ほうびとして一つ願いをかなえてもらえるのを知ってるか?」


「はい」


 有名な話です。財宝だとか金貨だとか、物をもらうことはできないそうですが、かなり無茶な願いでもかなえてもらえるそうです。


「その時、レベル99を超えられるようにしてもらったんだ。それからレベルを上げ続けたんだけど、130くらいの時に減り始めるようになって、よく見たらマイナスになっていた」


「……」


 言葉がありません。『神獣』を倒したことすら、サラッと言ってますし。本当に『伝説の勇者』ってことですか?


 確か、レベル99が人類の限界と言われています。それに到達する人すらほとんどいないのに、それすら超えているって……。想像ができません。


 でも、それだけレベルが高いとなると、壁を壊したことや、城壁を飛びこえたことも説明がつきますか。


「本題はここからなんだが……、レベルがマイナスになってから、状態異常の攻撃に百発百中でかかるようになったんだ。そこら辺にいるトードの毒にもな。なにせ、レベルがマイナスだから、レベル1のモンスターより低いあつかいなんだ」


 確か、トードは第一階層にいる低レベルのモンスターで、毒液どくえきを吐くそうです。毒をもらうと気分が悪くなって、体力の消耗しょうもうが早くなります。


 納得がいきました。彼の言葉を信じない理由はありません。


 バケモノじみて強いのに、ダンジョンへ入ることに慎重だったり、連邦の魔導士をしつように警戒したり。これまでの彼のあやしい行動に説明がつきます。


「つまり、私に一緒に来てほしい理由は……?」


「ストレートに言えば、魔法でバリアを張れる仲間がほしいんだ。マヒしたり、石化した時に、白魔法で治療ちりょうしてもらえたら、さらに助かる」


 私のような魔導士が必要不可欠な存在ということですか。もし今の話が本当なら、そういう仲間がほしくなるのは当たり前ですね。


「ちょ、ちょっと待ってください。まさか、あなたは本当に『伝説の勇者』ってことですか……?」


「ああ。もちろん、昔は『伝説』なんて言葉が頭についていなかったけどな。この二十年間、石化させらていたんだ」


 つまり、あの広場にあった石像は彼自身で、言わば、さらし者にされてたってことですか。ヒドい話です。心の底から同情します。


「……石になられていた時は、どんな感じだったんですか?」


「うん、まあ……、石化時の意識はないから、二十年前が昨日のことのように一瞬だったかな」


「事情はわかりましたけど、私には無理ですよ。そんな人のサポートをするなんて。だって私、レベル6ですよ?」


「5じゃなかったか?」


「あの日、6に上がったんです」


「大丈夫だよ。お前のことは、俺が絶対に守るから。モンスターなんて、これっぽっちも怖くない。怖いのは状態異常だけだ」


「……今まではどうされてたんですか?」


「昔は魔導士の仲間がいた。でも、もうそいつには頼れない」


 彼がとたんに暗い顔をして、地面に目を落としました。怒りをおさえているような感じも受けます。


「代わりの魔導士が見つかるまででいいんだ」


 助けてあげたい気持ちはあります。なんだかんだで、彼には助けてもらい……、いやいや、原因を作ったのは全部彼ですね。私は迷惑をかけられたほうでした。


 それに、私にその役目がつとまるんでしょうか。〈バリア〉の魔法はあらゆる攻撃を効率的に防御できます。防御力の低い魔導士の特権とも言える魔法です。


 難しい魔法ではないので、しっかりおぼえてますけど、実戦で使用した経験はありません。


「今の俺にとっては、第二階層にいるモンスターですら危険な存在なんだ。トードに食らった毒はなおらないし、バットの金切かなきり声で耳は聞こえなくなるし、スネークにかまれたら全身マヒだし……」


 顔面を両手でおおいながら、たたみかけてきました。指のすき間から、こっそりこちらの反応を見ています。なんか、わざとらしいのでめてきました。


 やっぱり、やめようかなあ……。


「全身マヒの怖さは石化とひと味もふた味も違うんだ。意識だけはあるから、もしひとりでダンジョンに取り残されたりしたら……」


「わかりましたよ! 代わりの人が見つかるまでですよ」


「……本当か?」


「でも、お礼はきっちりもらいますよ。タダ働きは嫌ですからね。私だって生活があるんですから。きっと役人は辞めさせられると思いますし」


「わかってるよ」


「どんなものがもらえるのか、具体的に教えてください」


「じゃあ、国を一つ」


 たぶん、ふざけると思いました


「いりません。私には重すぎます。ヤギが背負えるぐらいのものにしてください」


「……なんでヤギ?」


「ヤギに背負わせて持ち帰るんです」


「そうか。だったら、ヤギが背負える重量のものを、なんでもプレゼントするよ」


「わかりました。あと、代わりの方が見つかったら、ちゃんとノルダピエードまで送り届けてくださいね」

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