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伝説の勇者(レベル:マイナス39)  作者: mysh
勇者の蜂起編
24/49

勇者(脱獄犯)、カーニバルの会場へ向かう

     ◇ スニード



 脱獄だつごくすることに決めた。もうここには用がないし、このままだとカーニバルに乗り遅れる。あっ気に取られていたルニーナを抱きかかえようとする。


「えっ、えっ!?」


 多少抵抗されたが、かまわず続けた。ルニーナにはついて来てもらわないと困る。


「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


 なぜか、バターロに引きとめられた。


「他の仲間も助けたいんだがいいか?」


 そういえば、仲間が山ほど捕まっていると言ってたな。ここにあけた穴では、俺たちしか逃げられないか。


 大勢おおぜいで脱獄したほうが、俺だって逃げやすくなる。やらない手はないな。さっきの半分以下の力で通路側の壁を破壊した。


「本当にスゴいな。こんなことができるやつは初めて見た」


「さすがに全部の壁を壊すのは面倒だ。カギを探して来てくれないか?」


「わかった」


 役人や看守かんしゅ遭遇そうぐうしたくないので、バターロに行ってもらう。カーニバルに参加しているのか、連中の姿はなく、無事にカギを発見したようだ。


 バターロが扉のカギを順々(じゅんじゅん)に開けていく。全部開けるのは時間がかかりそうだな。もう行ってもいいかな。


「ありがてえ」


「こっちも開けてくれ!」


 解放された囚人しゅうじんが次々とフロアを出て行く。騒ぎになってきた。一階にいる連中が気づいたかもしれない。


 バターロが他の仲間にカギを預け、こちらへやって来た。


「別のフロアにいる仲間も助けてくる」


「俺はカーニバルの見物けんぶつに行くよ」


「わかった。俺たちもすぐにかけつける」


 バターロと別れた。これだけの人数がいれば、一階の役人たちも怖くないだろう。俺は怖いので別ルートから行く。


 ルニーナのところへ戻ると、おとなしくベンチに座っていた。なかなかの精神力だ。こんな状況でも平常心をたもっている。


「俺たちも行くぞ」


 何も言わなかったが、行きたくないといった顔をしている。


 ただ、ルニーナの意思なんかどうでもいい。問答もんどう無用むように連れて行く。これから魔導士だらけのカーニバルに参加するんだからな。


 もう一度、ルニーナを抱きかかえようとする。


「わ、私はここで待ってますよ。意外と安全そうですし、外で何が起きているのかわからないから不安ですし。それと、今後のために、壁に穴があいた環境に慣れておきたいですから」


「何言ってるんだ。こんなところにいるほうがあぶないだろ?」


「それはそうですけど……、外は外で危険ですよね?」


「大丈夫だよ。俺が絶対に守るから安心しろ」


「……まあ、そこまで言うなら」


 実は、俺もお前に守ってもらいたいんだけどな。それはその時が来てから頼もう。


 ルニーナを抱きかかえて、さっきあけた穴から外へ出ようとする。


「ちょっと待ってください!」


「なんだ、自分でおりられるか?」


「そうじゃありません。よりによって、どうして飛びおりるんですか。他のみなさんと一緒に、階段を使って下におりましょうよ」


「下には役人がいるからな。それに、こっちのほうが断然だんぜん早いだろ?」


「ここは二階ですよね。いえ、普通の二階よりも高いです。三階くらいあります」


「二階も三階も四階も変わらないって」


 高低差こうていさ数百メートルあるダンジョンを渡り歩いてきた。このぐらいなら、階段を一段おりるのと変わらない。


「怖かったら目をつむってろ」


 さっさとおりれば、文句は出ないだろう。ちょうどいい位置にへいがある。あそこを足場に、いっきに敷地しきちの外へ出よう。



     ◇



「ほら、もう地面に着いたぞ」


 難なく敷地の外に着地し、目をつむっていたルニーナを地面におろす。


「これで私も脱獄犯ですか……」


 へこんでいるルニーナはほうっておいて、辺りを見まわす。こっちは監獄の裏手か。なんとなく見おぼえがある道だ。


 近くに役人は見当たらない。みょうに静かだ。ただ、監獄の向こう側は騒がしい。あいつらはうまくやっているのだろうか。


 とにかく、カーニバルを見に行こう。あっちのほうが一大事いちだいじだ。方角だけはわかっている。ルニーナの手を引いて、大通りのほうへ向かった。


「どこへ行くんですか!」


「カーニバルの会場だよ」


「あぶないですよ!」


 ルニーナの言葉に耳を貸さず、大通りへ出た。


 騒ぎになっていた方向を見る。人通りはないが、遠くに人影が見える。反対側を見ると、結構な人だかりができていたが、避難してきた住人という感じだ。


 とりあえず、行ってみよう。


 向かっている途中、前方で巨大な炎が上がった。〈火炎かえん〉の魔法だ。まだカーニバルは終わってない。


「今の魔法じゃないですか!」


「わかってるよ!」


 遠目とおめからでも並の魔法でないことはわかった。ある程度接近したところで脇道へ入る。すると、役人の後ろ姿が目に入り、とっさに近くの民家へ逃げこんだ。


「不法侵入ですよ」


「それもわかってる」


 建物と塀の間を慎重に進んで、炎が上がったほうへ向かう。別の方向から大声が聞こえたが、よく聞き取れなかった。


 小道こみちを一本渡って別の民家へ入った時、視界のはしで炎をとらえた。そのどころへ目を向けると、デカい建物をバックにして、門柱もんちゅうの上にたたずむ魔導士がいる。


 その魔導士は役人たちと異なるローブを着ていて、大通りのほうへ向かって、狂ったように〈火炎〉の魔法を乱発らんぱつしていた。


 ここからではそいつ以外の状況がわからない。場所を移動して、がきと塀のすき間から様子をうかがった。


「スゴい魔法ですね」


「ああ、地上ではめったにお目にかかれないレベルだ」


 冒険者側が劣勢れっせいなのはあいつが原因かな。俺ですら危険を感じる。今まで連邦を甘く見てたが、デカい顔をしているのはダテじゃないな。

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