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伝説の勇者(レベル:マイナス39)  作者: mysh
勇者の蜂起編
20/49

ダンツォ(反乱者)、城門を襲撃する

     ◇ ダンツォ



 救出作戦の内容はというと、まず二手ふたてに分かれたうちの片方が役所を襲撃しゅうげきする。役所にいる連中はたいしたことないし、そこ自体に用はない。


 目的は監獄かんごくの警備に当たる魔導士の注意をひきつけること。そいつらが役所へ加勢かせいに向かったところで、フォルトさんひきいる主力が手うすになった監獄を襲撃して、仲間を救出するという寸法すんぽうだ。


 その間、自分は東門で門番たちの相手をする。そして、そこで逃走とうそうルートを確保したまま、救出に成功した仲間の誘導ゆうどうや手助けを行う。


長丁場ながちょうばになるかもしれない。ダンツォ、力をセーブをしていけ」


 地上とダンジョンは勝手が違う。ダンジョンと同じノリで力を使うと、いざという時にエーテル切れを起こし、命取りになりかねない。


「そろそろだな」


 先輩が空を見上げながら言った。


 救出作戦の開始予定時刻がせまっている。東門そばの建物に身をひそめ、その時が来るのを待っていると、遠くでひとすじの煙がのぼっていることに気づく。


 作戦開始の合図だ。


狼煙のろしが上がりました!」


「よし。ダンツォ、準備はいいか。出てきたところをたたくぞ」


 遠くでたけびや悲鳴が上がる。攻撃が始まったんだ。そちらに気を取られていると、先輩にそでを引っぱられた。門番が異変に気づいて、外へ出てきたのだ。


 魔導士は魔法による遠距離攻撃を得意とする反面はんめん、接近戦にはからっきし弱い。セオリー通り、敵の油断をついてひと息にたたく。


 こちらへ背を向けた相手に、先輩が音もなく近づいていく。それをサポートするため、自分もあとに続いた。


 ある程度接近したところで、先輩はいっきにつめ寄り、背後から飛びかかった。あざやかにしとめて、門番を取りおさえた。


「向こうにもいます!」


 小屋こやからもう一人出てきた。まだ相手とは距離がある。だけど、すでに攻撃態勢をととのえている。とっさに物かげに飛びこむと、敵の攻撃――〈火炎かえん〉の魔法が視界に広がった。


 先輩も建物のかげに逃げこんだ。ギリギリかわしたように見えたけど、片手をおさえながら表情をゆがめている。魔法がかすったんだ。


 敵が右腕をかまえたまま、慎重な足どりで現れる。先輩のほうへ向かっていく。こっちには気づいていない。俺がやらないと。


 先輩とアイコンタクトをかわす。俺が動きだしたと同時に、注意をひくために、先輩が敵の前におどり出た。


 自分は全速力で敵に向かっていき、横っぱらに渾身こんしんのけりを入れた。エーテル特有とくゆうのグニャッとした感触があった。


 敵が地面をころがる。俺は馬乗りになって、さらに頭をなぐりつけた。体をガードするエーテルの感触がなくなったので、手をとめた。敵が失神しっしんした証拠だ。


「よくやった、ダンツォ」


 先輩と一緒に敵をロープでしばりつけて、右手を布でグルグル巻きにする。魔導士は手のひらの刻印こくいんをふさがれると、魔法が使えなくなるからだ。


 俺たちも連邦もいたずらに命を奪うことはしない。たとえそれが、どんなに憎い敵だろうと。連邦との間にはそういう暗黙あんもくのルールがある。


 それに敵を捕虜ほりょにできれば、捕まっている仲間を解放させるための取引材料に利用できる。



     ◇



 狼煙が上がってから、三十分ぐらいたった。


 捕まえた門番二人は小屋に押しこんだ。今のところ、新手あらてが現れる様子はない。あとは作戦の成功を祈りながら、ここを死守ししゅするだけだ。


「もう監獄の襲撃は始まっただろうか」


「ちょっと様子を見に行ってもいいですか?」


 先輩に断ってから、役所が面する大通りへ向かうと、すぐに魔導士たちの姿が目に飛びこんだ。あわてて身を隠して、へいのかげから様子をうかがう。


 魔導士たちがこちらへ来る様子はない。仲間たちの姿もない。監獄があるのは役所のさらに先だから、もうそちらへ向かったのだろうか。


 その時、二度、三度と〈火炎〉の魔法がまたたいた。仲間らしき二人が、それから逃げるように大通りを横断おうだんしていく。ちょうど役所の前あたりだ。


 追撃ついげきの炎がほとばしった。百メートル近く離れていてもハッキリと見えるほど、威力がケタはずれだ。あんな魔法を使うやつがいるのか。先輩に知らせなきゃ。


「まだ役所の前で戦ってます」


「そうか……、苦戦してるのかもな」


「〈火炎〉の魔法が飛びかってました。あんなすさまじい炎は初めて見ましたよ」


「……みょうだな。やつらの主力は北方ほっぽうへ向かったはずだが」


 俺たちエスペロと人狼じんろう族が、北方で反乱を起こすというのは公然こうぜんの秘密。それに対応するため、やつらが北方へ向けて出発したのが二日前だ。


 俺たちはこの目でそれを確認した。それから、やつらがここに戻ってきた様子はないし、ブルアルバーロ付近で目撃したという報告が、今朝届いている。


「マスタークラスが一人、二人残ってたのかもな」


 マスタークラスとはレベル50以上ということ。だいたい、ギルドマスターをまかせられるレベルなので、そんな呼び名がついている。


 レベル50以上ならフォルトさんと同等だ。ここを離れて加勢に行くべきか、先輩と話し合っていると、仲間の一人が近くの脇道から飛びだしてきた。


「おい、どうした!」


 こちらに気づいた仲間がかけ寄ってくる。肩で息をしていて、かなり動揺している様子だ。


「ひとりなのか?」


「ああ、仲間とははぐれた。みんなりになっちまった」


「何があったんだ?」


冷血卿れいけつきょうだ。冷血卿がここに残っていやがった」


「冷血卿が……?」


 冷血卿――ミロの領主りょうしゅであり、連邦に五人いる将軍の一人で、五大将ごたいしょうなんて呼ばれてる。こいつの手によって、どれだけの仲間が捕まったかわからない。


「冷血卿は北方へ向かったんじゃなかったんですか?」


「ああ、やつは北方へ向かった。だが、今はここにいる。もしかしたら、全部俺たちを誘いこむためのワナだったのかもな」


「そんな……。卑怯ひきょうなマネを」


「まあ、卑怯なのはおたがい様だけどな」


 ふいに先輩が東門を振り返る。


「まさか……」


 そうつぶやいた後、門をくぐりぬけて、街の外の様子をうかがいだした。俺もそちらへ向かった。


「どうしました?」


「大当たりだ。外で待ちかまえているのがいる」


 一緒になってのぞきこむ。岩かげに隠れている魔導士が二人いる。それ以外は発見できなかったけど、あの二人だけという確証かくしょうはない。


「どうしますか?」


「仲間の救出どころじゃなくなったな。それどころか、俺たちがここから無事に脱出できるかも、あやしくなってきた。とにかく、このことを仲間たちに知らせよう」

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