ダンツォ(反乱者)、城門を偵察する
新規登場人物
ダンツォ:エスペロ(反乱ギルド)のメンバー
ダンツォはスニード、ルニーナの次に出番の多いキャラです。
ダンツォ視点の話が三回続きます。
◇ ダンツォ
とうとう連邦に反旗をひるがえす日を迎えた。
今までも、連邦とこぜり合いをくり返してきたけど、俺たちエスペロが一丸となって立ち上がるのは、今回が初めて。
ただ、これは前哨戦にすぎない。今日決行する作戦は、あくまで監獄にとらわれた仲間たちの救出が目的だ。
「ダンツォ。お前がここにいるってことは、レベル20を超えたってことだな?」
「はい」
「そうか、よくがんばったな。お前もようやくルーキーの仲間入りか。そして、今日がお前にとって初陣となるわけか。いきなりの大舞台だな」
「覚悟してます」
俺は十六歳になったばかりで、まだギルドでは下っぱ。レベルの低いやつは足手まといになるからと、最初は作戦への参加を認めてもらえなかった。
だけど、俺は参加を熱望した。その思いが届いたのか、一ヶ月ほど前、リーダーのフォルトさんから、こんな条件を出された。
『作戦へ参加したいのなら、当日までにレベル20を超えること。わかったな?』
この日のため、がむしゃらにレベルを上げ、ギリギリで目標を達成した。
「だが、無茶はするなよ。お前に与えた役目は人狼族への伝令だ。それがメインであることを忘れるな」
作戦への参加――アルト城への突入を許可されたとはいえ、前線に立たせてはもらえないだろう。
リーダーのフォルトさんを中心とする俺たちのギルドは、エスペロを構成する三つの冒険者ギルドのうちの一つ。その中でもっとも人数が多く、中心的な役割を果たしている。
うちのギルドはレベル20、30台のメンバーが大半だけど、フォルトさんは50を超えている。この辺りでフォルトさんを知らない冒険者はいない。自分にとってもあこがれの存在だ。
昔はレベル50超えの冒険者がめずらしくなかったらしいけど、連邦のおかげで少なくなった。だから、エスペロの中にも数えるほどしかいない。
本来なら、俺たちは連邦に歯が立たないんだけど、アルト城に駐留していた部隊の主力は、今は北方のケストハーロへ向かっていて留守。
何を隠そう、そこはエスペロと人狼族が、一週間近く後に襲撃を予定している場所。実際、俺たち以外の二つのギルドは、すでにそちらへ向かって攻撃準備を整えている。
情報をつかんだ連邦は、そちらへ部隊を急行させた。その情報は嘘じゃない。だけど、先に戦場となるのはこのアルト城だ。俺たちは連邦の裏をかいたってわけ。
◇
自分は急きょ作戦に参加することになった。新たに与えられた役割は逃走ルートの確保。地味といえば地味だけど、門番との交戦が絶対にある。気を引きしめないと。
仲間が戦ってるのを見ていたことならあるけど、連邦の魔導士とコブシを合わせた経験はない。いや、魔導士はコブシを合わせたりしないか。
まあ、なんとかなると思う。スライムとかウィルオーウィスプとか、魔法を使うモンスターとなら、数えきれないほど戦ってきた。まあ、倒すの面倒くさいから、ほとんどスルーしてるんだけど。
「ダンツォ、まずは東門を確認しに行くぞ」
「わかりました」
一緒に行動する先輩メンバーと、アルト城の東門へ向かう。ここは街の中心にある監獄からは遠い。街道へ出る南門と違って、門が小さくて警備が手うすだ。
さらに、外へ出てすぐのところに、ダンジョンの入口が複数あるから逃走に困ることはない。元々、冒険者のために作られた門らしくて、今は利用者が少ないそうだ。
「見張りはいないな」
「普段からこうですか?」
「そうだ。まあ、門の脇にある小屋に、たいてい一人、二人いるんだけどな」
数週間前から、仲間が市街に潜伏していたので、内情は把握している。一緒に行動する先輩もその一人だ。
そもそも、ここは数年前まで俺たちのギルドのホームだった。なのに、ここを直轄地とした連邦の手によって、あろうことか、冒険者を収容する監獄の街へ変えられてしまった。
この街を冒険者の手に取り戻す。それこそ、俺たちがエスペロを結成した動機。冒険者の歴史をロクに知らない、若造の自分が言うセリフじゃないけど、今日こそ連邦に一矢むくいてやる。
◇
次に南門の偵察に向かった。
街道に出る門だけあって、人通りが多く、馬車がちょくちょく通りぬけて行く。目の届く範囲だけでも門番が五人いる。東門とは大違いだ。
「結構な数ですね。全員魔導士なんですか?」
「よほどの雑用でないかぎり、連邦の役人は魔導士だと考えたほうがいい。とはいえ、レベルの低いやつは当然まじっている。レベルが高ければ、色の違うローブを着ているんだが……、あの中にはいないな」
俺たちのような魔法を使えない戦士の一族を、連邦が雇ったりしないか。目ざわりな存在くらいにしか考えていないだろう。
「こっちもいつも通りといえば、いつも通りか」
「俺たちの動きに気づいてないってことですか?」
「そうだといいが……。警備はいつも通りだが、やはり、逃走ルートにするのは無理があるな。いったん報告に戻るぞ」
もし東門が通れなくなれば、南門から外へ脱出するしかない。その時はあいつらと戦うことになるのか。血がたぎってきた。やってやるぞ。