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伝説の勇者(レベル:マイナス39)  作者: mysh
勇者の蜂起編
19/49

ダンツォ(反乱者)、城門を偵察する

新規登場人物

ダンツォ:エスペロ(反乱ギルド)のメンバー


ダンツォはスニード、ルニーナの次に出番の多いキャラです。

ダンツォ視点の話が三回続きます。

     ◇ ダンツォ



 とうとう連邦に反旗はんきをひるがえす日を迎えた。


 今までも、連邦とこぜり合いをくり返してきたけど、俺たちエスペロが一丸いちがんとなって立ち上がるのは、今回が初めて。


 ただ、これは前哨戦ぜんしょうせんにすぎない。今日決行(けっこう)する作戦は、あくまで監獄かんごくにとらわれた仲間たちの救出が目的だ。


「ダンツォ。お前がここにいるってことは、レベル20を超えたってことだな?」


「はい」


「そうか、よくがんばったな。お前もようやくルーキーの仲間入りか。そして、今日がお前にとって初陣ういじんとなるわけか。いきなりの大舞台おおぶたいだな」


「覚悟してます」


 俺は十六歳になったばかりで、まだギルドでは下っぱ。レベルの低いやつは足手あしでまといになるからと、最初は作戦への参加を認めてもらえなかった。


 だけど、俺は参加を熱望ねつぼうした。その思いが届いたのか、一ヶ月ほど前、リーダーのフォルトさんから、こんな条件を出された。


『作戦へ参加したいのなら、当日までにレベル20を超えること。わかったな?』


 この日のため、がむしゃらにレベルを上げ、ギリギリで目標を達成した。


「だが、無茶むちゃはするなよ。お前に与えた役目は人狼じんろう族への伝令でんれいだ。それがメインであることを忘れるな」


 作戦への参加――アルト城への突入とつにゅうを許可されたとはいえ、前線に立たせてはもらえないだろう。


 リーダーのフォルトさんを中心とする俺たちのギルドは、エスペロを構成する三つの冒険者ギルドのうちの一つ。その中でもっとも人数が多く、中心的な役割を果たしている。


 うちのギルドはレベル20、30台のメンバーが大半たいはんだけど、フォルトさんは50を超えている。この辺りでフォルトさんを知らない冒険者はいない。自分にとってもあこがれの存在だ。


 昔はレベル50超えの冒険者がめずらしくなかったらしいけど、連邦のおかげで少なくなった。だから、エスペロの中にも数えるほどしかいない。


 本来なら、俺たちは連邦に歯が立たないんだけど、アルト城に駐留ちゅうりゅうしていた部隊の主力しゅりょくは、今は北方ほっぽうのケストハーロへ向かっていて留守。


 何を隠そう、そこはエスペロと人狼族が、一週間近く後に襲撃を予定している場所。実際、俺たち以外の二つのギルドは、すでにそちらへ向かって攻撃準備をととのえている。


 情報をつかんだ連邦は、そちらへ部隊を急行させた。その情報は嘘じゃない。だけど、先に戦場となるのはこのアルト城だ。俺たちは連邦の裏をかいたってわけ。



     ◇



 自分は急きょ作戦に参加することになった。新たに与えられた役割は逃走とうそうルートの確保。地味じみといえば地味だけど、門番との交戦こうせんが絶対にある。気を引きしめないと。


 仲間が戦ってるのを見ていたことならあるけど、連邦の魔導士とコブシを合わせた経験はない。いや、魔導士はコブシを合わせたりしないか。


 まあ、なんとかなると思う。スライムとかウィルオーウィスプとか、魔法を使うモンスターとなら、数えきれないほど戦ってきた。まあ、倒すの面倒くさいから、ほとんどスルーしてるんだけど。


「ダンツォ、まずは東門を確認しに行くぞ」


「わかりました」


 一緒に行動する先輩メンバーと、アルト城の東門へ向かう。ここは街の中心にある監獄からは遠い。街道へ出る南門と違って、門が小さくて警備が手うすだ。


 さらに、外へ出てすぐのところに、ダンジョンの入口が複数あるから逃走に困ることはない。元々(もともと)、冒険者のために作られた門らしくて、今は利用者が少ないそうだ。


見張みはりはいないな」


「普段からこうですか?」


「そうだ。まあ、門の脇にある小屋こやに、たいてい一人、二人いるんだけどな」


 数週間前から、仲間が市街に潜伏せんぷくしていたので、内情ないじょう把握はあくしている。一緒に行動する先輩もその一人だ。


 そもそも、ここは数年前まで俺たちのギルドのホームだった。なのに、ここを直轄ちょっかつ地とした連邦の手によって、あろうことか、冒険者を収容しゅうようする監獄の街へ変えられてしまった。


 この街を冒険者の手に取り戻す。それこそ、俺たちがエスペロを結成した動機どうき。冒険者の歴史をロクに知らない、若造わかぞうの自分が言うセリフじゃないけど、今日こそ連邦に一矢いっしむくいてやる。



     ◇



 次に南門の偵察ていさつに向かった。


 街道に出る門だけあって、人通りが多く、馬車がちょくちょく通りぬけて行く。目の届く範囲だけでも門番が五人いる。東門とは大違いだ。


「結構な数ですね。全員魔導士なんですか?」


「よほどの雑用ざつようでないかぎり、連邦の役人は魔導士だと考えたほうがいい。とはいえ、レベルの低いやつは当然まじっている。レベルが高ければ、色の違うローブを着ているんだが……、あの中にはいないな」


 俺たちのような魔法を使えない戦士の一族を、連邦がやとったりしないか。目ざわりな存在くらいにしか考えていないだろう。


「こっちもいつも通りといえば、いつも通りか」


「俺たちの動きに気づいてないってことですか?」


「そうだといいが……。警備はいつも通りだが、やはり、逃走ルートにするのは無理があるな。いったん報告に戻るぞ」


 もし東門が通れなくなれば、南門から外へ脱出するしかない。その時はあいつらと戦うことになるのか。血がたぎってきた。やってやるぞ。

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