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伝説の勇者(レベル:マイナス39)  作者: mysh
勇者の復活編
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勇者(石像)、砂浜で拾われる

視点は基本的に一人称で、ヒロインやサブキャラにも移ります。

◇マークの横に書かれている名前がそうです。


ルニーナ:ヒロイン

     ◇ ルニーナ



 ちょっと、みなさん聞いてください。


 私、拾いました。拾ってしまいました。


 ――『伝説の勇者』を。



     ◇



 この日、私は連邦れんぽうからの定期船を出迎でむかえるため、今日も朝から浜辺に足を運びました。定期船は遅れて到着するのが恒例こうれいとなってますが、今回は五日も遅れています。


 その途中で、この石像を発見しました。どこから流れてきたのか、砂浜に打ち上げられていました。


 不思議なかたちの岩がころがっている。始めはそのぐらいの認識でした。ちょっと歩けば、ゴツゴツとした岩場が広がっています。誰かがそこの岩をイタズラで運んだのでしょう。


 そう勝手に結論づけて、近くを通りかかっても、そのまま通りすぎようとしたんですけど、よく見たら人のかたちをしています。左肩からつっこむように、横向きの状態で砂にうまっています。


 そばまで行って、石像をあお向けにしてみました。


 顔のパーツから服装まで、こまかくりこまれています。さらに、その姿に見おぼえがありました。


 まちがいありません。これはまぎれもなく『伝説の勇者』の像です。目にした瞬間、数年前の記憶がよみがえりましたから。



     ◇



 あれは二年前のことです。かけだしの役人だった私は、研修という名目めいもくで、連邦の首都ゴルフポールドを訪れました。


 一ヶ月にわたる航海のすえ、港に到着。初めての大都会に興奮しまくっていた私ですが、そんな時に目撃したのが、この石像とそっくりな『伝説の勇者』の像です。


 たくさんの人でにぎわう広場の中央で、その像は港を訪れた人たちを出迎えるように、または威圧いあつするようにたたずんでいました。


 その時の光景は、今でも目に焼きついています。これから命がけの決戦にのぞむような、悲壮ひそう感あふれるまなざしに、しばらく見とれていましたっけ。


 間近で見ると、多少印象が異なります。鬼気ききせまる表情に変わりないのですが、勇敢さというより、どこか怒りや憎悪ぞうおのようなものを感じます。


 年齢は私より上だと思います。三十歳ぐらいでしょうか。ボサッとした髪の作りこみがハンパないです。かなり手間てまがかかっていますよ、これ。


 体のほうへ目を移すと、こちらも精巧せいこうな作りで感心しました。まるで、本人のかたを取って作ったかのようです。


 冒険者らしく比較的軽装(けいそう)で、重そうな防具は見当たりません。胸からお腹にかけての網目あみめくさりかたびらでしょうか。


 視線を足先へ移すと、とんでもないことに気づきました。



     ◇



 くるぶしの辺りからつま先にかけて、石化が解けています。


 半魚人はんぎょじんならぬ半石人でしょうか。それとも、生身なまみと見まちがえるほどの最先端の技術で作られた石像でしょうか。


 ――冗談は置いといて。


 未完成だとしても、生足なまあしが見えてるのはおかしいですね。もう一度頭からつま先まで見渡してから、現状を整理します。私がみちびきだした答えはこうです。


 この方は『伝説の勇者』ごっこをするため、服装とポージングをマネした後、知り合いに〈石化〉の魔法をかけてもらった。そして、石化が解けないうちに砂浜に放置ほうちされた。


 かわいそうです。気の毒です。せっかくがんばったのに、これではむくわれません。


 でも、〈石化〉の魔法が使える人なんて、この町にいましたっけ。連邦の方は帰国されましたし……。モンスターの手を借りたんでしょうか。


 とにかく、元に戻してあげましょう。


 さいわいにも、私は〈治癒ちゆ〉の魔法が使えます。しかも、町で白魔法を使えるのは私だけ。これも何かのめぐり合わせです。運命的なものさえ感じました。


 ただ、石化を解くのは初めての経験です。うろおぼえでしたし、強力にかけられた魔法だったのか、これがなかなかガンコで、解けそうで解けませんでした。


 結局、全身の石化を解くまで、一時間近くかかりました。

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