外の世界
俺らは外の世界に出た。
周りに町のような場所はなく、ただただ野原が広がっていた。
「すみません」
後ろから声がした。
後ろを見ると、タックルをせずについてきた豚だった。
「お前、計画理解してたか?」
カジナが問いかける。すると
「私も人間だったんです」
彼女はそういった。
俺は驚いた。カジナ以外にも人間だったやつがいるなんて...
彼女は人間だったころの記憶を割と鮮明に覚えているらしく、日本人で、名前は「ココミ」だそう。
ココミはトラックに引かれたあと、目が覚めたら豚に生まれ変わっていたらしい。
ということは...
俺とカジナも死んだということになる。
俺はショックだった。豚に生まれ変わってから、人間に戻ることだけを希望にしてきたが、死んだあとだったらもう戻るもなにもないのではないか。そういう不安がこみ上げてくる。
カジナも同じような表情をしていた。
しかし、カジナは黙ったまま歩き始めた。
「なあ、カジナ。どこに向かっているんだ?」
そう聞いてもカジナは答えなかった。
30分ほど歩いただろうか。
町が見えてきた。
その町は豚をペットとして扱っている珍しい町だった。
三匹は町に入った途端捕獲された。
そして、小さなかごに入れられ暗闇のなか放置された。
長い時間暗闇のなかにいた。
突然かごにかけられていた布が剥がされ、光が入ってきた。
「まぶしっ」
そういいながら目を開けると、小綺麗なペットショップに三人は運ばれていた。
「ペットショップ!?」
「ああ、そのようだな。俺らは人間にかわれるのか...?」
不安の表情を浮かべる三匹。
そこに少し金持ちそうな女が入ってきた。
「なるほどぉ。みんなかわいい豚ちゃんですねえ。あっ、この子かわい~。あっ、この子もかわい~。」
そう言いながらその女は三匹の前で止まった。
「なにこの三匹。かわいくない!」
そういい放ち、どこかにいってしまった。
それを見ていた青年が、三匹の前で
「お前らは充分かわいいぞ」といい、三匹のかごをレジに持っていった。