仲間
昨日の夜、隣の豚小屋に潜り込んでから、疲れですぐ眠ってしまったらしい。
朝起きると、何匹かの豚に囲まれていた。
「オマエ、マリア、バレタ」
「ダケド、イキテル、スゴイ」
「スゴイ、スゴイ、スゴイ」
と、語彙力のない掛け声が聞こえてきた。
恐らく俺がマリンに脱走したことがバレたのに生きてるのがすごいと思っているのだろう。
しかしなんだ、リタリアはしっかり日本語も喋れて、さらには脱走計画まで計画してくれたのに、ここの豚は知能が低いな。
そう思っていたところ、薄汚れて、痩せ細った豚が話しかけてきた。
「おい、お前さんよ。なんで豚小屋を脱走したんや」
そう語りかけてきた。
その豚はしっかり日本語も喋れていて、痩せ細っていたが貫禄があった。
こいつになら話していい。本能がそう言った。
「な、なあ。もし、俺が元々人間だって言ったら信じるか?」
そう言ったとたん、痩せ細った豚が態度を変えた。
「うるさい!黙れ!もう話しかけるな!」
さっきまで優しそうだった目が急に厳しい目に変わった。
そして、その豚は俺に襲いかかってきた。
「まて!」
そこに、また一匹豚が割り込んできた。
その豚は薄汚れてはいるが、体型は普通であった。
ただ、目に傷があった。
「お前、もともと人間だったって、本当か?」
「あ、ああ......」
その豚は、一度俺を眺め、笑みをこぼした。
「話がある。ついてこい」
彼はそう言い小屋の端にいった。
「話ってなんだ?」
恐る恐る俺がそう聞くと彼はとんでもないことを口にした
「俺も昔、人間であった」
それを聞いて俺は心臓が出そうなほど驚いた。
それと同時に、高揚した。