古ぼけた時計
ノトリノの研究所「クライアントα」には、興味深いものが沢山あった。
カジナ「なあ、そう言えば、名前の由来ってなんだ?」
ココミ「確かに。あっちはβでこっちはαだったけど、なにか意味はあるのかしら?」
ノトリノ「ああ...。普通に順番だよ。こっちが先にできたからα(アルファ)あっちが後にできたからβ(ベータ)ってだけだ」
俺「え、じゃあノトリノさんの方が先輩なんですか?」
ノトリノ「いや、俺は二代目だ。先代はおかしな人だったよ。でもその不思議な魅力に俺は釣られたんだけどな」
そんな話をしていると、不思議な分厚い本を見つけた。
俺「この本はなんですか?」
ノトリノ「それは...。確か先代の本だな。読んでみてもよく分からないけど、一応捨ててないだけだ」
サンク「ちなみに、その先代は今どこに?」
ノトリノ「もうひとつの施設、〈クライアントΩ〉にいる。まあ何してるかはわからないがな」
サンク「ちなみに名前はなんだ?」
ノトリノ「質問が多いな。なんでそんなこと聞きたがる」
サンク「いや...。やっぱりいい。おいベスト、その本を見せてくれ」
サンクは不自然に話題を変え、俺が持っている本を取り上げた。
サンク「...」
サンクはさっきと雰囲気が変わった。
カジナ「おい、なんか書いてあるのか?」
サンク「おいおっさん。コレ、どういうことだ?」
ノトリノ「おいおい、まだおっさんって年頃じゃないぞ...。どれ見せてみろ」
今気づいたが、ノトリノの目の下にはくまがある。何日も寝てなさそうだ。
サンク「おい、こんなの研究者なら読めるはずだぞ」
ノトリノ「お前まさか亜人か?」
サンク「いや、獣人だ」
ノトリノ「なに? 獣人だと?」
獣人とは? あの本にはなにが書いていたのか。
話についていけない。
ノトリノ「お前、名前なんだ」
サンク「サンクだ」
ノトリノ「やっぱりな。ちょっと着いてこい」
そう言い、サンクとノトリノは奥の部屋に行った。
しかし、すぐに戻ってきた。
ノトリノの手には古い時計があった。
ノトリノ「お前ならわかるだろう。お前の本当の父親の時計だ」
サンク「いや..どっちかと言うと、偽物の父だな」
まじで話に着いていけない
サンク「オレの本当の父は俺が殺した」
ノトリノ「...! お前がそこまで力を付けていたとはな」
サンク「......」
ノトリノ「お前は、俺と先代の最高傑作の子供だ。俺と先代はお前の父を作り出した時、喜びが止まらなかった。なのにお前の父ときたら...。」
サンク「施設を抜け出し、研究員を何人も殺した。だろ?」
ノトリノ「ケッ、父親から聞いてんのか。まあいい、さっきの本に書いてあったお前の父の作り方。よくそれがわかったな」
サンク「それはもうとっくに学校で教わっている」
ノトリノ「学校? それはどこのだ」
サンク「ギーシャのだ」
ノトリノ「ギーシャか。そう言えばそうだったな。お前の父親はあそこの幹部だったな」
サンク「もうこの話はいい。時計の話を聞かせろ」
ノトリノとサンクはずっと会話をしている。
俺たちを差し置いて。
どうやら、サンクが倒した父は、ノトリノとその先代が作り出したものらしい。
ノトリノ「この時計はな、お前とお前の父の体内に埋め込まれている。お前も見たことはあるだろう。父親の体内時計を」
サンク「ああ。だが、オレのにはない」
ノトリノ「それが、あるんだよ。この時計はお前の〈なにか〉のタイムリミットだ。つまりこの時計の針が12:00を指したとき、お前の体になにかが起こる」
サンク「そんなの聞いたことがない。まずオレの体にはそんな時計なんてない」
ノトリノ「いや。体内時計だぞ? 今は体内にあるんだ。そのうち外側に出てくる」
サンク「...」
ノトリノ「信じないならそれでいい。いずれ分かるからな。お前は普通の人間と違えば、亜人とも違う。特別な存在なんだ」
サンク「特別と言えば聞こえはいいがな」
ノトリノ「そうネガティブになるな。お前は父親が悪に染まったにもかかわらず、善の道を貫いた。これからも正しい道を行け」
サンク「正しい道なんて誰にもわからない。俺はそんな道なんてないと思っている」
ノトリノ「まあ考え方は人それぞれだ。あと俺らだけで話していると、この豚達が可哀想だからな」
カジナ「そうだぞ。とても退屈だった」
カジナはそういいあくびをする。
ノトリノ「よし、じゃあお前ら、役場に言ったらどうだ?」
俺「役場?」
ノトリノ「ああ、とても不思議なものがいるぞ! なにか冒険の手がかりになるかもな...」




