豚小屋から豚小屋へ
マリンの目をいかにかいくぐるか。
それが隣の豚小屋に行く作戦のなかで最も大切な部分である。
抜け出す方法は
・二回目のエサやりの間、すこしの時間豚小屋の鍵が開いている時間がある
・その時間の間に脱出するが、その間恐らくマリンが近くにいる。
・そのマリンの近くに石を投げる
・マリンが石を広いにいってる間、となりの豚小屋に移動する。
「という感じの計画だ。だが、成功率はかなり低い」
「低くても充分だ。今日中に作戦を決行する」
話しかけてくれた豚は脱出計画も俺のために作ってくれて、とても優しいやつだった。
「ところでお前、名前は?」
「名前は、リタリア」
「リタリア?豚にしてはいい名前だな」
「......。」
18:00 二回目のエサやり
ついにこの時がきた......!
マリンが入ってくる。
マリンは豚にエサをやる。いま気づいたが、エサやりのしかたがとても雑だ。
マリンは豚小屋をささっとでで、少し離れた椅子に座り、豚達がエサを食べているか見ているようだった。
チャンスはいましかない!
リタリアが石を投げた。
脱走の合図だ。
俺は必死に隣の豚小屋に駆け込んだ。
だが。
見つかった。完全に終わった。
マリンは怖い顔をしていた。
人間の中ではかわいい顔をしていたが、豚からみたらとても巨大で恐ろしかった。
完全に出荷された。そう思ったときだった。
マリンは俺を持ち上げ、となりの豚小屋に入れた。
「もう、脱走しちゃダメでしょ!」
そういい鍵を閉め、どこかに行ってしまった。
その瞬間、ほんとに焦っていた自分がバカらしく思えてきた。
よく考えれば、豚が脱走しただけで殺しはしない。
ましてや出荷なんて、ちゃんと出荷する時期が決まっているものだ。即決で出荷なんてしない。
隣の豚小屋に入れたのは、おそらくただ間違えただけだろう。
そう思ったとたんに、気が楽になった。
そうして俺は、隣の豚小屋に入ることに成功した。