追い込み(3)
壁のわずかな隙間から光が差し込んできている。
それは希望のようだった。ベスト達から見たら、自分たちを勇気づけてくれる希望であったが、それと同時にゼクロにとっても希望となった。
ゼクロ(こんな所で諦めては....おれの人生が...ッ。目標が...!)
ゼクロは幼き日からスーパーヒーローに憧れた。
ゲルフィ達と行動を共にし、自分もいつかは彼らのようになれるだろうと思っていた。
しかし、ある時気づいた。自分の能力は正義向きではないと。
それと同時に「正義」についても考えた。
正義とは何か。能力で正義への向き不向きが決まっているのであれば、それはすなわち正義か悪かは生まれつき自分の心とは別に決まっていることになる。
それはおかしい。ゼクロはそれを認めたくなかった。「正義」は正しい心を持つものがなり、「悪」は悪しき心を持つものがなる。
しかし、心は関係なかった。「能力」と「環境」。それだけで正義か悪かは決まってしまうのだ。
とりあえずゼクロは一旦、自分を「悪」だと認めた。その上で考えた。
「悪」が「正義」になる方法を。そして悪は正義に倒された時、「正義」になるチャンスを与えられる。完璧な正義へと。
それに気づいたゼクロは「VTYU.Z」を組織し、悪行を働いた。...それがいけなかった。
ゼクロは残酷なことをし過ぎた。
既に「正義」には戻れないほどのことをしてしまった。
ゼクロ「今更ッ...! 考えは変えねぇ!! 俺は『悪』...それを決めたのはお前らだ...ッ!」
ベスト「追い詰められすぎだ...終わりにしよう。ゼクロ」
ベストは長刀をゼクロの首元に突きつける。
ベスト「俺だって...人殺しはしたくないんだ、分かるか?」
ゼクロ「ハァ....ハァ...テメーはよォ...どうして..."いい事"をするんだ...?」
ベスト「....いい事? いい事ってのは...お前みたいなやつをとっちめるってことか?」
ゼクロ「ああ....まあそうかもな...俺はお前には直接何もしてない...お前にはメリットがない...」
ベスト「お前のよォ、目的はなんなんだ?」
ゼクロ「.....目的....?」
ベスト「あァ、目的。なんでここまで残酷なことをしたんだ?」
ゼクロ「.....ン....フフ...ンフフフフ」
ゼクロは頭に手を当てる。それまでの不安げな表情が一転し、少し前までの不気味な笑みを浮かべた




