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帰り際
「なあ、鉄砲なんかで打って、だいじょぶなのか?」
俺は心配していることをカツラに言う。
「拳銃?なに言ってるんじゃ。あれは麻酔銃じゃぞ。さっき言ったじゃろうが」
「ああ、そうだった。安心したよ」
しかしカジナは安心した様子ではなかった。
「どうしたんだ? カジナ。浮かない顔して」
「いや、イノシシのことだよ。俺達を助けてくれたのに、血だらけになってて、なにも思わないのか?」
「ああ、それか......。確かに、助けたいとは思うが」
「それだけか? 助けたい?そんなの甘えだよ」
カジナはそれだけ言い、それ以降は何も話してこなかった。
(そんなの甘えだよ)
カジナの放った言葉が、今も頭のなかをぐるぐるしていた。
助けたいが甘えなのならば、何が甘えじゃないのだろう。
助けたいより自分に厳しく。
―――助ける
その瞬間、ハッとした。
カジナの言いたいことがやっとわかった。
「カジナ! 俺たちで助けよう! イノシシを!」
俺がそう言うと、カジナも返事を返す。
「やっぱり、お前ならそう言ってくると思った!」




