偽り
その後10分ほど走っただろうか。
気がつけばレイの家の前にいた。
「ハァ...ハァ......。間一髪だったな」
カジナは乱れる呼吸を整えながら、俺にそう言う。
「ああ。でもあのイノシシ、何者なんだ?」
「まあ、イノシシについてはまた後に考えるとしよう。とりあえず中に入ろうぜ」
「あ、ああ。そうだな」
そして俺らの小さな冒険は幕を閉じた。
帰ってきたから30分ほどたっただろうか。突然、家の扉が開く音がした。
俺は音に気付き、玄関の方を向くと、レイが帰ってきていた。
レイはただいまとも言わずに、そのまま夕飯のしたくを始めた。
レイはその後も一言も話さず、ただ黙々と飯を作っていた。
「ねえ、レイ。そういえばエサがそろそろ無くなりそうなんんだけど、明日買ってきてくれない?」
ココミがレイに話しかけるが、レイは無視する。
「なによ。レイのやつ。」
ココミはしけてしまった。
「なあ、今日のレイ、おかしくないか?」
カジナが話しかけてきた。
「うん。俺も思ってた。絶対おかしいぞ」
「なんかあったのかしら?」
「学校で嫌なことでもあったのかなあ...」
「ていうか、腹減った。とりあえずエサ食おうぜ」
カジナの提案で、とりあえず飯を食うことにした。
その後、何時間経っても、レイは何も話さなかった。
翌日
「レイ、今日も喋ってくれないのかなあ?」
ココミがそう話しかけてきた。
「レイは、豚の俺らと話せてとても喜んでた。なのになんで急に話してくれなくなったんだろう。きっとなにか理由があるんだろうけど...」
その日の朝も、レイは話しかけてくれなかった。
「俺、ちょっと話しかけてくるわ」
カジナはそう言い、レイに「おい、どうしたんだ?」と言った
それに、「なにかあったんなら相談してくれよ?」と続けた。
しかし、レイは無視し、玄関に向かっていってしまった。
だが、俺は違和感を感じた。
なんだか、いつものレイとは違うなにかを感じる。
「なにか」の正体はわからないが、違和感を感じるのだ。
俺は衝動的にレイにどなった。
「おい!なんか言ったらどうなんだよ!」
カジナとココミは少し驚いた様子だ。
だが、それでもレイは無視をし、立ち去っていった。
その態度が気にくわなかったのか、俺はいつの間にかレイの足首に噛みついていた。
その瞬間、レイは「やめろよ!!」と怒鳴り、足首に噛みついている俺をふりほどいた。
俺は気づいた。
「あれはレイじゃない!」
突然の俺の声に、ココミとカジナは驚きっぱなしだ。
「レイじゃない? どういうことだ?」
「レイには足にアザみたいなものがあったんだ!それが今はない!」
俺の訴えに、カジナは納得する。
「本当だ!あれはレイじゃない!」
その瞬間、レイだと思われていた人物がそそくさと家を出た。
「まずい! 逃げられるぞ!」
カジナがそう叫んだのもむなしく、時はすでに遅かった。
玄関の外にレイの姿はなかった。




